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142.ハロウィンですね⑤

ハロウィンで手厳しい事をしてきた生徒達の気持ちが分からないわけではない。そうウサは思う。ここワクワク学園の中で少なからず息苦しさを生徒達は感じているはずなのだ。望みもしていないのに閉じ込められているのだから。


軟禁状態は今も続く。


それは彼らのためだとはいえ、幼い彼らとしては遊びたい盛りでもあるのだから、不満もあろう。イベントがあればはしゃぐくらいはしたいはずだ。


「それだけじゃないようだけどね?」


はしゃげる機会にはしゃいでいると言うウサの見解に対し、わんこ先生は異議申し立てる。


ウサの考えが全くの間違いではないだろう。しかし、それだけではないとわんこ先生は言う。


「え?」


同様に考えていたにゃんこ先生と共にウサは不思議そうに頭を傾げた。


「き、気づいてませんでしたか?そそそ、その、マントのうちッポケットに…その、あの、はははっ入ってるもの、に…。」


お菓子作りを始めてから初、こりす先生が口を開く。それまで存在感を極限まで消して、静かに静かに作業をしていた。


スーツ姿にリスの仮面を付けた160程度の身長の女性。小柄なにゃんこ先生に比べれば身長があるが、女性の中では目立たないくらいの身長。長い真っ直ぐなごげ茶の髪はハーフアップにされていた。他の先生達と同じくこりす先生にもハロウィンの装飾が施されている。


こりす先生は自身に付けられたマントの内側に後からつけられたであろうポケットがある事を示し、そこから何やら取り出してウサやにゃんこ先生に見せた。


「これは…。」


「お守りだっぺ?」


2人はこりす先生が取り出したものを凝視しながらつぶやく。


こりす先生が持っていたのはキーホルダー。それも水引きのキーホルダー。鞄などに付けれるようにキーホルダーの形に作られたお守りだ。


「だよ?彼らも彼らなりにイタズラをしつつも僕らに感謝を示してくれてるというか?可愛い限りだよね?」


手作りであろうと予測されるお守り。


微々たる力しか込められてはいないが、守りの術式が込められているらしく、魔力がこもっていた。


「素直に渡せねぇのか!」


「皆様らしくはありますね。」


わんこ先生からの追記の説明を受け、それぞれが違うリアクションを取った。


素直じゃ無いと呆れるにゃんこ先生にくすくす笑うウサ。


「素敵なお守りだよ?僕のは鶴結びだったかな?コリス先生のは梅結びだね?」


わんこ先生は変わらない笑顔を浮かべたまま、こりす先生のもらったお守りを見つめる。


梅結びの水引き。


2本の赤と1本の白から作られた梅結びは白が良いアクセントとなり可愛らしい。


「水引きのお守りとは洒落てんなぁ。オレのは…猫の形してるっぺ!髭付きか、すげぇな!」


1人1人違う形だと教えられ、早速自分のを確認したにゃんこ先生。取り出した直後、感心の声を上げる。


にゃんこ先生のは白と黒で作られていた。白で猫の顔を作り、髭部分は黒で取り付けられている。白ネコだ。首あたりにはピンクの鈴までついており、それがまた可愛らしい。


「………それはタツノオトシゴかな?」


ウサの手元を覗き込み、わんこ先生は声をかける。


じーっと自身に渡された物を静かに眺めていたウサはおそらくそうなのでしょうとうなずく。


水引きで作られた幸せのシンボルだ。


「そんなものまで作れるのか!渋い選択だっぺ。」


自分の物を目を輝かせて見ていたにゃんこ先生はウサのものにも食いついた。


きらきらきらぁと目を輝かせて、ウサの手元を見る。


「皆様の優しさにございますね。手厳しいやり方はいかがなものかとは思いますが。」


「子供だからね?」


一旦、もらったものはポケットに戻し、作業を再開させつつ、話に花を咲かせていく。


話題はやはり、子供たちについてだった。











◇◇◇


「よし!うまく焼けたっぺ!」


にゃんこ先生はオーブンから焼き上がったクッキーを取り出した。焼き上がりを見て、嬉しそうに笑う。


丸い茶色やオレンジの色したクッキー。茶色のクッキーにはオレンジで、オレンジのクッキーには茶色でハロウィンのかぼちゃを模した顔が入れられていた。


「こっちもいい感じだよ?」


わんこ先生が見ているのは焼き上がってからしばらく置いていたクッキー。こちらはまた違うデザインがなされていた。


丸い円形とされたクッキーの真ん中をおばけの型でくり抜いてある。つまりはおばけの形のクッキーと真ん中におばけの穴があいた丸いクッキーがあるわけだ。穴が開けられた方には穴の中にキャンディーが流し込まれていた。


