103.1周年記念ですよ③
ノストラダムスの1999年7月の月の予言を受けたかのような衝撃。
世界が滅びるならばーーー…貯金はいらないさ、さぁ散財しに行こうというノリがあった。
いや、ないか。衝撃はあっても、滅びるわけでもないし、衝撃を受ける以上のノリはない。
「そんな反応で返して神経を逆撫でするから、ツバサたちが嫌がるんでしょう。」
呆れた。そう言わんばかりの視線を桜花はウサに向ける。
嫌悪感は一切なく、桜花はただただウサに呆れているだけ。
それが他と異なっていた。
気色悪い中年に警戒心なく話すがために、周りは武器をしっかりと持ち、すぐにでもウサを殴りかかれる準備をととのえている。
「桜花ちゃん、甘やかしちゃあいけねぇ。あれはビシッと叩ききらねぇといけねぇ。」
「いやいや。お兄さん?落ち着いて?確かに殴り倒したいけどね?いやいや、分かるよ?分かっちゃうよ?あの顔面をぼっこぼこにしたいって思うよね?顔面砕き切りたいよね?頭蓋骨バキバキにしたいけどね?ダメよ?」
「こわ。言うこと鬼なんだけど。」
「止めると見せかけて、志貴氏のほうが酷たらしい事をなさるのでござろう。止めれぬ我らの無力な事。」
「関わっちゃダメなやつ。加減くらいはするでしょ。」
「おそらく。巻き込まれぬことに集中致そう。」
「同意。」
中々に酷たらしいことを言いつつも、桜花は一応止める。
魁斗よりも酷いことを言っている。
わざとなのだろうが、やられないかドキドキしてしまうところだ。
「仲間に甘々なのが志貴様にございますゆえ。私、志貴様に仲間と認められているのでございますよ?」
ウサは一切、動揺することなく、ふふふーんと自慢するかのように胸を張りつつ誇らしげに言う。
それがまた、腹が立つ。ピクッと青筋を浮かべて睨みつけてしまう。
「はぁ…まったく。まぁ、確かに。任務を共にした仲間ですからね。苦楽を共にしてますから、信頼していますし、絆というものがあるとも信じていますよ。」
疲れたとため息をつきつつ、桜花はいう。
適当にあしらうかのような口調だ。面倒になってきたなぁと態度に出ている。
まともに相手をするつもりはないらしい。
「ーーーそ、れは…。」
が。
面倒だといわんばかりに適当な態度だった桜花だったわけだけど、ウサのリアクションを見て顔色を変えた。
ハッとなってバツが悪そうな顔をし、ウサを見る。
「……て、あー……失言、だったか。ごめん。」
「任務?どういうことでぇ?アイツは非戦闘員じゃあないのかぃ?」
決まりの悪そうな桜花に魁斗は詰め寄る。
一緒に任務をしたことがあるとはどういうことか。
気に入らないやら羨ましいやら、感情がごっちゃになってしまう。
「んー?過去に変態と任務を受けたことが何回かあるんだよ。うち、師匠から許可が下りた相手としか任務受けれないんだけど。変態は許可が下りてたからねぇ。真面目で頭の固いのがうざいの何の。」
魁斗が食いついてきたのに対し、桜花はかるーく説明をする。
本人の前だと言うのにお構いなしに本人を悪く言う。
バツが悪そうな態度だったのは一体なんだったというのか。
「真面目?!アイツが?」
桜花の軽ーい説明に秋明は納得できずに聞き返した。
ウサを指さし、何言ってんだと桜花に聞いている。話の本質ではなく、ウサの人間性を示した言葉が気に入らないようだ。
「こらこら、阿部様?人に指をさしてはいけませんよ。」
常識人。
そんなノリでウサは秋明を叱った。
が。
常識人というキャラにないウサの説教では言葉に重みがなく、響くものも響かない。
「変態がまともな事を言うとムカつくわね。」
マリは吐き捨てるように言った。
指を刺すな。
間違ってはいないが、ウサがまともなことを言うのもまた、気に食わない。
「辛辣にございますね、御崎様。」
「そんなことより!あの野郎は非戦闘員なんだろ??非戦闘員も戦闘員と任務を受けることがあんのか?」
マリによってそれかけた話を秋明は戻す。しっかり戻しにかかる。
