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124.マリは泣きます

マリ目線に戻ります

佳那子はそばにいますが

必死に手足を動かし、魔物の攻撃が佳那子に届かないようにもがいた。


そして、攻撃から佳那子を守る事に成功した。魔物の武器は軌道を逸らされ、佳那子には当たらず、佳那子の横の地面をえぐったのだ。


絶対絶命な佳那子をさながらヒーローのように守ったわけである。


だがしかし。


その姿は決して、ドラマに出てくるヒーローたちのようにカッコ良いものではなかった。


生まれたての婆のようにーーーいやいや、婆が生まれたてとかありえない。違う違う。生まれたての小鹿のように、あるいは年老いた婆のように足が震える。怖くて怖くて目頭が熱くなってくる。


武器を身につけ構えるものの、到底自分ではどうにかできるようには思えない。






どうしたらいいの??どうしようどうしよう!?怖い怖い怖い怖いーーー…ッ!!






ヒーローのようにヒロインを救ったはいいものの、その心境は最悪だった。かっこよさのカケラもないのが現実だった。


ーーーそう。


必死に動いたのマリだった。前に出たは良いものの、マリはパニックに陥っていた。頭は真っ白になっており、まともな思考力など残っていなかった。


ただただ夢中に動いてしまっただけで、マリには何ら策はなく、パニックに震えあがっていた。


さてさて、どうしたもんか。


うん、どうしようもない事態だ。


何の考えやら秘策も無しに、本能のままに身体を動かしていたら、勝てる気がしない魔物と相対してしまっている。


目の前にいる魔物は目を合わせるのも恐ろしいと感じてしまうような、圧倒的な威圧感を放つ魔物。勝てるわけがない。対峙しただけで確信してしまった。




どうしたら、どうしたらーーー!?




少し離れた場所から姿を見ただけでも、圧倒的な存在感が恐ろしくてたまらなかった。悲しいことに近くに寄り、相対することにより感じる圧はさらに強くなってしまった。


2メートルはあるだろう巨体はただでさえデカイと感じるわけだが、目の前に立つとさらに大きいように錯覚してしまいそうになる。2倍にも3倍にも大きな存在に感じてしまっているのはおそらく、恐怖からだろう。そうだと信じたい。


敵わない。敵うわけがない。どうやったら勝てるというのだろうか。


怖い怖い怖い怖い怖いーーーっ!!


恐怖がマリの中で吹き荒れていた。


「………ま、り…さッ」


佳那子の声がした。


その瞬間、マリの中の恐怖の嵐がなりを潜めていった。


震え上がり、弱々しく座り込んだ佳那子の姿がマリの頭には浮かぶ。恐怖に屈して消え去りそうとしていたマリの戦闘心がわずかに姿を現す。ひょこっとな。


マリは涙目のまま、魔物を睨みつける。


そうだ。ここまで頑張ってきていた魁斗もツバサも動けずにいる。それはそうだ、こんなに恐ろしい魔物なのだから。


それならば。


それだからこそ。


ここは自分が何とかしなきゃ。自分がなんとかしなければ、級友すら危なくなってしまうのだ。やるっきゃない。やる他の選択肢などない。


動け。


動け動け!!


「カナちゃんに近づくんじゃないッッ!!こんの馬鹿ぁあッ!!」


無我夢中で叫ぶと、マリは魔物に対して拳を叩きつけていた。それくらいしか出来ることはないがゆえの行動だ。


マリの必死に繰り出した拳はいとも簡単に魔物の顔面に入り、そしてーーー魔物は液体を撒き散らしつつ、絶命した。


実に、あっけない。あっけないものだった。


「え?」


あまりにも呆気なさすぎて、マリはぽかーんとしてしまった。


魔物から飛び出した体液をモロに浴びてしまったが、先程まであまりにも怖くてたまらなかった、勝てないと確信せざるを得なかった魔物はいとも簡単に倒せた。


何だったというのか。


見掛け倒しだっただけか。


たいして状況把握もせず、考えなしに飛び出したわけだ。対峙した魔物がどういう魔物であるかさえ知らない。今なお分からないでいる。


いったい、どのような魔物だったのだろう?


桜花のような知識や戦闘力も、ツバサのような状況を把握し対処しようとする力もない。


樹里のように気配に敏感なわけでもない。ムードメーカーとなれるわけでもない。魁斗のような思い切りの良さや行動力だってありはしない。






ーーーそう。私には何もないわ。上手くやりたいのに、何にもできない。






考えなしに飛び出し、こうして思いもよらぬ結果になった時に、どうにかする事もできない。


できないできないできないできないできないーーーッ!!!


