12.学園生活の初めにゲームを②
凶暴化には時間制限がある。全ての時間が危険だっていうわけではない。それはみんなにとって救いだね。
学園のあちこちにはカメラが設置されていた。つまりは見張られている。見張られているのは裏を返せば、絶望的にヤバイ場面では助けが入るんだろう。
実践にしては甘すぎるくらいなものだ。ゲームとは言い得て妙だねぇ。
となってくると。
ゲームの内容を聞く限り、やっぱり空の差し金感が半端なくて面白くない。安全に確実に経験を積ませよう、と。
つまりは変態野郎の言うことに従い大人しくゲームをする他ないわけなんだから。つまらない。面白くない。今更私には必要ないし。
何で私はここにいるんだろう?
みんなは実践を積む必要ありそうだけど、私は必要ないのだけど。
「なんで、んなことしなきゃいけねーんだよ?!」
にしてもヤンキーくんは往生際が悪いね。まだ駄々をこねるんだ。言ったところでどうにもならないから、腹を括るしかない。従うしかないからこそ、今の状況は面白くないんだよ。
「ゲームにございますから。では、皆様方、これより30分後にゲームを開始いたしますゆえ、準備を整え、お待ちくださいまし。…あぁ、早めに見つけられましたら、早めに解散といたします。皆様、張り切って参りましょう。」
変態野郎は抗議など聞く気はないらしい。説明だけ終えると話は以上だというかのように教室の出入り口まで歩を進めた。
そして、一礼してみせると変態野郎は魔物達を引き連れ、教室から出ていった。
変態野郎が出て行った教室には沈黙が走っていた。
いきなりこんな場所に連れてこられ、かつ、学園に通えと説明された。
で、それは空からの指令であるため、拒否はできない。これから行われるゲームもやるしかない。
魔物がいる状況での危険なゲーム。
そんな説明をされて、はいそうですかと素直になれないよね。みんなが硬い表情で他の子の様子を伺うのも無理はない。
誰も話さないから教室内は重々しい空気の中、沈黙に包まれていた。
が。
「ふざけんなッ!!」
ガッターン。
沈黙はすぐに派手にヤンキーくんによって破られた。
ヤンキーくんは椅子を蹴っ飛ばしながら叫ぶ。
全く…野蛮だなぁ。カナちゃん達がピクッと肩をゆらしてびびっているじゃないか。
ヤンキーくんは荒れに荒れているが、他はヤンキーくんを見つつも、周りの人たちに視線を向け、どうするかを伺っている。
ゲームとやらがはじまるのは30分後。さっさとどう動くかを決めねばならない。動くしかない。
「…………確かあれ、危害ならば加えられるはずだ。変態は防御と言ったけど、受けたダメージを本体が肩代わりするタイプのものだったはず。本体が壊れれば肩代わりするものがいなくなるから、ダメージを受ける。肩代わり出来ないほどの攻撃を仕掛ければ何とでもなる。」
空気を変えるためにも呟いてみる。あれを叩き潰すっていうのも、1つの手だよね。
魔物達には攻撃はできるんだ。一応、無意味ではないため逃げるだけが対策ではない。
武器は永遠にダメージを吸収し続けないのだから、吸収できないだけ攻撃をすれば良い。
「それこそ、非現実的よ。1つにつき、1つの武器を使用しているわ。あの魔物をただ倒す以上に厄介だわ。」
私の言葉にすかさず、ゆずるんが口を開く。
ま、武器師だったら、そう言うだろうね。あの武器の頑丈さを知っているんだろう。
あの武器、どえらい高くて、あんまり生産できないから出回っていないんだけど。結構、ダメージを吸収してくれるものだから。壊すのは容易じゃない。
だったら逃げたほうが楽だと考えるのが普通。
今回のゲームの場合は時間制限があるから、時間いっぱいを逃げ切れば良いわけだし。
「ま、逃げる隠れるっていったほうが楽なんだろうねぇ。」
肩を竦めて言うが。
1人行動ありきだったら、私は全てを倒した上でゆるりと宝探しがしたいけどなぁ。逃げ隠れしながらっていうのは面倒だ。
危険は早めに排除したい。
とはいえ、グループ行動だからね。空気を読みますとも。我慢して、逃げるしかないよね。無理に壊して回れば悪目立ちしちゃうからね。
「面倒でぇ。」
お兄さんも肩を竦める。やはり、お兄さんも昨日からの様子を見る限り、逃げたり隠れたりはあまり好きではないだろうね。
正面から魔物にぶつかって暴れたいよね。
「さっさと30個見つけちゃうか。」
面倒だけど、さっさと終わらせよう。
制限時間は午後5時までって事だけど、早めに見つければ早めに終わるとも言っていた。だったら、さっさと終わらせたほうがいい。
「ハッ!!馬鹿馬鹿しい!素直にやるのかよっ。」
ヤンキーくんは気が荒いねぇ。やりたくないようだ。反抗期か?反抗期なのか?
