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118.競いつつも進みます

魁斗もツバサも、両者引く事なく、次々と魔物を倒していった。


魁斗は自身の武器である番傘を用いて、時には突きを、時には打撃を、あるいは番傘に仕込まれた仕込み刀を引き抜き、斬撃をと攻撃を臨機応変に変えつつ、魔物を倒していく。


多少の傷ならば厭わず、魔物と対峙していた。


あの武器、刀が仕込まれていたの?とか、ちょ!危ない戦い方しないの!とか、マリがちょくちょく魁斗に話しかけているが、魁斗には伝わらない。


対して、ツバサは魁斗や魔物からちょい離れた場所から魔物を狙い撃ちしていく。やや狙いが外れたりはするものの、概ね好調。良いペースで魔物を射倒していく。


勝負としていたからか。2人は次々に魔物を勢いよく倒していったため、倒し終えるまでにそこまで時間はかからなかった。


「何体?」


全て倒し終えたところでツバサは魁斗に視線を向けた。


主語もなく、端的に自身の聞きたいことを聞く。


魁斗も何を問われているのか理解できているようで、にぃと笑みを浮かべていた。


魔物達は倒れているが、交戦直後によく平然としていられるものだとマリは顔色を悪くするが、2人は気付く様子もない。


「俺ぁ、8体。」


にぃと勝ちを確信したような笑みを浮かべて、自信満々に魁斗は答えた。


ツバサはあたりを素早く見渡し、倒れる魔物の数を目視で確認する。何度か繰り返したところで悔しそうに魁斗に視線を向けた。


表情こそ動かないものの、とてつもなく、悔しそうである。


「………6体。」


ボソリとツバサはつぶやく。


負けを認めて相手を称賛する。なぁんてことはツバサには出来ない。


素直にそれができる相手でもない。する気すら起きない。起きるわけがない。


「ふっ。」


勝ち誇った笑みを浮かべて自分を鼻で笑っている相手など、称賛に値しない。


お互いにお互いを尊重していないのだ、当たり前の反応と言えよう。


「次。まだ、負けてない。」


ツバサは目をギラギラと燃やし、自分達の行く先を見つめた。


まだ施設から出ていないのだ。


勝敗は決していない。


まだまだ魔物はいる。今後もまだ出会うのだ。まだこれからがある。


「ハンッ、潔く負けを認めたらどうでぇ?何度やっても変わりゃしねぇよ。」


意地の悪い笑みを口元に浮かべ、魁斗をツバサに視線をやる。


顔はいじめっ子のそれである。言い方も意地が悪い。


「吠え面、かかす。」


ツバサはいじめられっ子のようになるわけではなく、バーンッと自信満々に言いかえした。


今は数は劣ってしまったが、最終的に勝って見せると。


胸を逸らして、絶対やってみせると言い切った。


「そりゃあおもしれぇ。やってみな。」


ツバサの様子に魁斗は口角を釣り上げた。


ぜってぇ負かすとこちらもまた、自信過剰である。


魔物達はもう動かぬ状況とはいえ、魔物が足元に転がる中でする話ではない。


そんな場所を楽しそうにというか、競うように歩くツバサや魁斗には不安を覚えてしまう。


「喧嘩しないの!そんな場合じゃないでしょ!」


マリは何度目かの制止をしたが、2人は止まりそうになかった。


遊んでいる場合ではないのにとマリは焦燥する。しかし、建物から出るには魔物を倒すのも必須であるため、とめるのも気が引けた。


その後も、魁斗とツバサは何かと競うようにして魔物を倒していった。


ゆえに注意はするものの、強く2人を止めることはしなかった。その結果、所々でマリや樹里もサポートしつつ、主に2人が競って魔物を倒し歩を進めていくこととなった。


4人の中でダントツに魔物を知っている魁斗が加わったことにより、魔物の特徴や弱点を知れ、倒しやすくなった。それに加え、魁斗が怖いもの知らずに進んでいき、それに追随するようにツバサも進んでしまうため、進む速度が前に比べ物にならないくらいに早まった。


