第23話
あちらこちらから賑やかな声に、思わず心が弾む。
「ひめっ・・・・リアーナさん。遊びに来たわけではありませんよ」
思わず、ふらふらとしそうな私の腕を隣のレイナに掴まれた。
「わ、わかっているわ。ごめんなさい、レスリー。・・・それにしても暑いわね」
太陽が照りつけるようなこの季節にうっかり空を見上げ、ここに来る前の事を思い出してしまう。
「ほ、本当にこれが流行っているの?」
城下に降りるにあたって、私たちは町に馴染むようにドレスから簡易な洋服に着替えた。
が、いかんせん私の顔は国民に知れ渡っている。
まさか、姫が城下にいるとは思わないだろうが、そっくりな顔でうろうろと歩きまわるのはいかがなものかと首をひねっていれば、レイナがすかさず大きな布を持ってきた。
「姫様、失礼します」
そういうや、その大きな布で私の頭を包んだ。
「な、なに!?」
口元まで覆われ、布から出ているのは目元のみ。一体、何事だとあわててみれば、最近城下で流行っている日除けだという。
それならば、傘があるではないかと問えば、傘を持てば片手が塞がれ、日々忙しく過ごす城下の女性たちにはあまりに不人気であったそうだ。
そこで、彼女たちは大きな布を被ることで、日除けとして効果を発揮する上、両手が使え便利だと人気になった。
この季節では、ほとんどの女性がこうして町を歩いているらしい。
・・・・知らなかった。城下に降りる際は大抵馬車で目的地まで行くし、降りればもちろん姫という立場の人間にそのような顔を覆った姿で出てくるわけもないので、見たことがなかった。
軽い衝撃を受けながらも、顔を隠せ人にも怪しまれないということで、それを捲いて城下に降りた。
また、城下で名前を呼ぶ際にはもちろん私だとばれないよう偽名を考え、お互いそれで呼び合うようにもした。
「さぁ、目的の場所に行ってみましょう」
ともかく、城下に降りていられる時間は限られている。
城下を堪能するのはまた今度ということで、早々ににぎわいのあった場所から足を遠ざけていく。
「先日の孤児院の近くまで行けば何かわかるかもしれないわ」
そう言うと、レイナは軽く頷き後をついてくる。
「ひ・・・・リアーナさん。本当に確認するだけですからね!」
思わず出てきそうになる姫様という言葉を飲み込みながら、そう注意してくるレイナは、偽名を使っていてもレイナだと思わず苦笑してしまう。
「わかっているわ。なにかあってもあなたや彼がいてくれるから大丈夫でしょう」
そばに気配だけは感じるがそばに護衛である彼がいてくれることは十分わかった。
私たちは、先日訪れた孤児院に向け足を速めた。




