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冬の村でのどれそれ

レギンレイヴの口調を修正しました。2025/12/07


 天使族が綺麗な編隊を組んで、冬の村の空を飛んでいた。


 相変わらず、見事な編隊飛行だ。


 一糸乱れぬとは、このことだろう。


 しかし、天使族は首を動かしている様子がないのに、どうやってほかの者の位置を把握はあくしているのだろうか?


 ……風の動きと、だいたいの感覚でわかると?


 俺の横で護衛をしているレギンレイヴが教えてくれた。


 なるほど。


 そんなことができるんだな。


「そうでもないと、地上からの攻撃に対応できませんので」


 レギンレイヴはそう言って、上空の天使族に向けてすごい勢いで槍を投げた。


 当たるんじゃないかと思ったが、上空の天使族は綺麗に槍を避けた。


 おおっ。


 槍はそのまま放物線を描いて森のなかに。


 上空の天使族は槍の回避で少し編隊が乱れたが、すぐに修正された。


 避けると信じて投げたんだろうけど、危ないことを。


「油断していない者を狙ったので大丈夫です。

 あれで、油断していた者の気も引き締まります」


 編隊を乱したのが油断していた者らしい。


 えーっと、誰だったかは名を言わないでおこう。


 とりあえず、投げた槍を回収に行かないとな。


「そちらも大丈夫です」


 上空を飛んでいる天使族の編隊から三人ほど離れ、槍が落ちたであろう場所に向かった。


 さきほど、編隊を乱した者たちだ。


 編隊を率いているのはグランマリアの母、ラズマリア。


 彼女も誰が気を抜いていたか、わかっていたということか。


「慣れた空であろうとも、ここは死の森。

 気を抜いていい場所ではありません」


 うーん。


 そうなんだろうけど、村では気を抜けるぐらいであってほしいなぁ。


 ピリピリしているのはよろしくない。


「失礼しました。

 飛行中は、気を抜いてはいけません」


 そうだな。


 まったくもってその通りだ。





 村の俺の屋敷にある広い会議室の一つに、文官娘衆たちの一部が集まっていた。


 文官娘衆たちにとって冬は気を抜ける休暇期間みたいなものなのだけど、仕事をしていないと落ち着かないという者もいる。


 ここにいる彼女たちがそうだ。


 休めるときに休んでほしいと思いつつも、働きたいと望む者を無理やりに休ませるのもどうかと判断に困る。


 まあ、フラウが体調を含めて文官娘衆全体を管理してくれているのでそっちを信じよう。


「お越しいただき、ありがとうございます。

 村長」


 本日は、彼女たちの仕事の一つである、五村の調査分析。


 その中間報告会。


 五村のことはヨウコに任せているが、違う角度からの調査分析は必要だからな。


 ここで俺が聞いて、問題がなければ調査分析を継続。


 最終的に、俺からヨウコ、もしくは五村に報告、提言する形になる。


 俺が指定された席に座り、前にお茶が置かれたので報告会がスタートする。


「では。

 私の班から。

 五村でのケーキ販売に関してです」


 五村でのケーキ販売。


 洋菓子店フェアリーフェアリをケーキの生産工場とし、移動屋台で売り歩いているのだが……めちゃくちゃ売れている。


 売れるのはわかっていた。


 強い希望があったから販売を始めたわけだしな。


 だけど、販売前の予想を大きく上回って売れたのは問題だ。


 上方向とはいえ、予想を大きく外したわけだから。


 文官娘衆たちもそう思ったのだろう。


 なぜ予想が外れたのかを調査した。


「結論から申しますと、女性と子供です」


 女性と子供に人気ということか?


 しかし、ケーキはもとからそういった層からの希望で販売したわけだが……


「どうも生活習慣と結びついているようです」


 生活習慣?


 なにかあったか?


「えーっと、魔王国に限らず、世間一般の庶民の家庭では外食はしません。

 食事は家でするものです」


 そうらしいな。


 家庭がある者は、外食するより家で食べることのほうが多い。


 外食は家庭を持たない者が、食事を作る手間を惜しんでする行為だ。


「ですが、五村やシャシャートの街では魅力的な食事を提供する店が増え、家庭を持つ者でも外食をする者が増加しました」


 そうだな。


 ああ、なるほど。


 外で仕事をする者は外食機会が多いけど、家庭を守っている者や子供は外食機会が少ないと。


「はい。

 ただ、五村では治安がよいので、女性や子供の外食機会が増えております」


 それでケーキが予想よりも売れたんだな。


「いえ。

 もう一つ、要素がはさまります」


 ?


「女性や子供の外食機会は増えましたが、全員ではありません」


 ま、まあ、そうだな。


「外食機会に恵まれない女性や子供を持ちながらも外食する者が、ケーキをお土産として購入しているようです」


 あー……


 外食が魅力的になった。


 外食する者が増えた。


 結果、外食できない者への土産として、ケーキが売れたと。


「はい。

 一般の家庭にとってケーキは安いものではないのですが、女性や子供には大人気です。

 奥さんの機嫌を損ねてもケーキを持ち帰れば、許されたという話が出るぐらいに」


 なるほどなぁ。


 しかし、そうだとするとこの売り上げは続くだろうか?


 それとも今だけだろうか?


