家に帰って相談
俺はガルフを残し、大樹の村に戻ることになった。
俺の中では転移門を開くことを決めているが、相談はしないといけないのですぐに開けるかどうかわからないと言ったのだが、ガルフはピリカを見捨てられないらしい。
ダガも残りたそうだったが、俺の護衛が大事と残らなかった。
この後はハクレンの背に乗って、ドライムの巣に行くだけなので護衛が必要だとは思わないが……
他にヨウコやハイエルフ、リザードマンたちだっているし。
護衛として同行したのだから、最後までということだそうだ。
ダガらしい。
しかし、それならいっそ、一緒に連れて帰るのはどうだ?
駄目?
生活をさせるわけではなく、強くするのが目的だから、適切な場所で戦わせたいと。
なるほど。
適切な場所がどういった場所なのか俺にはわからないので、ガルフに任せるのが一番か。
無理せず、怪我のないようにな。
金は置いていくから。
え?
置いていくなら調味料の方が良い?
わかった。
手持ち分だけで悪いが……
それと……あ、この件を奥さんに正確に報告ね。
わかったけど、内緒にしなくていいのか?
隠してもバレる?
うん、そうだよな。
……
まかせておけ!
ん?
なんだ?
その不安そうな顔は?
俺の伝達力を疑っているのか?
安心しろ。
揉め事を作って喜ぶほど、暇じゃないぞ。
手紙を預かった。
余計なことは言わなくて良いそうだ。
……
解せぬ。
ドライムの巣で、一泊。
ドライムの巣で働く悪魔族たちの激しい歓待を受けた。
いつもより規模が大きかったのは、ラスティが子を産んだからだそうだ。
「ラスティ様のこと、これからもよろしくお願いします」
「ラナ様は可愛いですか?
ドライム様から話は窺うのですが……」
「ラナ様がこちらに来る予定は?」
その中で一人、妙に怖い顔の悪魔族が……
「ラスティ様を泣かすんじゃねぇぞ」
と、お兄ちゃんみたいなことを言っていた。
泣かす気はないが……えっと、ラスティとの関係は?
あ、グッチに怒られてる。
お兄ちゃんみたいなことを言ってみたかったのね。
お酒が入り過ぎてるなぁ。
ちなみに、ドライムは不在。
出発前、大樹の村にいたからなぁ。
翌日の夕方。
大樹の村に到着。
一泊だけの小旅行だった。
同行してくれたダガ、ハクレン、ヨウコ、ハイエルフ、リザードマンに礼を言って解散。
色々と仕事はあるが……
とりあえず、預かったガルフの手紙をガルフの奥さんに。
余計なことは言わない。
「このピリカという方は、美人でしたか?」
どう答えるのが正解なのだろうか?
試練を乗り越えた俺は、少し休憩。
妙に疲れた。
自室の座椅子に座り、まったり。
子猫たちが俺の膝の上に……ああ、ミエルは相変わらず頭の上がいいのね。
落ちるなよ。
ん?
……ああ、ルー。
帰ったよ。
ん?
膝の上の子猫をのけて……そこにお前が頭を置くのね。
構わないが、それだと、のけられた子猫たちがお前の顔の上に乗るぞ。
ほら。
ははは。
報告を兼ねての夕食なので、いつもより人が多い。
主に同行した者たちと、報告を受ける文官娘衆と種族の代表。
俺は一通りの報告の後、五村への転移門を開くことを提案。
流され気味ではあるが、あの距離の短縮は魅力的だ。
五村からシャシャートの街まで一日。
いや、五村がシャシャートの街と交易を始めれば、シャシャートの街に行かなくてもよくなる。
つまり、大樹のダンジョンに潜れば、すぐそばに街があるのと同じだ。
もちろん、問題もある。
いきなり、あの人数をまとめることが出来るのか?
先代の四天王二人が頑張ってくれているが、人数が増えればどうやっても問題が出る。
俺が向こうにいた数時間だけでも、問題がいくつも発生していた。
五村を誰に任せるべきなのか。
また、建物が出来ている場所では普通に通貨を使っての売買が行われていた。
褒賞メダルを通貨代わりにしている大樹の村や、一村~四村とは扱いを変えないといけないだろう。
面倒だが、必要な処置だ。
この辺りを考えずに、転移門を開くのは……危ない。
明日から、集中的に話し合おう。
会議には種族代表も出てもらえると助かる。
うん、会議は明日から。
報告はこれで終わり。
今日は食べて飲んで、寝よう。
話し合いは五日ほど掛かった。
転移門を開くのは早々の可決。
五村の代表に関しては、四村のベルからの提案で、新たなマーキュリー種が目覚めるのを待つことになった。
いや、実はすでに起きていて、問題なく活動できるように勉強している最中。
三人同時らしく、その三人をそのまま五村に放り込むとベルが意気込んでいる。
誰も引き受けたがらなかったので、ありがたかったが……
いいのか?
悪い気もするなぁ。
まあ、フタも含めて四人が向こうに行くワケだし、寂しくはないか。
話し合いの大半が、転移門の通行に関することだ。
無条件に五村から人を移動させるのは危険だと、反対意見が多かった。
逆に、大樹の村から五村への移動も、頻繁に行うべきではないとされた。
向こうに使うなと言って、こちらが使うのは筋が通らないとの意見だ。
実際、主に使いたいのは作物や商品の輸出入。
あとはシャシャートの街にいるマルコスやポーラの移動用と考えている。
なので、転移門はできるだけ作物や商品を運ぶ時だけ使うようにと。
まあ、俺やガルフ、マルコス、ポーラが移動に利用するのは問題ないとの意見でまとまった。
もちろん、俺が移動する時は護衛も同行するらしいが……
五村の扱いは、大樹の村傘下ではあるが、独立を重んじる方向に意見が進んだ。
さすがに他の村と同列扱いは問題があるとみんな思ったらしい。
……
俺は五村の規模が大きすぎて一段上に扱うべきと思ったけど、みんなは五村を一段下にみているような気がする。
気のせいかな?
実際に見ていないからか?
それとも、勝手に出来た村……というか街だからだろうか?
まあ、実際のところ、交易相手と考えるだけなのが正解なのかもしれない。
なんだったら、統治も向こうに完全に任せちゃってもいいかな?
こっちは作物が売れたら良いんだし。
あー、でも、あまり無責任なことはできないか。
魔王国側ともよく話し合おう。
三日後。
五村との転移門が開かれた。
三日待ったのは、屋敷を建てる為の建材を用意し、ダンジョン内に運ぶ為だ。
まだ暑いのに、申し訳ない。
いきなり建てて、向こうにいる者達を驚かせてやろう。
「転移門に異常ありません。
天気は晴れです。
問題ありません」
偵察として先に転移門に入ったリザードマンが、戻ってきた。
雨だったら、建設は先延ばしの予定だったが、晴れなら問題なし。
転移門を使って、建材が次々と運ばれる。
建設のメインとなるハイエルフたちやリザードマンたちも。
俺はその様子を見た後、ダンジョンを出る。
横にはハイエルフのリア。
わかっている。
建材がまだまだ足りないんだよな。
俺はクロの子供たちやザブトンの子供たちを伴ない、森に向かった。
余談だが、転移門が開いたことを知ったガルフは大急ぎで大樹の村に戻り、奥さんの元に。
留守にすることが多いのだから、それほど心配する必要はないと思うけどなぁ。
いつもは傍に女性を近づけないけど、今回は近かったから?
……
あ、奥さんも獣人族か。
鼻が良いのね。
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