第五十九章 国王の怒り
またまた国王の残念なお話です!
急いでアップしたので、誤字脱字がいつにも増して多かったらご容赦下さい。
後で訂正します!
妻である王妃殿下と幼馴染みである宰相の浮気を疑った国王は、『王家の影』から様々な話を聞き出した。
すると彼らからもたらされたそれらの情報は、思いがけない事ばかりで、それまで自分が信じていた事柄が全て崩壊するほど衝撃的なものだった。
当初の目的だった妻と幼馴染みの浮気の証拠は当然ながら有る訳もなく、彼らに対する評判の悪い噂など何一つなく、素晴らしい業績を褒め称えるものばかりだった。
それに対して、影達が目で見て耳にしてきたヴェオリア公爵とその娘で己の妻である側妃の悪業の数々は、信じられないような話ばかりだった。
その中でも一番信じられなかったのは、王妃に対する側妃とヴェオリア公爵一派の行った仕打ちであった。
側妃達は意図的に第二王子を王妃から引き離して彼を自分の意のままに動かしてきた。
マリア=スチュアート公爵令嬢との婚約破棄未遂事件後、更生しようとしていた第二王子を唆し、再び元の恋人ラナキュラスとの関係を復活させた。
そのせいでこの国の未来を担うと期待されているザクリーム侯爵に多大な苦痛を与えたのだ。
そして愛人であったエメランダを苛め抜き、その挙げ句に彼女が妊娠すると流産、もしくは命を狙った。それなのにそれを全部王妃に擦り付けた・・・
その上、その悪行をした者達の中には、なんとヴェオリア公爵の嫡男の娘である王太子妃まで含まれていたのだ。
王太子妃ともあろうものが、不義密通をしていたのだ。しかも相手は王家とも親族関係にある、妻子持ちの公爵とだ。
王太子とも幼馴染みで、彼の側近の一人だ。確か家族ぐるみで付き合っていると聞いていた。
自分ばかりか、王妃や二人の息子達までこけにしよって。
ヴェオリア公爵一族への国王の怒りは脳天を突き抜けた。
そしてその怒りのまま、なんの忖度も無しに王太子である息子にその事実を告げたのだった。
すると意外にも王太子は、妻の不義や生みの母親の悪行を聞いても冷静だった。むしろ怒り狂う父親を宥めるほど落ち着いていた。
そして夫婦の事は夫婦で解決するつもりだから心配はいらない。それよりも義母上にこれまでの事を謝罪して許しを請うて下さいと父親を諭したほどだった。
しかし国王は息子の助言を聞かず、妻に謝罪するどころか勝手に罪滅ぼしとばかりに、例の落石落とし事故を引き起こした。
ザクリーム侯爵が落石事故によって記憶障害になった事は、宰相や高官のみならず王家にとっても、衝撃的で大きな痛手だった。
彼はこの国の未来を担う大きな人材だったからだ。
特に王太子にとってザクリーム侯爵は、ヴェオリア公爵一派を排除するためには欠かせない人物であり、その後の改革の指針を作っていくためにもなくてはならない存在だった。
「あの事故で貴重な彼の二年間の知識と情報が消えました。
これで我が国の進歩が二年遅れます」
以前宰相がそう言った時、もっともだと王太子は思ったが、まさかそれが自分の父親の愚行の結果だったとは……
一昨日の午後に、国王に懺悔をされた宰相からその話を聞かされた時、王太子は頭を抱えてしまった。
しかしその場に義母である王妃が現れてこう言ったのだ。
「こうなっては改革を急がねばなりません。唯一救いだったのは、まだこの事がヴェオリア一派に知られていない事です。
ですから陛下にはこれ以上余計な事をしないように、暫く大人しくして頂かねばなりません。お二人とも手伝ってもらえますか?」
「「もちろんです」」
王太子と宰相は頷いた。
王太子と宰相はすぐさま国王に病気療養をして欲しいと告げた。
それを聞いた国王は怒りを表したが、王妃から次のように言われてはそれに従わざるを得なかった。
「私に対して申し訳ないと思う気持ちがあるのなら、私と夫婦としてやり直そうとする態度を見せて下さい。
王太子はもう一人前です。国政は息子に任せておけばいいのです。
陛下は私と嫁と孫に、家族の団欒というものを与えて下さいませ」
第二王子妃は二ヶ月前に男子を生んでいたが、夫である第二王子は未だに妻と子供に向き合おうともしていなかった。
