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第12回異世界能力選別大会

「えー、久しぶりにやってまいりましたこの熱き男同士の戦い。第12回異世界能力争奪バトルを開催します!

 実況はわたくし、匿名にて失礼いたします、えろいむえっさいむ。解説は、異世界転移の管理人であり、さらに今回の大会の主催者であり、さらにさらにスキルの開発研究の第一人者であらせられるこちらの御方!」


「はい、白い老人の中の人です」


「この二人でお送りしたいと思います。では今日も詳しい解説をよろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします」


「さて、今回で12回となりましたこの大会。異世界に転移する際に与えられる様々なチート能力を使ってそれぞれに争い競いあう競技でありますが、一体今回のテーマはなんでしょう?」


「はい、今回は今までの大会の趣旨と大きくテーマを異なってお送りしております。それは『独創性』です」


「へぇ、独創性ですか。それは一体どういう意味ですか?」


「はい、今までは単純に『どの能力が一番強いか』を確かめたくて開催しておりました。しかし、今回はもっと根源的に『能力を与えられた者がその能力をどう工夫するか』が見たくて参加者を集めました」


「どう工夫するか、ですか? ええと具体的にどういう意味でしょう?」


「はい、今までは『剣技』スキルや『黒魔法』スキル持ちのド派手なバトルがメインで開催しておりました。それゆえに盛り上がりはしたのですが、ただこの場合、そもそも与えられた能力が強すぎて、参加者同士での工夫などが全く見られなかったのです。『強い方が強いから勝つ』という何の面白みもない結果ばかりになってしまうのです」


「まるでジャンケンでグーがパーに絶対勝てないのと同じですね。よくある『チート能力持って異世界転生すりゃ誰だって活躍できるだろ常識的に考えて』という状況になってしまってるわけですか」


「はい、または異世界に転移した際、能力を過信して失敗する者も多数出るようなので、その現状を打破してほしいがために、あえて基本的な能力と言いますか、あまり直接的に戦闘にかかわらない能力者同士を争わせてみようと思って今回の参加者を選考しました。なので今回は『戦闘向きではない能力者同士の能力バトル』が楽しめると思います」


「なるほど、よくわかりました。解説ありがとうございます。

 ちなみに今大会は総勢8名の勝ち上がりトーナメント制で行われて、優勝賞品はいつものように『参加者全員分の能力をプレゼント』となります」


「はい、頑張ってほしいですねぇ」


「準備期間は能力を与えられて丸72時間、勝敗は対戦相手の死亡、または戦闘不能及び試合の棄権により決着がつくものとします。

 では早速、第一試合を開始しましょう。選手入場です!!」


「はい、よろしくお願いします」


「第一試合は……申し訳ありませんが個人情報保護、及び参加者の希望により、参加者の名前は匿名とさせていただきます」


「はい、殺害ありきの試合ですからねぇ。現代人の感覚としては当然のことでしょう」


「もちろん、事前に選手同士に今大会の趣旨をきちんと説明したうえで了承を得ておりますので、ご安心ください。

 では改めまして第一試合の参加者を紹介いたします。匿名同士ではわかりづらいので、能力名で選手のご紹介となります。東は『絶対防御』スキル所有者! 西は『幸運』スキル所有者です! では能力の詳しい解説をお願いします」


「はい、『絶対防御』はその名の通り、外部からの攻撃を一切受け付けないスキルですね。どんな敵と戦おうが不意打ちをもらおうが怖くなくなりますね。で、こちらの『幸運』はとにかく運がよくなるスキルです。自分の都合が良いように物事が進むようになります」


「ありがとうございます。どちらも殺傷能力はありませんが強い能力ですね。第一回戦からどのような展開になるのか楽しみです!

