表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/106

第二十三章 三文芝居の結末

最初のざまぁ!がありますが、これは少し悲しいものです。

スッキリするざまあはこの小説の最後となる予定です。


 あの第二王子に矯正の見込みがあると思うかと夫に問われた。

 妻は即座に無理だと思うと答えた。

 

「だって、あのマリア王子妃が制御出来ないのですよ。そんな方をこれから矯正なんて不可能な気がします」

 

 ああ……

 夫のレオナルドも、妻ミラージュジュと同様、マリアとは二年間一緒に生徒会の仕事をしていたので、彼女の事はよく知っている。

 

 マリアはこの国一番の高位貴族であるスチュワート公爵家の出である。もっと早く生まれてきたならば、確実に王太子妃になっていただろう。

 というのも、幼少期に婚約する王族にとって五歳の年の差は大きく、王太子はライバルのもう一つの公爵家の令嬢と婚約してしまったのだ。

 

 しかしスチュワート公爵家では、別段この国の王太子だけに拘っていた訳ではなかったので、他国の王太子でも構わなかった。

 ところが国王と正妃から第二王子の婚約者になって欲しいと要請されてしまったのだ。

 

 第二王子の母親である正妃は元々隣国の末姫だった。身分こそ高かったが、やはり外国出身という事で、地盤が弱かった。故に息子を守るために後ろ盾になる者を探していたのだ。

 いずれ第二王子は臣下に下る予定なので、公爵家には何のメリットもない。しかし、この国の宰相はスチュワート公爵家の親族が務めている。彼からの依頼もあり、国の安定のために王家の依頼を受けたのだ。

 臣下に下っても生まれた子供達に王位継承権を残す事を条件に。

 

 マリアは好きでも何でもない婚約者の為に、彼を支えようと勉強、淑女教育やお妃教育を頑張っていたのである。

 それなのにそのアダムスは、学園に入学と同時にラナキュラスに夢中になってしまった。それも人目を避ける事もなく堂々と付き合っていたのだ。

 婚約者のマリアの面目は丸潰れである。しかも、生徒会の役員の仕事もまるでしないで恋人といちゃついていたのだから、呆れて物が言えなかった。

 しかも仕事をしないのならば生徒会を辞めれば別の者を補充できる。ところが生徒会役員は名誉職、称号と同等の価値があるため、他の役員に迷惑をかけようと彼は決して辞めようとはしなかった。本当に厚かましい奴だった。

 

 その上形だけも役員だったために、生徒会役員全員の承認がいる時には彼を見つけ出してサインを貰わなければならなかった。その雑用を毎回させられていたのが、臨時役員に抜擢されてしまったミラージュジュだったのだ。

 

 おかげで見たくもない馬鹿ップルのイチャイチャぶりを、毎回のように見せつけられる羽目になったのだ。

 

 あの二年間でさえ苦痛だったのに、学園を卒業して結婚してまでも、再びあの馬鹿カップルにこんなにも迷惑をかけられるとは思ってもみなかった。

 

「あの例の卒業パーティーの時、私も在校生としてあの場にいたんです。

 しかも、今度は臨時ではなくて無理矢理次年度の生徒会役員に決められていたので、壇上近くに居たのです。ですからあの有名な三文芝居を間近で見せられました」

 

「それはきつかっただろうね」

 

「ええ、馬鹿らしくて。それに、さすがにマリア様には同情しましたよ。

 生徒及びそのご両親にとっても一生の良い思い出になる筈だった卒業パーティーで、一国の王子が婚約者を断罪して婚約破棄したんですよ。しかも冤罪で。

 ラナキュラス様との婚約発表はすんでの所で影の方に気絶させられて出来ませんでしたけど。

 箝口令が敷かれましたが、当然公然の秘密になりましたし、今更です。もちろん旦那様ならご存知だったのでしょう?

 私はあの当時、王家の下した処分に腹が立ちましたが、今日その気持ちが倍増しました」

 

「ジュジュ……」

 

「あれだけ多くの人を悲しませ迷惑をかけたのに、よりを戻したんですよ。あの二人は!

 あれだけの屈辱を与えたにも関わらず寛容な心で許してくれた婚約者と結婚し、御子まで孕ませておきながら。

 それも自分の権力を使って臣下に自分の愛人を囲わせるだなんて。

 そもそもあの時、女性だけでなく男性も同じ、いやそれ以上の罰を与えるべきだったんです。

 そうすれば被害者を増やさずにすんだのです。これはあのクズだけでなく、王家の責任です」

 

 興奮している訳でもないのに、淡々と王子をクズ呼ばわりした妻に夫は驚いた。

 

「先程あのクズが来る直前、リリアナさんから手紙が届きました」

 

「手紙?」

 

「はい、ラナキュラス様が亡くなったそうです」

 

「亡くなった? 僕が退院する時には順調に回復していると聞いたのだが、死因は?」

 

「衰弱死だそうです。身体ではなく精神の……お子を作る事が出来なくなった事実をお知りになってから、お食事を摂ろうとなされなかったそうです。

 

 バチが当たったのだとおっしゃっていたそうです。マリア様をずっと苦しめてきた報いだと。

 本当は修道院でずっと罪を償っていたかったのにと。

 修道院を出て再びアノ男の愛人になる事は、ラナキュラス様の望みではなかったのですね。

 

 何故彼女は自分の気持ちを誰かに伝えなかったのでしょう。ご友人がいらっしゃらなかったのでしょうか。

 

 ええ、多分いらっしゃらなかったのでしょう。学園時代は人の婚約者を奪って平気でいらしたような方でしたから、誰にも相手にされていませんでしたからね。

 

 だからこそ、修道院の暮らしは彼女にとって心休まる所だったのでしょう。

 その場所に迷惑がかかってしまうのを恐れて、アノ男の言いなりになったようです。

 一体修道院にまであのクズは何をしようとしたのでしょうか……」

 

 そんな事、簡単に想像がつく。寄付金を出さないとでも言ったのだろう。レオナルドもため息をついた。

 


「『恋は盲目と言うものね。何を言っても無駄だわ。目が覚めるのを待つわ』

 生徒会室でそうマリア様は呟いていらっしゃいました。

 まあ、最初の頃は実際に色々と裏から手を回したようですが、それが却って火に油を注いでしまったようなので、途中から諦めてもう何もしなかったみたいですよ。

 

 そして、ラナキュラス様の方も修道院へ入って、ようやく目が覚めたのでしょう。

 

 もしかしたらアノ男も、辺境騎士団へ送られた時は一旦は現実に返ったのかも知れません。

 しかし一年は甘過ぎですよ。その上王族から外さなかった。しかもその直後にすぐ結婚ですよ。

 

 ろくに反省していないから、今度は妻の妊娠中に、こりもせずに再び元の彼女と無理矢理によりを戻そうとしたんですよ。

 しかも今度は恋などではなく単なる独りよがりな欲です。

 結婚生活でも王族としても針の筵のような生活で辛いから、自分の思うようにならないから、アレは自分の思い通りになる『真実の愛』もどきが欲しかったのでしょう」

 

 ミラージュジュはここまで言うと、無表情な顔のまま夫レオナルドの顔を見た。彼女の目は血走っていたが涙はこぼしていなかった。

 

読んで下さってありがうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