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107.探索をはじめました①

先に進むと何とか覚悟を決め、歩き始めたマリたち3人。


あたりを見渡しつつ、耳を澄まして、五感を研ぎ澄まさせて、何かが近づいてきていないか、警戒しつつゆっくりゆっくり進んでいった。


進むと決めたとはいえ、建物内を堂々と闊歩する事はツバサやマリにはできなかった。できるはずもなく、する必要もないわけだが、できない自分に嫌悪しちゃうのもお約束だよね。


勇者のような勇敢さも、開始数十秒後にはやられて退場となる当て馬的なモブのような無謀さも、持ち合わせてはいなかった。


勇者でもなく、モブという名の当て馬的役割があるキャラでもなく。言うなれば、タダの人。物語の中でも冒険者Aとかであって大多数の1人、目立たない名もないキャラだ。当て馬にすらならない。


ゆえに、いや、ゆえにというのはおかしいか。とりあえず、マリ達は慎重に慎重に進んでいった。一言で言えば進捗状況は芳しくなかった。


マリとツバサだけであったならばより一層芳しくなかったであろう。


樹里が無防備ながらにガンガンに進んでいこうとするため、それを追って慌てて進んだり、進むのを止めたりは何度もしたが。


樹里がいなければ愚鈍な亀以上にゆっくりゆっくりと進むことになったはすだ。赤子の進む速度よりも遅い速度での前進となっていたはず。


2足歩行でありながら、匍匐前進するよりも遅く、ノロノロと進んでいたはずだ。






「あっち、何かありそうです!」




「あれ、何ですかね?」






一進一退して中々前へと進まない2人に対し、フラッとマイペースに進んでくれる樹里。樹里がいたからこそ、少しは早く回れていた。


この状況でなぜ、好奇心に満ちたキラキラ輝いた目で辺りを見ていられるのか。楽しそうに動き回ろうとするのか。


ある意味、ここにいるメンバーの中では誰よりも勇敢であった。


緊張感に包まれたマリやツバサの重々しい雰囲気を中和してくれる良いムードメーカーにもなっているのだが、疲労感もしっかり与えてくれる。


緊張感が一切なく、マイペースにフラッと動く様には冷や冷やさせられてしまっていた。


散歩の最中に道端で動物の死柄に出会うくらいに、ビクッとなって、身体が固まるような感覚に陥っても無理はないだろう。何度もそれをされるとさすがに疲れ果ててしまう。


とはいえ、先に進めてはいる。


進むか迷っていた時は立て続けに魔物に出会ったが、進むと決めてからはあまり出会うことなく進めた。それが救いであった。


本来ならば、一個一個の部屋等の探索は捨て置き、廊下を猛スピードで進んでいき、階段を駆け降り、さっさと出口を探してしまいたい。外に出たい。


が。


誰かがどこがで息を潜めて隠れている可能性もある。ここがどこであるか、情報も欲しい。はぐれてしまった面々とも合流したい。


何より、嫌がらせなのか、階段はその階ごとに場所が異なり、どこにあるかは不明。階段を見つけるまで、その階を探索する必要があった。


そのため、誰もいないことや、何か情報がないかを探索しつつ、進むほかなかった。


しかも、道には段ボールやら何やら、様々な物が置かれており、その陰に何かが隠れていないか、そこに何か情報はないかを確認していたため、道すら中々前に進めずにいた。


自分たちの身を隠すスペースがあることはありがたくもあるが、物が邪魔に感じてしまう。迷路を歩いているかのような気分になってしまっていた。


願わくば、どこかに建物の見取り図的なのが、どこかにあってほしい。そんなことを願いつつ、建物の探索を進めていった。


「理科室、みたいよね?さっき隠れたのは二段ベッドとかあって、子ども部屋みたいだったけど。」


魔物はとりあえず、潜伏していなさそうだとホッとする反面、めぼしい物は見つからずガッカリするマリ。無言が嫌で部屋を捜索している樹里やツバサに話しかけた。


「実験とかもできちゃいそうですよね!ただ、おかしいです…ッ!」


部屋の探索をしつつ、驚愕の事実を発見してしまったと言わんばかりの様子の樹里。由々しき事態ですと真剣な表情をしている。


何かあったのだろうか。


問題発生だろうか。


心臓がドッドッドッと強く脈打ち始めるのを感じた。嫌な汗が滲み出てしまう手をマリはギュッと握りしめた。


