108.探索をはじめました②
ぱあと表情を輝かせた樹里の方をマリやツバサは樹里の声に反応して見た。
そして、嫌な予感がした。
ロクなことを言わないはずだ、と。
「見てください!二股試験管がありましたよ!」
案の定というか、なんというか。良い発見をした!と、言わんばかりに樹里は2人に報告する。
見て見てと発見したものを見せてくる樹里はまるで小動物のよう。獲物を捕らえることが出来たと目を輝かせて駆けてくる犬猫のようだ。
耳やしっぽがあるように錯覚さえしてしまいそうになる。
樹里の言動にマリやツバサは思考を中断されていた。ツバサやマリの思考に起きていた負のスパイラルはスパンっと切られたのであった。
そこはファインプレーとも言えたかもしれない。
「アンタねぇ!何でそんな呑気にしてられんのよ?」
「アルコールランプやビーカーも発見です!近くにお茶がありますから、きっとビーカーで飲んでいたんですね。」
マリに強めに言われるが、それを一切気にすることなく棚の中から様々なものを取り出し、樹里は言う。
この場を楽しんでいるようだ。目を輝かせて何があるかを探っている。
「アンタ、絶対バカでしょ。」
ピキッと怒りを顔に露わにしながら、冷たい視線をマリは向けた。
だが、樹里は意に介さない。
今は棚の中に夢中になっているようだ。
「理科室ですよ、理科室!探索したら面白いものあるかもしれないじゃないですか。」
樹里は笑顔で言う。
小動物を思わせる笑顔。可愛らしい顔の造形をしており、その笑顔も可愛らしいという印象を受ける。
が。
満面の笑顔に癒されるなんてことはなく、疲労感を感じてしまうのであった。
とはいえ、先程までの恐怖やら嫌な雰囲気は吹き飛んでいた。
そういう意味では樹里の行動は、やはりファインプレーであったと言えるかもしれない。だが、感謝は到底できそうにない。
そんな感じになんだかんだありつつも、探索をしつつ進むという事をマリ達はひたすら続けて行った。収穫はあまり得られずにいたが、とにかく進むしかないため、仲間や情報を探しつつ、先に進む。
「あ。あっちから、何かがきます。」
あたりに注意を払いつつ、進んでいると、樹里がふと言った。
魔物に遭遇したがゆえに進むしかないと決意した。そこからの初の何かとの遭遇だった。わぁ出会いにマジ感謝、だなんて言っていられる状況ならばいいのだが。これから遭遇する者に期待はできやしない。
「何かって?!」
マリは聞き返す。ついついビビってしまい、声がひっくり返るが、気にする余裕はない。
接近してきている何かが、はぐれた級友達であれば良いが、魔物である可能性もある。いや、後者である可能性が高いような気もしなくもない。
はてさて、何が来ていると言うのか。
「分かりません!」
ハッキリと。スッパリと。
清々しいくらいに樹里はハキハキ答えた。
「数は?」
わからないと迷うことなく答えた樹里に今度はツバサが聞いた。
「えと…2.3くらい?」
数に対しては曖昧だが、返事がきた。
あまり多くはいないことに安堵しつつ、マリやツバサはあたりの観察を行う。
五感を研ぎ澄まし、あたりに何かいないかを探る。
「あ、あれね!!あれは…えと…」
魔物を先に見つけたのはマリだった。姿がチラッと見えた。
見つけたのは見覚えのある魔物だった。今回、採取することになってた薬草の一つでもあったもの。
それは大根のような見た目をしていた。白い部分は食べることができるんだとか。緑の葉の部分は薬草として使える。
大根に足が生えたような姿をしており、目のようなものの間には黒いシミのようなものがある。そのシミを1刺しすればすぐに動きを止める。
シミ以外をどんなに攻撃しても倒れない。シミを刺さねばならない。
最小限の攻撃で倒すためにはいかに綺麗にシミだけを攻撃するかが鍵となってくる魔物だ。
しかし、この魔物はとにかくすばしっこい。すばしっこく、よく動き回る。
遠足がはじまってすぐにマリたちも他の面々と採取した。その際には手こずったものだ。
「大根。数、2体。」
「りょーかい!!」
