第26話
その姿に私は息をするのを忘れているのではないかというくらい、何もかもが止まってしまったようだった。
「アルフが失礼しました。・・・ところで、貴方がたは?」
ここにきて3度目となるハズのそのやりとりでさえ、私は信じられなかった。
「・・・クリス・・・兄様・・・」
目の前には、金髪碧眼でまさしくクリス兄様の顔をした男が私の目の前に立っていた。
その事実に思わず涙がこみ上げてくる。
「??・・・あの?」
クリス兄様の問いかけに答えない私を不思議に思ったのか、クリス兄様は眉をよせ訝しむようにこちらを伺っていた。
だが、そんなことはクリス兄様に出会えた今の私にはまったく気づきもしなかった。
「クリス兄様・・・!」
その顔に、その声に、その仕草に私はこの人がクリス兄様である事を確信した。
私がクリス兄様を間違えるハズがない。
私の言葉に、目の前のクリス兄様はさらに深く眉間にシワを寄せた。
「・・・・・私の事を知っているのですか?」
その問いに私は涙を浮かべながら頷いた。
「当たり前です!ご無事で・・・・ご無事で本当によかったっ・・・!!」
思わずクリス兄様の手を取ろうとした。
が、それは、意外な人物に止められた。
「まて、落ち着け」
その言葉と共に、私が伸ばした手はダニー兄様によって阻まれた。
「レイナ。リーナを下がらせろ」
「なっ!!」
ダニー兄様の言葉に私は思わずダニー兄様を仰ぎ見た。
その隙にとばかりに、レイナは私を自分の背中へと隠した。
「なにをするの!!」
思わず2人に向けて怒鳴れば、ダニー兄様は私から視線をそらし、鋭い視線でクリス兄様を見た。
そのやりとりに思わず息を飲んだ。
「・・・失礼。少し話がしたい。どこか場所を移そう」
ダニー兄様は鋭い視線をクリス兄様に向けたままそう言った。
その視線を受けたクリス兄様は戸惑いながらも頷く。
「こちらへ」
その言葉に、クリス兄様はしぶしぶダニー兄様を連れてその場を離れた。
クリス兄様から引き離された上に、ダニー兄様のあの態度に私は腹が立っていた。
「なんなの!?どういうこと!!」
去っていく後ろ姿の2人に私は思わず怒鳴りつけた。
私の前に立ち塞がっているレイナが邪魔で私彼らのそばにいけない。
そんなレイナにも腹が立ち、思わずレイナを睨む。
「そこをどきなさい!!」
レイナに対しそう言いつけるがレイナは私を見据えて言った。
「それはできません。いくらひ・・・リアーナ様のおっしゃることでも」
きっぱりとそう言い切ったレイナに、キッと睨みつけられると私たちはお互い睨みあうように無言の時が続いた。
せっかくクリス兄様に会えたというのに、ダニー兄様もレイナも邪魔をする意味がわからない。
私たちが睨みあっている間に、ダニー兄様もクリス兄様も姿が見えなくなっていた。




