魔王国のホウ=レグ
私の名はホウ。
レグ家の六女で、魔王国四天王の一人。
年齢は……数えるのを止めました。
残念なことに、まだお相手には恵まれていません。
おかしい。
美貌的には問題が無いはずなのに。
胸もお尻もそれなり。
うん、平均並みか平均以上。
背中の赤い翼も、派手派手しい感じではなく落ち着いた感じですし、自画自賛ですが綺麗だと思います。
資産のほうは控えめに表現してもお金持ちです。
レグ家とは別に、私の自領を持っていますしね。
性格は……少々キツいと言われることがありますが心配無用です。
男に合わせます。
可愛い感じが良いというならそうしましょう。
クールな感じが良いというならそうしましょう。
四天王の地位が邪魔?
結婚してくれるなら四天王の地位だって捨てましょう。
なのになぜ?
地位や名誉、お金目当てでさえ近寄る者がいないのは?
誰かが邪魔しているの?
私にそんなに恨みがあるの?
それなら堂々と名乗り出なさい。
男なら夫にしてあげますから。
復讐プレイが楽しめますよ。
大丈夫です。
私、頑張りますから。
ふふふ……
こほん。
この話題は止めましょう。
飲むお酒の量が増えてしまいます。
さて、ここ数年。
魔王国には一つの重要案件があります。
大樹の村。
魔王国領内にある死の森。
その死の森の中にできた村です。
最初、その話を聞いた時は笑って流しました。
冗談だと思ったからです。
だって死の森ですよ。
触っちゃ駄目、近寄っちゃ駄目の死の森です。
そこに村ができたって、どうやってですか?
あそこに住む魔物や魔獣は、魔王国軍の精鋭でも勝てないのですよ。
まだドラゴンが巣を作ったと言ってくれたほうが信じられます。
まあ、それも近くに門番竜がいますから、ありえないと笑っちゃいますけどね。
現実は冗談ではありませんでした。
村ができており、そこに魔王国でも危険人物にリストアップされている吸血姫ルールーシー、殲滅天使のティアが確認されました。
さらに、門番竜の娘ラスティスムーン。
彼女は危険人物どころではなく、災厄です。
自然災害がそこにあるのと一緒です。
極めつけが死の森でも上位種のデーモンスパイダー、インフェルノウルフが群れでいると。
現実のほうが冗談のようでした。
なにがどうなって、そこにいるのか……
まあ、この件に関してはクローム伯が担当することになったので、私は意識から消しました。
関わっちゃ駄目と思ったからです。
失敗でした。
もっと早く関わるべきでした。
あの村にあんなに美味しいお酒があるなんて!
そしてクローム伯。
そのお酒を私に渡さず、魔王様や他の四天王にだけ渡していたなんて……
思わず、クローム伯の領地にどう戦争を仕掛けるか本気で検討してしまいました。
十回やれば七回は勝てます。
でも、もう良いのです。
ちゃんと謝ってくれましたから。
魔王様も加担していたのですね。
そんなに頭を下げなくて良いんですよ。
そこまで怒っていませんから。
手元にあるお酒を全て差し出してくれるのでしたら。
それと、これからはちゃんと私にもお酒を渡してくれるのですよね。
……
しまった。
お酒じゃなくて、男を紹介してもらえばよかった。
私の馬鹿っ。
大樹の村に行き、お酒の取引を直接することになりました。
決して、お祭りの見物ではありません。
あれは悪い夢です。
おかしいですね。
まだ数杯しか飲んでないのに。
ふふふ。
私にはお酒。
そうお酒があれば良いのです。
ここのお酒は最高です。
しかも種類も豊富。
私の領地でもお酒造りをやっていますけど、これほどの味はできません。
悔しい。
でも、美味しい。
ここにいるドワーフたちは良いですね。
何も言わなくても、色々なお酒を出してくれます。
種族がドワーフでさえなければ……私は気にしないのだけど、彼らはヒゲがないと駄目だそうです。
流石にヒゲはちょっと……うん、私には似合わない。
残念。
それは横に置いておいて、今度、私の考えた方法でお酒を造ってくれませんか?
前々から色々と考えていたのです。
自分の領地じゃできなくて……
領主だったらなんでもできると思っています?
残念ながら、思ったより不自由なんですよ。
領主は領民のために働くものですからね。
私が自由にして良い部分なんてありません。
上手くいっているから、お金は増えるんですけどね。
まあ、ちゃんとお金は払うので、よろしくお願いします。
村長が許可すれば?