兄さんなら出来るのに。私は兄さんのように出来なきゃいけないのに。


何にもできない。全然、上手くいかない。


失敗してばかりだ。理想とは程遠く何にも為せてはいない。


「……ぁ。」


次から次へとできなかった事、ミスやら何やらが湧き出てくる。消そうとしても消え切らない。どこからともなく現れるゴキのように姿を表し、増殖していった。


思考力が低下するのに時間はそれまでかからなかった。涙がこみ上げ、溢れ出る。


そんな場合ではないというのに、次々と感情が湧き上がってきて、それらはマリにはどうしようもできなかった。


「ま、マリさ・・・だいじょう「何よ何よ?!」


もろに魔物の体液を身体に受けてしまったマリ。


呆然と立ち尽くす様に、佳那子はまだ魔物がいる状態ではあるものの、マリに声をかけようとした。無駄とはいえ、手榴弾を魔物の方へ投げ威嚇しつつもマリを見る。


しかし、佳那子の声はマリの叫び声にかき消されてしまった。


ヒステリックな悲痛な叫び声。


それをいきなり、それも未だに魔物が目の前にいるというこの状況下で上げたマリにその場に居るもの立ちは目を丸くする。


声をかけようとしていた佳那子もまた、言葉を飲み込み、戸惑ったような視線をマリに向けた。


「何よ、笑えば良いでしょう?」


戸惑いを隠せない面々に、マリは言う。金切声で感情のままに叫んでいた。


唐突。


唐突に叫びはじめた。


叫んではいるものの、マリは誰に言ったというものではなく、独り言を言うかのような様子であった。誰とも目が合わず、何なら焦点も合っていない。


癇癪を起した幼子かのように、ボロボロととめどなく大粒の涙を流しつつ、マリは叫ぶ。


「考えなしで出て行って、結局何もできなくて。無様に魔物の血なんかで汚れちゃって。バカみたい。お兄ちゃんだったら…お兄ちゃんだったら!!完璧にッ!できただろうに・・私みたいにおびえることもなくかっこいい戦闘員として颯爽と現れて華麗にみんなを守るんだわ。そうよ、そうよっ!!!なのにっなのにっ私は・・・ッ!!!」


悲痛な叫びをマリは上げる。


間違いなく今、言うべきことではない。


今はそんなことより魔物への対処をして、安全な場所へみんなで非難しなければいけない状況だろう。


そう。泣きじゃくるマリを誰かが諫め、引きづってでも逃げたほうがいい。あるいは目の前にいる魔物達と戦わねばならない。


そうしなければ間違いなく、死ぬ。命が危ない。


そんなことは誰だってわかった。わかっていた。






ーーーだというのに。






なぜだろうか?


誰一人として動くことすらできない。口を開くことすら叶わなかった。


まるで、そこに地縛霊がいて金縛りにでもかけられているような気分だ。魂が身体と引き離され、身体のコントロール権を失ったかのように身体が思うように動かせない。


うまく思考することすら叶わない。考えが一向にまとまらない。どうしたらいいのかなんて明らかだというのにどうしたらいいかわからず、動けずにいた。


そんな場合ではない。そんなことは皆がわかっていると言うのに、なぜだろうか。地に足が縫い付けられたかのような感覚に陥っていた。


動けずにいる者たちの困惑など知りもせず、マリは叫び続けていた。


マリは叫ぶように話す。話し続ける。


うちの両親は非戦闘員だった。


けど。


戦闘員になりたくて、身体を鍛えていたらしく、兄さんも私も小さい時から身体を鍛えていた。自分達が成せなかった夢を私達に求め、私達は鍛えることを望まれていた。


術式だって練習をたくさんしていたの。血が滲む努力を繰り返した。


うまくできたら両親はよろこんでくれたし、鍛えるのは苦じゃなかった。訓練だって楽しかった。


兄さんは武術も術式も天才だって言われていた。私が四苦八苦して練習に練習を重ねても中々出来ないものを難なく出来ちゃう姿を何度だって見てきた。


両親は手放しで兄さんを褒め、そして期待していた。兄さんに両親は自分達の夢を託していたんだ。


両親が期待した結果以上の結果を残せる兄の姿。それを見て喜ぶ両親。それが凄く誇らしくて。みんなが笑顔だった。大好きな家族だった。


なのに。


いきなり。ある日突然、兄さんは家を出て行った。


マリは泣きながら、嗚咽混じりに話し続けていた。

読んでいただき,ありがとうございます(*'▽'*)

混乱状態の現場ですね


月姫は喫茶店にてサンドイッチを楽しみます

昔ながらの喫茶店は昆布茶とか出てきてうほってなります

まだまだ若いなうな月姫ではありますが、喜びます


では、また月曜日にお会いしましょう( ´ ▽ ` )

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