 早速試合を開始してもらいましょう! 第一試合、はじめ! っとああああ、『絶対防御』が転んだっ!?」


「はい、すごい勢いですっ転びましたねぇ」


「構えたこん棒で開幕突進しようとした『絶対防御』が一歩目で蹴躓いたっ! そして、おや、何か様子がおかしい。全く動かなくなりました。いったいどうしたことでしょう……。

 レフェリーが近寄っていきます……。おっと、勝利宣言をしたっ!? 勝者は西、『幸運』だぁっ! 一瞬で勝負が決まってしまった!? このわずか一瞬の間に、一体『絶対防御』に何が起こったのか!?」


「はい、どうやら死んでいるようです。今医療班が死因を調べていますねぇ」


「……ええと、死因について結果が出ました。どうやら駆け出した直後に自らの足に引っかかり転倒、その際の衝撃で舌が裏返り、ノドに詰まって即死したそうです。いやぁ、こんなこともあるんですねぇ」


「はい、『絶対防御』は他者からの攻撃は防ぎますが、自分の身体による害悪は防げませんからねぇ。さすが『幸運』と言わざるを得ない結果ですね。戦わずにして勝つとは」


「そうですねぇ。まさかのまさか、戦闘向けではないスキル同士の試合のはずなのに、開幕1秒で第一試合が終わってしまいました。この展開いったい誰が予想したのか!!」


「はい、ビックリしましたねぇ」


「ですが素晴らしい『幸運』でした、ありがとうございます!

 ……では第一試合の興奮冷めやらぬうちに、第二試合を開始したいと思います! 次の試合は東『アイテムボックス』スキル、そして西『仕切り直し』スキルです!」


「はい、『アイテムボックス』は、任意の物品をその状態を保持したまま異空間に格納・引出ができるスキルですねぇ。異空間に仕舞える物質の上限は無限、時間も停止状態で保存できる優れものです。『仕切り直し』は死亡した際に、その死亡した瞬間の記憶を引き継いで初期からやり直すスキルですね。ゲームのリセットと同じだと思っていただければわかりやすいと思います」


「なるほど、スキルの詳細説明、ありがとうございます。ですが、その、やり直しを幾らでも可能だとすると、今回の試合は『仕切り直し』スキルの方が有利なのではないですか?」


「はい、すでに何回も負けてるかもしれませんが、結果には影響しないですからねぇ。どんな強力な敵が相手でも、対策を十分練られますからね。優勝候補の一人です」


「そうですか。なら『アイテムボックス』スキル所有者がどう試合を展開するかが見ものですね。

 では早速第二試合を開始した……え、なんですか。え、『仕切り直し』選手から? ええと、少々お待ちください」


「はい、どうしました?」


「ええと、ただいま『仕切り直し』選手からの希望により、第二試合を降参するとの連絡が入りました。『アイテムボックス』選手の不戦勝となります。ってあれ、なんでですかね?」


「はい、たぶんですが、もう何千回も戦っていて、勝てないと悟ったんじゃないでしょうか。詳しい話を聞きたいところですねぇ」


「なるほど、確かに目が虚ろで、何もしていないのに虚脱感が伺える有様です。よほど勝てなかったのでしょうか、心が折れてしまったという感じですかねぇ」


「はい、マンガの主人公みたいに『何度死んでも絶対勝つ!』という強い心意気がなければ、何度もやり直しさせられる羽目になる『仕切り直し』は相性が悪いんでしょうねぇ。以前も100回くらいで使用者がダメになってしまいましたし」


「能力的には圧倒的に有利でも、それを生かせるとは限らないわけですね。試合開始直前に浅はかな予想をしていた私はまだまだ甘いと言ったところですね。

 『アイテムボックス』がどうやって『仕切り直し』を倒したのかとても気になりますが、何一つわからないまま試合に決着がついてしまいました。いやー、予想外でしたねぇ」


「はい、そうですねぇ」


「では気を取り直して第三試合を開始いたしましょう! 第三試合はとんでもない組み合わせだ! 東『回復魔法』スキル所有者! 西『不死』スキル所有者だ!!」


「はい、どちらもほぼ名前通りですね。『回復魔法』は、正確に言えば対象の身体にかかる異常部位を正常な状態に修正するスキルで、『不死』はそのままずばり死ななくなるスキルです」


「これは面白い組み合わせだ! 味方を癒すためのスキルである『回復魔法』と、何をされても死にゃぁしない『不死』だぁ!! 結果が予想つきそうで予想がつかない!!」


「はい、単純に考えれば死なない『不死』の方が有利ですが、応用力の高い『回復魔法』の方が強そうですねぇ。相手の情報を知って『回復魔法』が何をするか、そこが勝負の分かれ目になるでしょう」


「今回の大会はスキル使用者の応用力を見たいわけですからね、この試合は実に見どころが大きいでしょう! 