わかりました。
今度、計画書を村長に送っておきます。
大樹の村がシャシャートの街で店を出すそうです。
良い話です。
ただ、トラブルは困ります。
手を回しておきたいですが……シャシャートの街の代官は優秀な男です。
問題は無いでしょう。
とりあえず、代官には挨拶だけ。
あとは……護衛は派遣しておきますか。
死人や怪我人が出ると、関係が悪化するかもしれませんからね。
お酒のためだけじゃありませんよ。
魔王国全体を考えてです。
あと、情報も欲しいですしね。
お店でお酒を扱うようになったら、必ず連絡するように。
シャシャートの街に派遣した護衛から連絡が届きました。
無事に開店したようです。
カレーを販売するお店で、お酒は扱わないのですか。
残念です。
カレーはライスの不足を補うため、周辺のお店からパンを購入していると……
大樹の村でカレーは食べましたが、あれならパンでも売れるでしょう。
周辺のお店とも仲良くやっているようですね。
よかったですけど……この店の規模は記入ミスかしら?
従業員の数も?
お店は順調のようですね。
遊戯コーナーのミニボウリングも盛況と。
大樹の村にあった遊戯ですね。
それをタダで……なるほど、お客を集める目的ですか。
やりますね。
カレーが美味しいのはわかりましたから、味のレポートは不要です。
報告にミニボウリングのレーン状況が加わったのはどうしてかしら?
七番レーンに関しては、やたら細かいわね。
スプリットの取り方を報告されても困るのだけど。
ちゃんと護衛の仕事をしているのか、不安になってしまいます。
お店でトラブルが起きたそうです。
暴動と呼ぶのは大袈裟ですが、大きな騒動だったようです。
品切れによるカレーの提供停止が原因と……
あー……確かにあの味はクセになりますからね。
私も時々、夢に見ます。
今度、食べに行こうかしら。
っと、その前に報告書の続きを。
大きな騒動は、村長と呼ばれる人が来て無事に鎮火。
……
え?
村長?
村長って、大樹の村の村長?
それがシャシャートの街に来ているのですか?
……
駄目駄目。
現実逃避は駄目。
お酒に逃げちゃいけない。
頑張って、続きを読みましょう。
その後、カレーの無料提供で事を収め、小さなお祭りのようになったのですか。
ゴロウン商会が全面バックアップしたみたいですね。
この報告書だと、ゴロウン商会を手足のように使った感じになっていますけど、そんなワケないじゃないですか。
ゴロウン商会はシャシャートの街に本部を置く大商会です。
そのシャシャートの街は魔王国の経済の三パーセントを占めると言える経済規模です。
三パーセントは数字の上では大したことないように感じますが、そんなことはありません。
魔王国の王都で五パーセント。
他の街では一パーセント未満です。
大きいです。
かなり大きいです。
そのうえ、王都への距離を考えれば、かなり影響力を持っていると言えます。
そのシャシャートの街を代表し、左右できるのがゴロウン商会です。
その商会の会頭を側近のように従え、次期会頭を顎で使っていたなんて……
大樹の村にいましたね、会頭。
……
飲みましょう。
ちょうどメイドが来ました。
すみませんが、一杯、お願いします。
あ、小さいグラスじゃなくて、大きいグラスで。
先を読むのに勇気が必要です。
ええと……その後、別のトラブル?
近隣の飲食店から苦情が来たと……
以前からカレーの人気でお客を奪っていたのに、カレーの無料提供で止めを刺したと。
考えてみれば当然ですね。
大樹の村の村長は、お店の経営者としては素人なのでしょうか?
んー……
村長はその苦情を予想していた?
苦情を言ってきた者を次々に取り込み、店の中に街を作った?
それで解決?
?
どういうことでしょうか?
ワケがわかりません。
行って確かめたほうが良いでしょうか。
うーむ。
続きを読みます。
ミニボウリングがサイズアップし、普通のボウリングになったと。
今度の七番レーンは手強い。
無駄な報告ですが、なごみます。
そして、ボウリング大会が行われ、優勝したと。
何をやっているのでしょうか?
ちゃんと護衛をやっているのですか?
優勝賞品としてお酒を貰って、大変嬉しかったです?
え?
……
…………
……………………
ああ、お酒の販売を始めたのですね。
ちょっとシャシャートの街に行ってきます。