ツバサが言うや否や、マリは現れた魔物に走り寄った。
すばしっこく動き回りつつ、攻撃を繰り返してくる大根にマリはナイフを突き立てる。
マリもマリで大根魔物に負けないくらい素早くーーー動くことはかなわない。この速度に合わせてなんか動けない。
だから。
大根魔物の蹴る殴ると言った攻撃を全て受けた。いや、いくつか当たったらヤバイのだけを避けた。避けきれないものは全て受け切った上でマリは攻撃に転じる。マリは出来るだけ素早くシミのようなものを手に構えたナイフで抉るように刺す。
2体の急所を大根魔物の攻撃を受けながら刺した。ちょいとうまく当たらず、他の部位にも切り傷をつけてしまったが、そこまで時間もかけずにマリは急所を突いた。
マリは今、ナイフで攻撃をしている。つまりは刃物による切断。だというのに、なぜか打撃を与えられたかのように地に叩きつけられいった二体の魔物。馬鹿力で攻撃したが故、だ。
地面に叩きつけられ、2回ほどバウンドした姿は中々にむごい。むごたらしい。敵ながら哀れ。
が。
倒せたから良しとしておこう。
「これ、採取していく?」
マリは魔物が倒せたのを確認すると、マリはツバサや樹里を振り返り、2人に確認した。
せっかく倒したのならば採取するのもありかもしれない。だが、荷物になるのも問題だ。どうしようかと2人に相談する。
「葉っぱは薬草として使えますが…白い身体の部分は確か、食べれるんですよね?生でも食べれるって…食べてみますか?」
目をキラキラさせ、樹里はマリやツバサを見る。
大好きなボールを持つご主人様を見つめているときの落ち着きのない犬のような目だ。
ボールを捨て去れば落ち着くーーーなんてことはない。満足するまで付き合わなければならない。ボールを投げ続けなければならない。
そんな嫌な予感がする。この予感、外れない気がするから嫌。外れて欲しい予感ほど、外れないのよね。
「これを?」
慎重にツバサは聞き返す。無表情であり、平坦な声ではあるが、かすかに浮かぶ汗が嫌であると言う意思を示していた。
思い直してくれないかなとか期待しつつ、ツバサは聞き返していた。
「はい!ーーーお腹すきません?」
期待は淡く砕け散る。綺麗に砕け散った。未練を残させるような隙はない。少しくらい隙が欲しいのに、微塵もないのだ。
樹里は魔物を拾い上げ、2人に聞いた。
タイミングがいいのか、どうなのか。マリのお腹がぐぅぅううっと音を立てた。身体にはだいぶ疲労も溜まっている。
建物に強制転移させられ、建物内を探索しはじめ、だいぶ長い時間が経っていた。そろそろ、休憩や食事が必要だ。身体が欲している。
タイミングがわからず、というより、この状況で休みたいやお腹空いたなんて呑気に言ってられずにいた。
樹里に言われ、より一層空腹感を強く感じてしまった。
「携帯食、みんな持ってる。」
休憩を挟むことに反対はない。無理をしたところで逆効果なのは分かっているから、休むことに反対するつもりはない。
とはいえ、その場で魔物を食べるのには抵抗があった。できたらやりたくない。
だからこそ、ツバサは携帯食を食べることを提案した。携帯食があるのにわざわざ魔物をこの場で食べる必要はない、と。
「全部食べ切っちゃうよりはこういうの食べて温存したほうが良くないですか?」
ツバサの提案に対して、樹里にしては意外と真っ当なことを言った。
ここからどれだけの期間で抜け出せるか分からない今、無計画に食料を消費しないほうがいい。
それは確かな事である。
その事実は中々にまりやツバサにとっては辛いものであった。
読んでいただき、ありがとうございました(*´-`)
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おもしろいと感じていただけましたらぽちっとしたり、感想を書いていただけると月姫はうさぎのごとく飛び回りますw
雨が上がり、だいぶ暑くなってきましたね
遊びに行きたいけどまだできず…
ひっきーになるしかないこの頃ですね
また、月曜日にお会いしましょ!