 さあゴングが鳴りました、第三試合開始です!!

 おっと、早速『回復魔法』が両手を前に突き出して何かをしています! 魔法を使っているのでしょうか? 『不死』が苦しみ出しております!! 一体何が起こったのでしょう!?」


「はい、ああ、よくある治癒能力の暴走攻撃ですねぇ。過ぎたるは猶及ばざるが如し、治癒能力を過剰に注ぎ込まれると健康な体に害を与える結果になるというやつですね。これは苦しそうだ」


「ええと、つまり全身が癌になるようなものでしょうか?」


「はい、そうですねぇ」


「それは、それは何とも辛い! 実際『不死』が脂汗をダラダラ流しながら跪いて動けなくなっております。武器を持つこともできないのでしょう、ただただ一方的に過剰な『回復魔法』の重ね掛けの餌食になっております!」


「はい、これは一方的ですねぇ。でも困ったことにもなりましたねぇ」


「そうですねぇ、全く決着がつきそうもありませんね。さっきから一方的に『回復魔法』が『不死』を痛めつけておりますが、しかし決定打にはなっていない。さすが『不死』ですねぇ」


「はい、基本的に何があっても死なないように設定しましたから」


「さすがに気が咎めるのか、『回復魔法』が表情を曇らせております。しかしその手は休めない。あくまでも勝利のために突き進む! 『不死』が苦しみのたうち回っております! とても辛そうだ!!」


「はい、いやー可哀想ですねぇ」


「ああーっと、精神的にか魔力的にかはわかりませんが、さすがに限界だったのか、『回復魔法』が手を止めています! 審判に声をかけて何かを訴えているようです。マイク音声によると……どうやら勝負はどう見ても自分が有利だから、判定勝利にしてほしいとの要望だそうです。ああ、なんと慈悲深い!」


「はい、まあ普通の一般人は、口ではぶっ殺すとか大仰なことを言いますけれど、実際のところはあまり他人を傷つけることは好きではないですからねぇ」


「優しいというかヘタレというか判断に苦しみますが、自分にも思い当たる節があるので否定できません!

 『回復魔法』が必死に訴えておりますが、審判は勝敗が決まってないためジャッジを下せない模様です。

 そして、おや、もう過剰回復攻撃は止んでおりますが、『不死』が苦しんでおりますねぇ。どうしたんでしょうか?」


「はい、どうやら手遅れだったみたいですねぇ。まあ『不死』は死なないというだけで、自己回復力が優れているという風に設定しておりませんから」


「おっとスキル設定者ならではのエグい内情バラしがきたぁ!! 『回復魔法』も『不死』が苦しんでいることに気づいたのか、動揺しているようです。回復魔法をかけて癒して良いものか悩んでいるようです。まだ勝敗のジャッジが行われていないというのに対戦相手の心配をするなんて、『回復魔法』は善人なのか状況判断能力が低いのかぁ!」


「はい、見た目が可愛かったから『回復魔法』スキルを与えましたからねぇ。見た目通り根も優しかったのかもしれませんねぇ」


「おお、悩みながらも癒しの魔法をかけることに決めたようです。『回復魔法』が『不死』に癒しをかけています! 殺伐とした大会の一試合だというのに、心温まる場面が見れるとは、予想してもおりませんでした! さすが『独創性』を主題にした大会だぁ!