ウサの発言などどうでも良い。
自分が指さしたことも謝罪するつもりはない。
そんなことよりも気になることが秋明にはあった。
「時にはございますよ。しかしながら、滅多にはありません。」
桜花に聞いていたのだが、ウサが答えた。
桜花が答えるより先に答える様に、返答をもらえたと言うのに、秋明は気に入らないと顔を歪める。
「どんな任務を受けたんだよ?」
秋明は返答したウサを丸っと無視してさらに桜花に聞く。秋明の凶悪な顔を見てヒィッと顔を青くし、悲鳴を上げた佳那子に対しても突っ込むこともせず、スルーしておく。
ウサの相手をしても得はない。
今までの経験から学んでいたからこその対処だ。
佳那子については触れても徳はないため気付かぬふりをしておく。
「おやおや。皆様方、ウサについて知りたいご様子。ウサ、この人気ぶりに喜びを噛みしめちゃいます、ウッフゥウウウッ!」
「気持ち悪い。」
相手をしてはいけない。
分かってはいても吐き出さずにはいられない不快感があった。
ツバサは無表情でボソリとつぶやいてしまう。
「バッサリ切り捨てますね、坂崎様。そういうとこも素敵にございます。」
小さなつぶやきであったにもかかわらず、さすがはウサといったところか。
しっかりと聞き耳をたてていた様子で、瞬時にツバサに視線を向け、親指を突き上げる。
「おい、桜花。」
「いろいろだよ。薬草採りに行ったこともあれば魔物狩りもある。」
「亭主関白がごとく志貴様をお呼びになるとはっ!?羨ましい限りにございますっ!」
忙しい。
忙しすぎる、この男。
ツバサに親指をたてていた次の瞬間にはグルンと思いきりよく振り返り、秋明に詰め寄るようにして叫んでいた。
テンションの高さがウザったらしい。
「あ?よほど自分の事を知って欲しくはないようだな?何があるか、ますます気になるってもんだ。」
いつも以上に絡んでくるウサに、秋明はニタリと笑みを浮かべてみせた。
いつもは劣勢。
こんなときくらい、とことん追い詰めてやらねばと嫌な笑みを浮かべている。
ハタから見れば秋明も秋明で、悪人にしか見えやしない。
「今、誤魔化したとこで後からいくらでも聞けらぁ。どんなやましいことがあるか、気になるこってぇ。」
秋明が極悪非道としか言い表せない表情をしているにもかかわらず、止めもせず加勢するのは魁斗であった。
確実に桜花から聞き出す。そう暗に告げていた。
「…………いやはや、皆様、意地悪にございますね。恐れ多くも申し上げますが、志貴様が私が嫌がる中、私について話すようなお方だと思いますか?一緒に任務を受けたことがある以上の情報を引き出すことは、至難の技。口を滑らすのも、これにて終了にございましょう。志貴様は例え、いかなる拷問をされようとも仲間の情報を漏らすような方ではございません。死んでも口は割りませんよ?」
秋明や魁斗の言動に動きを止めたウサは高いテンションを仕舞い込み、落ち着いた様子で言った。
愛しき生徒達、一人一人に視線を向けつつ語りかけている。
秋明や魁斗以外にも問い詰めてでも話を聞きたいと言う顔をするものがいたからこそ、だろう。
「桜花、気になる。」
「話してくんな、桜花ちゃん。」
ウサの言葉に苦々しい表情となった面々。
桜花に甘えるような視線を送り、おねだりにかかった。
秋明も強い視線を桜花に向けていた。
「……………はぁ。興味半分に聞くようなもんじゃあないよ。私の失言だったようだし、忘れて?知りたいなら本人から聞きなよ。」
しかし、おねだりは通じなかった。
話す気はない。それが明らかであった。
「ざっきー、カイさん、それくらいにしてやれ。」
諦め切れず、桜花に詰め寄っていたツバサや魁斗にユキが声をかける。
「闘魔隊に所属する者同士での腹の探り合いは行儀が良いとは言えないわ。」
眉にシワを寄せ、スパンっと結弦も言う。
2人は聞き出すべきではないと止めにかかりにきたようだ。




