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100. 飛ばされた先はどこでしょう?⑤

キョロキョロする樹里の様子にどんどん不安が膨らんでいく。


そう、ラムネのように。


小さな小さなものであったが、一度コーラの中に入れようものなら、溢れ出さん勢いで、いや、溢れに溢れまくる勢いでその体積は大きく変化する。


そんなように不安も一気に膨らんでいく。


同時に頭の中に響き渡る警報音が大きくなっていくように感じた。不安によるものが、身体が緊張してしまい、自分の心臓の音が耳に届く。


樹里になぜキョロキョロしているのかを問いかけ、明らかにすることでスッキリしたい。できれば何事もないのだと言って欲しい。周りをただ見渡していただけで何事もないのだと言ってほしい。


そんな淡い期待を抱きつつ、マリは樹里に何か言おうとした。しかし、それより先に樹里が前方を指さしつつ、2人を見た。


目があった樹里の顔を見て、マリの頭の中の警告音が音を変えた。大きく、より危険なものに。


あ、これ、ダメなやつ。


線路の音やら救急車の音やらのような耳に残る音が頭の中でガンガン響くような感覚が強まっていく。


そんな中、樹里は無常にも口を開く。


「また何かが来ます!!今度は前方からです!!」


あ、やっぱりダメだった。そうマリは思う。


樹里は無情にも事実を口にし、場の空気を凍らせたのだった。


「今、魔物を倒したばかりよ?」


樹里の言葉にマリは顔を盛大に引きつらせ、言った。


言っていても仕方ない。


それは分かるが言わざるを得なかった。


今、倒したばかりだというのに次々と来すぎだ。


魔物のほうからすれば、人の都合など知ったことではないため、今魔物と交戦したばかりだと言ったところで時間の無駄にしかならないだろうが。


そうこうしている間に、次なる魔物が姿を現した。


今度はマリも冷静に打撃を加えた。


「かたっ!!」


ゴブリンのような姿をしているが、その身体は茶色というか黒というか。マリの渾身の一撃を受けたにもかかわらず、一切のダメージがあるようには感じられない。


魔物はマリへと視線を向けると、持っていた棍棒で殴りかかろうとしてきた。


それをマリが後ろに飛ぶことで避けたところに、ツバサがすかさず、矢を射る。


が。


弓矢は確かに魔物に当たったが、当たって砕け散った。それはもう粉々に。ガラス玉を壁に目掛けて投げたかのように砕けてしまった。


ツバサの矢が、魔物に対してダメージが与えられたようには感じられない。


矢を大量に作り出し、全集中させ攻撃するも、結果は同じ。魔物はまるで何事もなかったように3人を見ていた。


矢が通じなかったツバサは舌打ちしつつも、今度は火を出し、魔物を焼き払おうとした。


が。


やはりというか何というか。


一切のダメージなく、魔物は進んでくる。


なぜ、火の中を進んでくるのか。火が見えていないか、あるいは、そこに火があるから進むのか。水浴びの如く、火浴びをしたいとでも言うのか。


いや。


違うか。


火を避けずに進んでくるのは、ツバサの攻撃を真っ向面から受けるのは魔物からしたら嫌がらせなんじゃないだろうか。にたりと笑う姿には悪意を感じる。


わざと攻撃が効かないことを見せつけているようにしか見えない。だとすると、多少の知恵が回ると言うことか。


いやいや、厄介な話だ。


そんな状況で、マリはやはりというか、なんというか。早速、根をあげていた。


「術式もダメ!打撃もダメ!コイツ、弱点ないんじゃないの?!」


マリは次こそは冷静に対処しようと思っていたにもかかわらず、すぐに叫ぶことになった。うんうん、上手くいかないもんよね。


今度はと力んでみても毎回同じシチュエーションでくるわけじゃないから仕方ない。予測できなかったことが起こりうるからパニックになってしまう。経験を積むことでなんとかするしかないと言われがちだが、今をなんとかするアドバイスがすぐに欲しい。


桜花がいたならば。


そんな思いがよぎるが、どうしようもない。


殴っても術式を当てても、どうにもならなかった。一切のダメージを与えることができなかった。


ではどうしたら良いのか。


「諦めない。諦めたら死ぬ。戦うなら最後まで心砕けたらダメ。強い心で立ち向かうって決めるの。冷静に、気を強く。」


切羽詰まったマリの声に表情を硬くしながらも、真っ直ぐ魔物を見つつ、ツバサは言う。


そうは言ってもどうしたらいいというのか?


ヤバイ!魔物はすぐ目の前まで迫ってきている。


どうする!?どうしたら良い??