 ただ、おやぁ? 手遅れだったのか、『不死』が苦しみもがき続けている! 『回復魔法』も動揺して、癒しの魔法をかけるべきかやめるべきか悩んでいる! せめて痛みを軽減させようとしているのか、額に汗かいて看護を行っております! 『不死』よ、羨ましいぞ!!

 ……おや、何か『不死』の様子が変わった気が……?」


「はい、何か違和感がありますねぇ。体が大きくなっている?」


「おお、言われてみればそうですねぇ。いつの間にか不死の着ていた服がパツンパツンになっている。体も一回り大きくなったように見えます。これは一体どうしたことでしょうか」


「はい、たぶんですが……細胞が過剰分裂しているのでしょうかねぇ?」


「過剰分裂ですか? 一体なんですか、それ?」


「はい、『回復魔法』とはつまり、生体細胞の活性化に伴う新しい細胞分裂の誘発ですからねぇ。過剰の癒しの魔法を受けて細胞が過剰に増え、それを治そうとさらに回復魔法をかけたから、どんどん体細胞が増えまくっちゃってるのかもしれませんね」


「ほほぅ、そして『不死』だからそんな異常状態になっても死なないわけですか。これは面白い連携効果ですねぇ。まさかこんなことが起こるなんて……。

 おお、気付けば試合会場がすごいことになっております。『不死』の体が急激に膨張しております! 体が二回りも三回りも大きくなり、服が破れて布がちぎれ飛んで、影がどんどん丸くなっていきます! 『回復魔法』もさすがに異常に気が付いたのか、怯えた表情で後ずさっております。逃げて、ヤバイよ!」


「はい、すごいですねぇ」


「巨大な肉塊になった『不死』、まだまだ膨張しております! すでに直径は5mは越えているでしょうか、人型の原型を留めておりません! これが元々人間だったと言われて誰が信じるでしょうか。とんでもないことになっております! 止まりません! 巨大化が止まりません!!

 ああああっ、転んだ、逃げていた『回復魔法』転んだ!!」


「はい、これは危ないですねぇ」


「腰が抜けたのか異常な光景に飲まれたのか、『回復魔法』立ち上がることもできずお尻で後ずさっております! 早く逃げて、あ、あーっ、これはああああっ!!」


「はい、捕まっちゃいましたねぇ」


「『回復魔法』、巨大になった『不死』の体に潰された!! 潰されました!! 足がはまって動けなくなり、そのまま踝、すね、膝と押しつぶされております!! 『回復魔法』号泣しながら助けを叫んでおります! 床板が砕ける音と一緒に骨が折れる音が微かに聞こえてきます!!」


「はい、なかなかグロいですねぇ」


「こうなってはもう逃げるのも不可能ですし、どう考えても逃げることはできないでしょう! 『不死』まだまだ巨大化しております! ああ、とうとう胸まで乗っかって、あ、あああああ、『回復魔法』が口から血を拭いて気絶したあああああっ! これは勝負あったか!? 審判はどう判断するか!!」


「はい、あー、やはり『不死』の勝ちですねぇ。もったいない……」


「『不死』の勝利だああああっ! 『回復魔法』、せっかく助けようとした相手に殺されるという、凄惨な最期を迎えてしまった!! これはムゴい!」


「はい、最初に『回復魔法』を悪意ある使い方をした結果ですねぇ。因果応報というやつですね」


「そういう風に仕向けたのはあなたでしょうに。とにかく、初めてまともな試合内容でしたね。いやー、すごかったですねぇ」


「はい、でも独創性がある試合だったというより、単に『回復魔法』の自爆って感じでしたけどねぇ。でも確かに、まともな試合内容でしたねぇ」


「ええ、実に見ごたえのある試合内容でした。両選手に大きな拍手を!