面倒だねぇ。
やりたいか否かならば私も嫌だよ、やりたくなんかない。ただ、やるしかないんだから仕方ないじゃない。ゴタゴタ言わずに動いた方が苦痛は少なく済むんだよ。
「ま、やるしかないんだから仕方ないでしょ。まとまって動くのは無理があるよね?どうする?」
とりあえず、どう動くかを相談しとこう。
みんなで30個見つけるゲームだ。個人戦じゃない限り、相談してどうするか確認しとかないと。ここは私が大人になってみんなを先行してあげよう。
誰かがやらないと話が進まないし。
「何人かに分かれたほうが良いでしょうね。」
ゆずるんはこちらを振り返りつつ、言う。
不機嫌そうに眉間にシワを寄せつつ、腕を組んでいるゆずるん。気に入らないけど、やるしかないって腹を括っているようだね。
「3、4人が無難かな。」
3つに分かれるくらいが無難なところ。問題はどう分かれるかだけど。
ハッキリ言って個人の戦闘力には偏りがあるわけだ。
あの魔物に敵わない人達だけでまとめれば、それこそ死のリスクだってある。メンバー分けは重要だろうね。
「やってられっか、馬鹿馬鹿しい。お前らも馬鹿か。あいつの言いなりになって話し合いしやがって。何が宝探しだ、小学生のガキじゃねーんだ。俺はやらねー。」
ガキか。ヤンキーくんはガキなのか。お子ちゃまか?お子ちゃまランチ準備しちゃうぞ?食事介助までしっかりやっちゃうぞ、こら。
話を押し進めようとしてみたけど、ヤンキーくんはヘソを曲げてしまっている。やりたくないオーラ全開だ。
最悪、ヤンキーくんを放置して他のメンバーだけでやるしかないのかな。ヤンキーくんが単体で魔物に遭遇した際は自己責任ってことで。
あるいは、全員、ゲームをやらないっていう手もなくはないけども。時間内、校舎内にいれば良い。逃げ隠れなどは各々各自の責任って事にして、5時まで過ごすっていうのもありといえばあり。
探さなかったらペナルティとも言っていない。
おそらく、戦闘力の低い子達は5時まで耐えきれないだろうから、死体を転がしたくなければ選択すべきではないと思う。
というか、みんなの様子を見る限り、一人で乗り切る実力がある子はいないだろう。みんなで協力しなきゃ、無駄に血が流れることになる。
ま、ヤンキーくんはそこまで考えてはいないだろうね。ゲームをせず、各々で過ごすって選択肢を取ったら後悔するだろうに考えなしだなぁ。
「阿部くん。どうしても嫌ですか?」
ずいッと遠慮なくヤンキーくんに近づく村くん。
近いよ近いって距離まで村くんはヤンキーくんに近づいている。
何を考えているかは不明だけど、村くんはゲーム参加をする気満々のようだ。戦闘能力あまりないのにビビるでもなく冷静でいるってある意味凄い。
馬鹿なのか大物なのか。馬鹿なのか。馬鹿なんだな?馬鹿なんだろうな。
「は?」
いきなりの村くんにギョッとするヤンキーくん。
予想のしていなかった村くんの行動にヤンキーくんは言葉を失っている。
鳩が豆鉄砲でも食らったかのような顔をして村くんを見ている。
「ちょこっと。ちょこっと付き合ってくれるだけで良いんで。」
手を合わせて両眼を強くつぶって拝むように村くんは言う。
そんな村くんを見て、ヤンキーくんは嫌そうに顔を歪めた。それはもうクチャっと顔面を歪めた。
「ゼッテーヤダ。」
プイッとヤンキーくんは顔を背けた。てこでも動きそうにない。そんな態度に見える。
やはり、動作までもがガキだ。今度、お子ちゃまランチを作ってやろう。旗まで爪楊枝で作ってオムライスに刺してやる。
「ちょこっとだけでもダメですか?」
顔を背けるヤンキーくんを村くんはチラッと片目を開けて、伺うように見つめる。
ジーっと見つめられて、ヤンキーくんはだんだんイラついてきたようで顔を怒りに染めていく。
「しつけーぞ、テメー…。」
ヤンキーくんは嫌そうに村くんに視線を向けている。
その低い声に谷上や桜井、カナちゃんが顔を青くし、ハラハラしたような表情をしている。
マリは止めるか否かを決めかねているようで若干腰が浮いている。
ユキやゆずるん、お兄さんにツバサは様子見ってとこか。2人の様子を伺っている。
ピリッとした空気に支配される中。
「ピーマンとか…これから僕が変わりに食べるんで。」
村くんは言う。
村くんは意外と大物だね。
それにピクッと動くヤンキーくん。チラリと村くんを見た。
そして、ヤンキーくんはゆっくりと口を開く。
「……仕方、ねーなぁ…」
やはりガキだろ。言動は小学生だぞ。
それで良いのかよ。
そんなこんなで。
村くん、ヤンキーくん、マリ、ツバサ
谷上、桜井、お兄さん、私
ゆずるん、ユキ、カナちゃん
的に別れることが決定〜。
さぁ、面倒だけど。
やるっきゃない。やりますか。