殴ってもダメだった。まったくダメージなし。ツバサが弓で撃っても、矢は確かに当たったのに、矢が砕けた。術式も効かなかった。


あんな硬いやつにどうやって倒すのよぉ。無理じゃないかしら。弱点とかない魔物なのよぉ〜。マリは今にも泣き出しそうになりながらつぶやく。


すでに勝てないと諦めていた。


マリはツバサや樹里へと視線を向けた。どうする?と2人に視線を向けている。自分自身は頭が働いていない状態だ。


「マリ、樹里。下がってて。」


魔物をキッと睨むように見ていたツバサは何か閃いたのか、2人に声をかけると動き出す。


マリや樹里は言われた通りに下がりつつ、ツバサを見ていた。何をする気なのかと。


2人に見つめられる中、ツバサは天井へと弓を構える。


そして、打つ。


いつぞやに桜花が打ったように一度に多量の矢を出し、魔物ではなく、天井を打つ。


打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つーーー打ちまくる。これでもかってくらいに打ちまくる。






そして、打ちまくられた天井が崩れ落ちた。






魔物の上にあった天井部位が崩れ落ちたのだった。


つまりは力技の逃亡計画だ。


ツバサが建物をまさか壊すとは。


マリは想像していなかったツバサの行動に言葉を失ってしまう。繊細な計画ではなく、力技による突破。


「今のうちに、逃げる。」


魔物が崩れ落ちた天井の下敷きになったのを見て、ツバサはマリや樹里に言うと動き出した。


二人はツバサに続き、走り出した。


といっても。


樹里は体力も俊敏さもない。走って遠くまで行くのは難しい。


ゆえに、少し進んだとこで身を隠した。


廊下を少し進んだ先で適当な部屋に入り、部屋の中になにもいないことを確認し、身を寄せ合い、息を潜めた。


三人で息を潜め、できる限りの存在感を消し、魔物たちが去るのを待った。身を寄せ合って、息を殺して、あたりの音に耳を澄まして脅威がさるのを待った。




《カサカサカサカサーー……》




すぐそばから何やら音がした。


「ひっ!!」


マリは悲鳴を上げる。声にもならない悲鳴。ゆえに響かなかったのは幸いか。


隠れていたからこそ、小さな音にも敏感になっていた。


「落ち着いてください、マリさん。あれは虫ですよ。」


「む、虫…」


おびえるマリは身を小さくして涙を目に浮かべ樹里やツバサに目線をやった。


ツバサは表情を固くしたまま、扉の方を見ていた。


外に魔物がいないか、警戒している様子。


対して、樹里は部屋の中をキョロキョロみていた。


引き出しを開け、何もないですねぇとつぶやく姿に一切の緊張感が感じられない。


必死に適当な部屋に入ったため、部屋がどんなものであるかなど気にもしていなかった。


改めて、マリは部屋の中を見渡す。


そこまで広い部屋ではないようだ。


扉があり、入った先に窓があるが、こちらには板が打ち付けてあった。窓からの出入りは望めそうにない。廊下の窓も同様に板が打ち付けられていたからこそ、建物内は薄暗かった。


両側に二段ベッドが置かれている。上が寝るスペースで下の段が、机や棚などが置かれたタイプのもの。


2人用に作られた部屋という印象を受ける部屋だ。


家具は置かれているが、荷物はなく、誰かが使っているような様子はない。


「………どうしましょうか、これから。」


一通り部屋を見た後、樹里は2人に問う。


何もめぼしい情報は部屋からは得られなかった。


さてさて、これからどうするか。


先ほど、魔物に出会う直前に交わしていた話の続きをし、今後の方向性を決めていかなければならない。


「………みんなと、合流しよう。」


私達だけじゃどうにもならない。


とりあえずは他の面々と落ち合わなきゃ、状況に対して対処できない。


そうツバサは言う。覚悟を決めたかのように真剣であって、固い表情でツバサはマリや樹里に視線をやる。


動くのは怖いが、じっとしていても先ほどのように襲われるだけ。ならば、動くしかない。


「樹里は、周りに注意してて。魔物が、来たら、さっきみたいに、教えて。」


ツバサは弓をしっかりと握ったまま立ち上がると扉の近くまで行く。


そして、神経を研ぎ澄まし魔物がいないかを探った。


「分かりました。今は大丈夫そうです。いきましょうか。」


「まままってよ!!さっきみたいにさっきの奴に出会ったらどうすんのよ!!勝てないわ!」


ツバサの提案に2人は全然違うリアクションを取った。


樹里は1も2もなくうなずいたが、マリは進むに当たっての不安点をあげる。というか、分かりやすいくらいにビビっている。


「だからって、ここも安全じゃない。進まなきゃ、どうにもならない。魔物と出会う、対応しきれない。」


マリの不安をバッサリと切り捨てる。


自分もマリ同様のことを思い、とどまる選択肢を考えていたが、どこも安全でないならば他の子達と合流しなければと思う。


「出会ったら出会ったときです。また、逃げましょう。」


きっと、また逃げ切れますよ?


樹里は笑みを浮かべつつ、マリに言った。


ね?行きましょと樹里はマリの腕を掴むと、扉を開けたツバサの後に続く。


なんて能天気なとマリは泣きたくなるが、2人が歩を進め始めたら、マリも進むしかない。


進むと決めた2人はビビるマリに視線を向けはしたが、歩き出してしまった。2人が進み始めてしまっては、自分だけ留まるなんて事もできやしない。


マリは涙を堪えつつ、2人の横に並び、あたりをキョロキョロ落ち着きなく見渡しつつ歩き出すのであった。


怖くて怖くてたまらないが、3人で探索を開始したのであった。


読んでいただき、ありがとうございます^_^


第100話です!


そしてキリよく、1周年記念日です^_^


ありがたき幸せにございます!!


そんなわけで、次回より1周年記念の小話やります!


全6話でお送りいたします、よろしくお願いします!!

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