「洋菓子店フェアリーフェアリの店長代理であるロロネさんともお話をしましたが、今後は少し落ち込むだろうけど、新作を展開して維持していきたいとおっしゃってました」


 ふむ。


 新作は悪くない。


 だが、新作は半年に一回ぐらいでいいとロロネに言っておこう。


 無理して新作を頻発ひんぱつしても、売れるのは最初だけだ。


 長く愛される味を目指してほしい。


「新作の試食はお任せください。

 あと、私たちの今後の予想には、お土産の要素を大きくするようにします」


 そうだな。


 これまでもお土産分は予想に入れていたが、大きくは考えていなかった。


 予想が大きく外れた原因がわかって、一安心だ。


「いえ。

 これが予想が大きく外れた原因のすべてと決まったわけではありません」


 あ、そうだな。


 原因の一つか。


「ほかの可能性もあると思いますので、私どもの班は引き続き調査を続行します」


 わかった、頑張ってくれ。


「はい。

 あと、これは調査中に出てきた提案なのですが」


 なんだ?


「外食する子供の食事に関してです。

 屋台などでは買う量を調整できるのですが、お店などでは一人前が基本ですので……」


 子供には多すぎるか?


「はい。

 村長の関係するお店に、子供用の少量メニューを用意できないかと。

 村長のお店で子供用のメニューを出せば、ほかの店も追従すると思いますので」


 あー……なるほど。


 うーん。


 多くするのはできるし、巨人族など体の大きな種族のために大盛メニューはある。


 しかし、子供用の少量メニューは用意していない。


 子供が来ることを想定していないからな。


 対応できるだろうか?


 俺が関係する店はクロトユキ、青銅茶屋カフェ・ブルー、甘味堂コーリン、酒肉ニーズ、麺屋ブリトア。


 それと、シャシャートの街にあるカレーをメインに扱うマルーラと、俺が不定期にやっている屋台ラーメン。


 増えたなぁ。


 えーっと、青銅茶屋と酒肉ニーズは客層的に子供は来ないので考えなくていいだろう。


 俺が不定期にやっている屋台ラーメンも、深夜営業が中心なのでこれも考えなくていい。


 甘味堂コーリンは小売り販売だから、こちらも考えなくていい。


 クロトユキは喫茶店。


 甘い物とお茶を楽しんでもらう店なので、子供用とか考えなくてもそんなに量がない。


 軽食中心のはずだから、考えなくても……


「ナポリタンと呼ばれる赤い麵料理を出すようになっていましたよ」


 ……すまない。


 それ、俺が教えた。


「カツ丼もありました」


 すまない。


 それも、俺が教えた。


 クロトユキは子供用を考えよう。


 えーっと、あとは麺屋ブリトア。


 ……


 子供用ラーメンって可能か?


 ミニラーメン?


 いや、ハーフラーメン?


 ラーメン作りを考えると、ハーフラーメンはロスが出やすい。


 売り上げ的にも負担になる。


 これは麺屋ブリトアのスタッフと相談だな。


 マルーラに関しては、カレーの少量提供は問題ないだろう。


 値段と専用の皿を考えるぐらい。


 まあ、俺が勝手に決めず、店長代理のマルコスとポーラと相談だ。



 ということで、子供用の少量メニューを本格的に考えるのはクロトユキ。


 だが、これも俺が勝手に決めるわけにはいかない。


 クロトユキの店長代理であるキネスタと検討するとしよう。


「村長。

 そのクロトユキの子供用メニューなのですが、前に大樹の村でお子さまたちにお出ししたプレート料理はどうでしょう」


 子供たちに出したプレート料理?


 ああ、お子さまランチのことね。


「はい。

 あれはお子さまたちが、とくに喜んでいました」


 そうだけど……あれって、めちゃくちゃ手間がかかるんだよなぁ。


 いろいろな料理を一つのプレートに並べるから。


 お子さまランチを作るときは、動ける鬼人族メイドたちが総出だったぐらいだ。


「それは、お子さまランチを見た大人たちが欲しがったからではありませんか?」


 君たちも欲しがったよね?


「美味しかったです」


「いろいろな料理があってよかったです」


「デザートのプリン、最高でした」


 あのプリン、ほんとうは翌日のデザート予定だったんだからな。


 プリンはすぐに準備できないんだから。


 しかし、まあ……事前に用意して数量限定ならいけるか?


 うーん。


 検討はするけど、期待しないように。


「はーい」


 子供用の少量メニューの話はここまで。


 では、次の班。


 どうぞ。



 文官娘衆たちによる五村の調査分析の中間報告会は、それなりに真剣に進行した。





レギンレイヴ「気を抜いている者を狙うのは危ないから外して……えいっ!」

狙われた天使「びっくりした。びっくりした。びっくりした」

ラズマリア 「褒められたと思いなさい。あと、油断していた者、槍の回収に」

油断した天使「す、すみませんでしたー」



文官娘衆A 「私たちの班は、魔王国貴族の重鎮の母や祖母が参加する婦人会に関してです」

文官娘衆B 「……手玉に取られました」

文官娘衆C 「こっちの手口、全部バレてるから」

文官娘衆D 「対策を考えます」



フラウ   「働きたがるのはあとから来た者たちばかりで、初期組は……」

ロザリンド 「休めるときは休むべき」

クラカッセ 「まったりしましょう」

ロアージュ 「どうせ春になったらこれでもかってぐらいに忙しくなるし」

ラッシャーシ「みなさん、新作のケーキをもらってきましたよー」

初期組   「わーい」



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― 新着の感想 ―
solaさん、問題が無いから調査を継続で、問題があれば問題解決に向けての対処では? 長期間に渡る調査は継続して行わないと単発調査では問題があるかどうかの判別ができない事がありますからね。
キャラのゲームのターンとターンの間に挟まる話を思い出す回好き
>ここで俺が聞いて、問題がなければ調査分析を継続。 問題があれば、じゃない?
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