第28話
「なんてこと!!!」
アルフの話を一通り聞き終わると私は思わず拳を作っていた。
「いやいや、ねぇちゃん。怒りすぎだろ。当事者でもない癖に」
アルフに苦笑されながらそう言われるが、これが怒らずにいられるであろうか。
まさか、この国でそんなことが起こっているなど、ちっとも知らなかった。
「それはいったい誰がそんな事をするの!?」
怒りのままにアルフに問い詰める。
「あ~・・・、それが分かれば俺らも苦労しねぇ」
頭を掻きながらアルフは答える。
「それならば、今すぐ別の場所に移りなさい!こんな危険な場所にいてはいけないわ!!」
彼らを思ってそういった言葉に、アルフは急にキッと睨みつけてきた。
「それが出来てればとっくにしてる!!それができないから、危険でもここにいるしか俺らには行き場所がねぇんだよ!!」
いきなり怒鳴るようにそういうアルフに私は驚き、息をのんだ。
そんな私の顔を見て、アルフは顔をしかめふいっと背を向けるとその場から立ち去ろうとした。
しかし、再びこちらに向き直りバツが悪そうに声を出した。
「怒鳴ってワリィ・・・・。とにかく、ここの事は放っておいてくれ。それと、そこで喧嘩なんかしてんなよ!」
そういうと、アルフは今度こそ、その場を立ち去った。
彼の後ろ姿を目で追うと、ダニー兄様達が入って行った建物とは違う建物に入っていった。
「・・・・姫様」
ぼぉっとアルフの去った後を見ていた私に、小声で傍にいたレイナが声をかけてきた。
「・・・知らなかったわ。この国でそんな事が起こっていただなんて・・・」
ポツリとこぼれおちた言葉に、レイナは何も答えず目を伏せた。
「ごめんなさい。レイナ。頭が冷えたわ。ダニー兄様は何か考えがあってクリス兄様と2人で話合いに行ったのよね。クリス兄様を見つけたことで、私ちょっと感情的になっていたようだわ」
そういうと、レイナは軽く首を横に振った。
「いえ、私も姫様に失礼なことを致しました。申し訳ありません」
そう言って深々と頭を下げるレイナに、困ったように私は笑った。
「なかなおりしたの?」
そんな私たちの間に、先程も聞いたかわいらしい声が聞こえてきた。
ふと振り向くとそこには、アルフにローラと呼ばれていた少女が立っていた。
私は、彼女の視線に合わせてしゃがみこむと、にっこりと笑った。
「えぇ、ごめんなさいね。大きな声を出して怖がらせてしまって」
そういうと、ローラは花が咲きほころぶかのように笑った。
「ううん、ぜんぜんへいき!!だって、おねえちゃんたちはあのわるいひとたちのナカマにはみえないもん!」
彼女の言葉にチクリと胸が痛む。
「・・・その悪い人達はよくここに来るの?」
その問いかけにきょとんとした顔を見せて、ローラは考えるような仕草をした。
「うーん・・・。まいにちくるときもあれば、しばらくこないこともあるし。そとであそぶときには、かならずエディがいいよっていってくれないとあそべないの。だから、きょうはそとであそべてみんなうれしいの」
ローラの答えがいまいち要領をつかめないが、様は来るときと来ない時とまちまちだということだろう。そして、今日は来ないと分かったから外で遊べるということだろうか?
「だけど、おねえちゃんたちがきて、わるいひとのナカマだといけないからってすぐにいえの中にかえって、いえのなかからみてたけど、わたしにはおねえちゃんたちがわるいひとのナカマじゃないってすぐにわかったんだから!!」
えへんと胸を張るように彼女は答えた。
「ごめんね?お姉ちゃん達急に来て、外で遊べなくなったのよね?」
「ううん!アルフがおねえちゃんたちならだいじょうぶっていったから、みんなそとであそべるよ!おねえちゃんもいっしょにあそぼう?」
かわいいローラからのお願いに、私は笑顔で頷いた。