 はい、それでは第4試合、初戦リーグでは最後の試合になります。最後は完全サポート能力同士の戦いとなります! 東は『鑑定』スキル所有者! 西は『翻訳』スキル所有者です! では能力の詳しい解説をお願いします!」


「はい、『鑑定』スキルは資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に係る対価の額を把握することのできるスキルです。適正価格だけでなく、市場相場を加味したその場における価格も理解することができます。

 『翻訳』スキルは言語体系の存在する意思疎通手段を解し、利用することのできるスキルです。相手の言葉を理解するだけではいくらなんでも弱すぎるので、少しスキルの利用範囲の広いものを与えておきました。きっと面白い戦いを見せてくれるでしょう」


「解説ありがとうございます。それでは試合会場へ視点を移行しましょう。

 と、おお、これは凄まじいですね……。『鑑定』の装備がものすごいことになっております」


「はい、パッと見た感じ、魔剣に魔防具、魔術具に回復アイテムが複数あって、しかもマントの下にはまだ何か隠していそうです。これを三日で用意したんですねぇ」


「ええ、選手の事前情報を伺っておりますが、資料が一番分厚かったのはあの『鑑定』ですねぇ。たった3日間の準備期間の間に、いろんなところへ手を伸ばして取引をしまくった様子です。このほんの僅かな期間、よっぽど活動的に動かなければこんなにたくさんのアイテムは集められません。『鑑定』スキルをよほど上手に使いこなしたのでしょう。スキルだけではここまでの結果は出せません、素晴らしい商才です」


「はい、本当にすごいですねぇ。彼の活動記録だけでも、小説が一本書けそうです」


「努力の結果集めた大量の超強力アイテムの数々、他のスキル持ちでは揃えられないでしょう。ただこれは逆に言えば、他の強力なスキルに相対するためにこれだけの物を揃えなければならない、という怯えと覚悟も見え隠れします。まるで物語の主人公のようなこの心持ち、実に素晴らしい逸材と言えるでしょう!」


「はい、そうですねぇ。もし勝ったら後でインタビューしたいですねぇ」


「それに対して『翻訳』スキル、まさかの素手です。いえ、違いますね。どこから調達したのか、果物ナイフを一本持っておりますが、『鑑定』スキルに比べたらマッチ棒の如き頼りなさ、まるで魔王にヒノキの棒で戦いを挑むかのようです。『翻訳』も『鑑定』と同じくらい直接的な戦闘力はないから事前準備が大事なはずですが、やる気あるんでしょうか?」


「はい、逆にこいつの報告書は全く読む気がしませんねぇ。『翻訳』スキルを使ってどう戦おうか検討することはしていたようですが、それは他のスキル持ちもやっていたことですし、『鑑定』さんと違って特別事前準備を頑張っていた、というわけでもありませんねぇ……」


「おーっと、ということは『鑑定』の方が若干有利か? それとも『翻訳』は碌に準備をしなくても勝てる自信があるのかぁ!? どっちも戦闘向きのスキルではないため、これだけの情報では勝敗が全く予想できません!

 おやぁ、しかし両選手は余裕の表情です! 『鑑定』は対戦相手の装備の貧弱さを見極めたからか、露骨にホッとした表情を見せております! 対して『鑑定』は欠伸すらしております! 余裕ということでしょうか、どちらもサポートスキルのくせに勝つ気満々です!」


「はい、だからこそ面白い戦いが見れると良いですねぇ。期待しております」


「私も期待で胸が膨らみます! 前試合の片付けも終わったようですし、両選手も完全に準備万端、臨戦態勢です。そろそろ第四試合を開始してもらいましょう!

 おーっと第4試合開始の合図と同時に両選手動いた! 『鑑定』は両手に剣を持って一直線に突進! 対して『翻訳』は右にズレながら間合いを計っております! 第4試合になって初めてまともな試合内容に実況し甲斐があって嬉しい限りです! 実況者冥利に尽きます!」


「はい、まるで普通の闘技大会みたいですねぇ。マンガとかでよく見る絵面です」


「『鑑定』の両手に持っている武器、詳細はわかりませんが、弓手には光り輝く片手剣、馬手には毒々しい色合いの短剣を持っております! 右にズレる『翻訳』相手に曲がりながら一直線へ向かっていきます! そして、おおっと、短剣を投げた!」