それを憂いていた王妃からの提案に、国王が拒否出来る訳がない。
今まで散々尽くしてきてくれた妻に、あらぬ疑いをかけて虐げ続けてきたのだから。
「これまで君に酷い事ばかりしてきて本当に申し訳なかった。君に償えるのであれば、これから何でもする」
国王はそう言って頭を下げると、その場で唯々諾々と王妃の申し出を受け入れた。
そしてその場で国王の委任状を作って国印と共に王太子に渡すと、その翌日には王妃や第二王子妃、そして孫息子と共に王都から少し離れた所にある療養用の別荘へ向かったのだった。
『今更償えると思っているとは、なんて愚かな……
ボロボロに痛めつけられた義母の心の傷が全く見えないとは、我が父ながら本当に情けない男だ。
もうこれ以上貴方に改革の邪魔をされたくないから、義母上は全ての感情を飲み込んで、家族ごっこを演じようとしているだけだというのに。そしてマリア妃と赤ん坊の王子を守るために……』
王太子は深い深いため息をついた。そして彼もまた自分のすべき事をするために動いた。
この数年彼は本当に信用に値する人材を慎重に発掘してきたのだが、とうとうその者達を一堂に集める時がきたのだ。
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新しく任命した側近達に一通りの話と指示をし終えた後で、王太子はカレンとその夫の侯爵だけを残した。
「殿下、何故このような重要な政の場に妻までお呼びになったのですか?
ザクリーム侯爵に伝言する為でしたら、何も妻でなくても私だけでも十分でしたのに…」
カレンの夫がこう言った。彼は優秀な妻を誇りに思い、その能力に助けられながらも、女房に頭が上がらないとか、尻に敷かれているとか噂をされている事に、少なからず不満を抱いていた。
今日も自分だけが妻帯した事で、自分がまるで一人前と見做されていないようで、正直気分がよくなかった。
「先程も話をした通り、君には君しか出来ない任務を依頼しているのだから、義弟への伝言まで頼める訳がないだろう?
それに、カレン夫人にはザクリーム侯爵だけではなく、スージー公爵夫人にも伝言があったので、こちらに来てもらったのだ」
王太子の言葉にカレンの夫は眉を寄せた。
「今更公爵家の人間と何の話をする必用があるのです?
あれは殿下への裏切り者、反逆者ですよ。そんな家の人間と付き合えば、我が家にも悪い噂が立ちます」
「それでは君はスージー夫人やザクリーム侯爵、そして君の奥方とも縁を切るつもりなのかね?」
王太子は穏やかにそう切り返すと、侯爵は口籠った。
義弟であるザクリーム侯爵を、王太子だけでなく、宰相やスチュアート公爵、そして多くの高官達がその手腕を認め、この国の次期指導者に望んでいる事は彼も承知していた。
彼を貶めるような事を口にしたら、自分の未来はない。そしてそのザクリーム侯爵と自分の妻の仲の良さは、嫉妬するほどだ。当然妻を蔑ろには出来ない。
しかし、義姉のスージーの夫は今や天敵なのだ……
侯爵が苦悩している事を察して、王太子は彼の返事を聞く前にこう言った。
「多分君も知っているだろうが、もしザクリーム侯爵家の不文律がなかったら、スージー夫人か君の奥方が私の妻、つまり未来の王妃になっていただろう。
そうすればあんな破廉恥で無能な女をヴェオリア公爵に押し付けられずに済んだんだ。
前ザクリーム侯爵は常々、自分達が王家にもっとも忠誠を尽くす者だと声高々に話していたが、本当に忠誠を尽くすつもりであったのなら、自分の娘を私に差し出すべきだった。君もそうは思わないかい?
仮に君の細君が私の妻であったのなら、私は自分の妻を誇りに思い、尊敬し、良い国造りをするために積極的に協力を求めていただろうね。
失礼かも知れないがそれを残念に思うよ。いや、今からでも遅くないかな?
私は自分の妻が初婚だろうと再婚だろうと、気にしないのでね」
「殿下、何をおっしゃっているのですか? 私は妻と別れるつもりはありません」
「でも、君は公爵と縁続きになるのは不名誉なんだろう?
それでは夫人が姉上と絶縁するつもりなのかな?」
王太子が小首を傾げたのだった。
読んで下さってありがとうございました!