「良さそうですね。では、おばけに顔を描いていきましょうか。」


おばけクッキーを確認したウサは言う。


その指示に従い、先生達は作業を続けていく。


「チョコペンで顔描くの、難しいっぺ!」


上手く描けない。


普通に描くのも難しいのに、チョコペンとなるとさらに難しい。


歪な顔のお化けがいくつもできてしまった。


おばけであるがゆえに、禍々しさは許されるだろうか。


自身のお化けをながめ、そんなことを考えつつ、にゃんこ先生はチラッと他の先生達の手元を見た。自分だけが下手だったらどうしようか。ささやかな不安を持ちつつ。


「焼くまでもそうだったけども、ウサ先生は手慣れてんなぁ!上手いっぺ!」


ウサ先生の可愛らしいおばけを見て、ささやかな不安は消え飛んだにゃんこ先生。いや、忘れたと言うのが正しいか。


「志貴様の手伝いで、このようなものも幾度か作りましたゆえ。」


褒められたウサはなんて事なく答える。


何度かやったことがあり故に作れるだけだと。


「作れるのがすげぇ!オレは料理は得意じゃないっぺ!」


「わわわ、私、もです。」


何なく可愛らしいお化けを仕上げていくウサににゃんこ先生やこりす先生は感心する。


「わんこ先生も手際が良いっぺ!普段から作るのか?レシピも材料もわんこ先生のだよな?」


わんこ先生もまた、仕上げているお化けの顔はシンプルであるが整っていた。にゃんこ先生の歪な物とは大違いだ。


今回のお菓子作りのレシピも材料も準備したのはわんこ先生であった。


朝からコスプレをして、各先生方に装飾を施していった生徒達を見て、お菓子を作ろうと発案したのもわんこ先生であった。


彼がお菓子作りや料理をするイメージは一切なかったにゃんこ先生としては意外だべぇと声を上げる。


「あ!後で、ざ、材料費、お教えて、くだささい!」


こりす先生はこりす先生で、にゃんこ先生の言葉で思い出したようで、支払いの提案をする。


「ん?あぁ、1人500円で良いよ?」


誘う気満々だったとはいえ、材料費を請求する気はなかったわんこ先生。とはいえ、払ってくれるならば貰おうととりあえず、請求はしておく。


「良いのか?もっとかかったんじゃねぇのか。」


「気にしなくていいよ?残った材料はもらうからね?」


「ありがとうございます、わんこ先生。先生が材料などを準備してくださっていて助かりました。しかし、お一人で作る予定だったのですか?」


当日、お菓子を作ろうと誘いを受けた。朝の生徒達とのやりとりから何かしらを作る気だったからこそ、ナイスタイミングであったわけだが、彼は1人で作る予定だったのだろうか。


彼のキャラからしても材料もレシピも準備していたのは意外である。


「あの子らが何かやってるのは知ってたから?せっかくだし、買っといただけというか?ウサ先生達に作ってもらう気満々だったし?」


「誰も作れなかったらどうするんだっぺ。」


わんこ先生の返答に呆れたにゃんこ先生。


「だから簡単なレシピにしたというか?ウサ先生が多少は料理できるって知ってたし?」


「他力本願だっぺ。」


準備をしていてくれたのはありがたいわけだが、どちらにせよ、わんこ先生のお菓子作りに巻き込まれる予定だったらしい。


「はっはっは?」


半眼になって呆れたような視線を向けても、わんこ先生にとって、一切のダメージもないようだ。いつも通りに笑っている。


「とと、とはいえ、あああ、あの子、たち…よろっこん、で…くれると、いっ、いっ…良い、です…ね。」


出来上がりつつあるお菓子を見つつ、こりす先生は控えめに言う。


話はしつつも手を動かす事を忘れてはいない先生たち。作業はまだまだ続いていく。


作っているものは朝からめかし込んでいた彼らへ贈る物だ。彼らが喜んでくれるかはまだ誰にも分からない。


神のみぞ知る、だ。

ハロウィン、だいぶ前に終わりましたよね

一週間前…

えへ♡

次回よりイベント終了までに書けるよう気をつけていきます


さてさて、先生方のお礼のお菓子!

生徒達が喜ぶかは神のみぞ知る!

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