とはいえ、魁斗もツバサも競っているということもあり、命知らずに進んでいってしまう。


時にはマリが魁斗やツバサのそばまでいき、腕を引き、力づくで止めたり、前に躍り出て庇ったりする場面もあった。樹里が遠くから射撃し、援護することもあった。


マリや樹里の援護がなければ危なかった場面もあるだろう。


しかし、魁斗が止まらないため、ツバサも危険であるにも関わらず、止まろうとはしなかった。


「ねぇ、何でそんなに躊躇いなく突っ込んでいけるわけ?」


迷わず前へ前へと歩を進める魁斗。


自分は怖くてたまらないのに、初見の魔物にすら、少し観察しただけですぐに突っ込んでいってしまう行動力にマリはついつい声を上げる。


上げてはしまうが、特攻するのが自分だけではなくなり、ものすごく助かっている。


なんなら、魔物に関する知識は魁斗が4人で随一であるため、どのような魔物であるかも知らされることが多く助かっている。


3人でいた時よりスムーズに進めていた。


「ここにいる連中はチビにすら敵わない奴らでぇ。ビビる理由がないんでぇ。」


チラッとマリに視線を向けると、魁斗は言った。


どこまでも桜花しか見えていないようだ。ブレない姿は清々しい。


「チビ……ねぇ、チビに、私やセンシも組み手してほしい。」


マリが魁斗の返答に呆れていると、ツバサはジーッと魁斗に視線を向けた。


言うべき相手は魁斗ではないはずだ。桜花やチビに頼むべき話。にもかかわらず、ツバサは魁斗を見ていた。


その視線は素直にお願いするものではなく、恨みがましく、睨み付けるかのような物だ。


「桜花ちゃんもチビも俺のでぇ。誰にも渡す気ぃなんざねぇよ。」


ツバサの視線に対し、魁斗はいけしゃあしゃあと言った。


ゆずる気は一切ない。


そうありありと示されていた。


「ケチ。」


魁斗の返答を予測していたらしく、驚くこともなく、ツバサは気に食わないというように魁斗を睥睨するのみ。


吐き捨てるように魁斗を罵倒するが、魁斗は一切気にした様子はなかった。


「本人の前でも隠さず言うんだから、凄いわよね。チビには絶対嫌がられるわよ?」


「また、ガジガジの刑ですかねー。」


「あの子、桜花の目を盗んでやってるわよね、あれ。」


「確信犯ですねー。チビさん、賢いですから。」


嫌そうな反応をし、桜花に怒られない程度に攻撃をしかけてくる、桜花の愛武器が目に浮かぶ。


桜花には戯れあっているようにしか見えていないようだが、容赦のない攻撃が紛れ込んでいる時さえある。


あの武器は桜花にバレないように思考を巡らせるだけの悪知恵が働くから凄い。


「フンッ。桜花にだって、本気にされてない。通じなきゃ不様。」


マリが呆れた様子で言えば、ツバサは馬鹿にしたように続く。


それには魁斗も反応を示し、すぅーっと目を細めると、ツバサを見た。


「アン?」


バチバチバチバチッ!!!


ツバサと魁斗は火花を散らす。


犬猿の仲。


それは2人のためにある言葉なのかもしれない。何かとあればああして火花を散らして競うのだから。ツバサも魁斗も、お互い引くことなく、禍々しい雰囲気を纏って睨み合う。


「喧嘩しないの!!……桜花、無事かしら。」


2人ともを一喝するとマリは思い出したようにつぶやく。


必死すぎて気にも出来ていなかったが、ここに来る寸前に桜花は爆発に巻き込まれているのである。無事の確認は出来ていない。


ウサもそれは教えてくれなかった。


「あんくらい、桜花ちゃんならどうにかしてらぁ。」


「ん。さっさと出よ。桜花に、会いたい。」


どうするかと迷っていた。動かずに待つのも手だと言っていた。


それが嘘かのようにツバサは動き出す。


魁斗はライバルのような存在だ。その存在が迷わず動いている。2人が目標としている人物に近づくべく動いている。そんな姿に触発されたのかもしれない。


あるいは桜花の名前が出たからかもしれないが。


ビビることなく動ける魁斗やツバサは凄いなとマリは感心するのであった。

読んでいただき、ありがとうございます^^


ぽちぽちしてくださる方が増え、飛び跳ね喜ぶうさぎ的な月姫です(//∇//)

ブクマも着実に増え、ニヤニヤしております♡


雨が続いてますね

雨音を聞くと…仕事に行く気がなくなるのは月姫だけでしょうか…

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