「はい、本当にマンガみたいですねぇ」


「いくら能力を与えられたとはいえ元は一般人、ここまで動けるのは大したものです! 『鑑定』は何かの運動をしていたのでしょうか。しかし『翻訳』も負けてはいない! 結構な勢いで飛んできた短剣を危なげなく回避しました! すごい回避力です、自分だったら間違いなく当たってます!!」


「はい、私も当たってるでしょうねぇ」


「しかし、回避している隙に『鑑定』が間合いを詰め、おおっと凄い勢いで片手剣を振り回しております! 型も何もない素人のでたらめなぶん回し剣技ですが、振り回している物がとてもヤバい! 切れ味は鋭いでしょうし、魔法剣だったらどんな効果があるかわかったもんじゃありません! かすりでもしたら大惨事のはずです、がっ! 『翻訳』なぜか全剣撃を紙一重で避けている!! なんだこれ、『翻訳』は武術の達人か!? 至近距離からの斬撃を交わせる地球人なんて画面の向こう以外に存在したなんて!!」


「はい、これは間違いなく『翻訳』スキルの効果ですねぇ」


「ええ? 『翻訳』のですか? 詳しい解説をお願いします!!」


「はい、『翻訳』スキルは異なる言語体系を理解できるようにする効果があります。知らない別言語はもちろんのこと、手話や点字、ボディランゲージから目くばせによる意思疎通なんかも理解できるようになるんです」


「ほぉ、それはすごいですねぇ」


「はい、だからこそ言葉の通じない異世界に行く場合、よく用いられるわけなんですが、今回は単純に発声言語だけでなく動作による意思疎通も理解できるようになってます。だからこそ、例えば右腕をあげたらどこに斬撃が来るか、右足を前に踏み出したら次にどんな攻撃が来るか、などもわかってしまうんですよ。それこそ武術の達人のように、相手の動きが読めてしまうんです」


「なるほど! ということは『翻訳』スキルは、動きが良いとはいえ素人武術の『鑑定』の攻撃は全て見透かしてしまうわけですね! これでは攻撃が当たらないのも仕方ないでしょう!

 っとああああっ、勝負がついた!! 一瞬の隙をついて『翻訳』が『鑑定』の鳩尾を殴打して決着がついた!! せっかくのまともな試合だったのに、解説を聞いている間にあっさり決着がついてしまったあああっ!!」


「はい、ですがなかなか面白い試合でしたねぇ。能力者同士の派手な戦いとは違った興奮がありました。プロレスの試合を見ているようでした」


「ええ、そうですねぇ。良い試合でした! それに対戦相手を殺さずに勝ったところも好感触です! 素晴らしい試合を見せてくれた『翻訳』に感謝を!

 ……はい、これで初戦リーグ4戦がここで終了しました。8選手のトーナメント制なので、次は準決勝となります。

 準決勝第一試合は『幸運』対『アイテムボックス』、二試合目は『不死』対、今勝利された『翻訳』との対戦になります! 次はどんな試合が見れるのか、実に楽しみですねぇ」


「はい、楽しみですねぇ」


「準決勝まで2時間ほどの小休止が入ります。ここまでの実況はわたくし、えろいむえっさいむ。解説は」


「はい、白い老人の中の人です」


「準決勝は金曜ロー……CMの後になります。チャンネルはそのまま!







 ……やべ、ちょっと始まっちゃってる。飛行船からの落下シーン見逃したわぁ……」

●『絶対防御』(死亡)

〇『幸運』

〇『アイテムボックス』

●『仕切り直し』(棄権)

●『回復魔法』(死亡)

〇『不死』

●『鑑定』(気絶)

〇『翻訳』

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― 新着の感想 ―
今までの描写を見るにアイテムボックス確定だろ。と思ったがそもそも非戦闘系能力として参加してなかったのね もう結果が書かれる事は無いだろうけど今回は幸運以外は絶対防御が攻撃認定されるかどうかでワンチャン…
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