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王女の婿選び  作者: 羽月
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第29話

しばらく子供達と遊んでいたが、私は驚く事ばかりだった。


「ちょ、ちょっとまって・・・っ!!!」


はぁはぁと息が切れ、肩で呼吸をする私に比べ、子ども達はけらけらと楽しそうに笑いながら走っていく。


「ひ・・リーアナ様大丈夫ですか・・?」


心配そうに私を覗き込むレイナに私は声なく頷いた。


「なんだ。ねぇちゃんだらしねぇな。たかが鬼ごっこくらいでそんなに息切らしてんのか?」


ひょいっと、レイナのそばからアルフが顔を出した。


「ちょっと、あなた先程から言葉が過ぎますよ!!」


アルフの言葉にレイナがそう窘めるがアルフは肩をすくめただけで、レイナの前を横切ると何かを私に差し出した。


「ほら、水だ。飲んだらいいよ」


そう言って差し出されたコップを受け取ると私はそれに口をつけた。

口をつける前にレイナが「ちょ!!」とかあわてていたが、あまりにものどがカラカラになっていたので構わずそれを飲み干した。


「・・・はぁ、生き返ったわ」


思わずこぼれ落ちた言葉に、アルフは苦笑していた。


「どんだけ、体力ないんだよ。まだ数分走っただけじゃないか。ねぇちゃん運動不足じゃね?」


その言葉に、私はがっくりと落ち込んだ。


「うぅ・・・。今までこんなに走りまわることなんてなかったんだもの。しょうがないじゃない・・・」


子供相手に大人げないとは思いながら、ついつい反論してしまった。

その行為に少し恥ずかしくなり、お礼を言ってコップを返す。


「くくっ。ねぇちゃん、おもしれぇな」


アルフの笑った顔はとても可愛かったが、言っている事はあまり可愛くない。

だが、ここで反論してしまってはまた大人げないと思い、私は黙っていた。


「あぁ、そうだ。兄ちゃん達話が終わったみたいだぜ?」


黙った私に、アルフは思い出したようにそう言い、クリス兄様達が入って行った建物を指差した。

そちらに目をやると、アルフの言うとおりその扉からクリス兄様とダニー兄様が出てくるところだった。その姿に、私は視線をそらした。


「??エディに用事があったんじゃないのか?」


動こうとしない私にアルフがそう問いかけてくる。

その問いに私は苦笑することでごまかした。

駆け寄らない私に、レイナも心配そうに私を見ているのが目の端に写る。

そうこうしているうちに、ダニー兄様がクリス兄様を連れてこちらにやってきてしまった。


「リーナ」


近づいてきたダニー兄様が私に声をかける。その声に、ダニー兄様を見てみれば彼は困ったように笑っていた。


「そろそろ帰ろう。あれから随分時間がたっただろう」


彼の言葉に私は眉を寄せる。


「・・・何を話していたの?」


私の問いに答える気はないのだろう。再び困った様に笑うと私の側にやってきた。


「話は後にしよう。そろそろ城に戻らないとまずいぞ」


こっそりと私だけに聞こえるようにそう言う。

ダニー兄様の意図はわからないが、時間がないのは確かだ。太陽は既に沈みかけている。

だが、クリス兄様は・・・。

そう思いダニー兄様を見上げると、私の言いたいことがわかっているのか、ダニー兄様は首を横にふった。そして、私を見る目はいつもの軽いダニー兄様ではなかった。


「・・・・そうね、戻りましょう」


そう言うと、私はアルフに向き直す。


「アルフ、今日はありがとう。ローラにもよろしくね」


にっこりと笑うと、アルフはおう!と返事を返してきた。

そしてゆっくりと、クリス兄様に視線を向けた。


「・・・今日は突然ごめんなさい。子供達にも迷惑をかけてしまって・・・」


そう言うと、クリス兄様はにっこりと笑って首を横にふった。


「いいや、子供たちの遊び相手をしてくれたみたいでこちらこそ、ご迷惑ではなかったでしょうか?また、いつでもいらしてくださいね」


他人のようなその言葉に私の胸はツキリと傷んだ。

精一杯の笑顔でお礼を言い、私たちはその場を後にした。

既に空は真っ赤な夕焼け色に染まっていた。


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