「え?何かあった?大丈夫??」


樹里の顔をのぞみ込みつつ、緊張を伝わってしまわないように注意して、出来るだけ声が震えないよう努めてマリは聞く。


なんだ、なにがあったと言うんだ。


ツバサも手を止め、樹里に何事かと視線を向ける。


「………試験管立てがあるのに試験管が見当たりません…ッ!!」


由々しき事態ですとでもいうかのように樹里は言う。


真剣な顔をして、何ならプルプル震えて見せて、この世の終わりですとでも言わんばかりの様子。


間もきっちり開けて言うもんだから何か重要なことを言ったようにも聞こえた。


だからこそ。


樹里の言ったことを頭の中で反芻させ、意味を理解したところで脱力してしまう。


「なにそれ…どうでも良いじゃない。」


ため息を吐くようにマリは言葉を吐き出していた。


どっと疲れが攻め寄せてくるような感覚に陥る。吐き出した息の中に魂でも混じっていたのかも。疲れがのしかかってくる。いやぁ、疲れた。


「実験とかも出来ないじゃないですか。試験管、大切ですよ?」


何を言っているんですかと樹里は真剣な様子でマリやツバサに語る。


なぜそんなことにこだわるのか。


よく分からないが樹里は真剣そのものだ。ふざけている様子はない。なお、たちが悪い。


「今は不要でしょ。」


「やっぱり、学校みたい。ワクワク学園の建物…?」


今、樹里が気にしていることは重要ではない。ツバサは樹里を相手にせず、話を移すことにした。


この場を探索しているのは仲間の捜索と情報集取のためだ。


ここがどこなのか、明らかにしていく必要がある。


「襲撃者はウサたちってことかしら?遠足中にこんなことするなんて聞いてないわ。」


イベントの一環であると言うならば、文句を言ってやりたくなる。


遠足中に突然の奇襲だなんて趣味が悪過ぎる。罠にかけ、みんなをバラバラにするなんて何を考えているのか。桜花には爆弾の罠まで使っていた。


次に会ったら文句を言わねば。


「ん。……人を密輸する話、聞いたことある。」


憤慨するマリの横でツバサは呟くように言った。


ボソッと小さな声で漏らした。


「人をですか?」


ツバサの小さな声を樹里もマリもしっかりと聞いていた。


2人とも、ツバサへと視線を向けていた。


「奴隷として、他国に売る。」


もしかしたら。


いや、違うかもしれない。けど、そんな可能性があるんじゃないか。


声に感情は載っていない。表情も無表情のまま。だからこそ、ツバサが言ったことが現実味があるような気がして怖く感じてしまう。


「けど、ここは学校っぽいですし、ウサさん達のイベントっぽくないですか?」


マリがなにも言えずにいるのに対し、樹里は怖がるでもなく、普段通りの様子だった。


「ん。そう思わせといて、私達の能力を見てる、とか。」


考えだすとキリがない。


が。


1度、可能性について考えてしまうと止まらなくなるやつ。


今、まさにそれがツバサに起きていた。それは悲しいことに伝染するから恐ろしい。


「……確かにウサ達からこんなことやるだなんて聞いてないもの。今まで襲撃なんてアイツらはしなかったわ。ーーーじゃあ。私達は売られちゃうのかしら?」


「奴隷…。」


マリが顔を青ざめ言えば、ツバサもボソッとつぶやく。


2人の間に絶望の中にあるかのような顔をして黙り込んでしまう。


まだそうとは判断のしようがないと言うのに2人の頭に止めどなく嫌な可能性ばかりが駆け巡る。


マイナス思考にばかり囚われるからこそ、不安だったり恐怖だったりと言った嫌な感情が2人の中を駆け巡っていた。


自分が売られ、良いように扱われる姿を想像してしまったようだ。


体調が悪い時に家庭の医学を読んでしまったように気分が悪くなってきてしまう。何でもかんでも疑い出したらきりがない。根拠もないが不安だけは大きくなっていく。


「あ。」


マリやツバサが妄想している間、1人黙々と教室内を探索していた樹里が声を上げる。


何かを見つけたらしい。



読んでいただき、ありがとうございます(*´-`)


前回にて1周年記念は終了しまして、今まで通りに本編再開いたします!

今後も、よろしくお願いします(*´∇`*)

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