第21話
目の前の山を生温かい目で見つめて見た。
「・・・・そんな事をしても量は減りませんが?」
お母様に返却後、なぜか山が2つに増えて戻ってきた。
なぜだ!!?
「約束してくださいましたよね?きちんと見て下さると」
にっこり素敵笑顔で笑っているレイナは、悪魔でしょうか?
「さぁ、さくさくと進めましょう!」
答え:悪魔です。魔王です。死神です。
私の魂食われちゃいます。皆さま、ごきげんようー・・・・。
・・・・なんて、現実逃避も無駄な抵抗にしかなりません。
こんな事考えていると、心を読めるレイナの顔がまさに悪魔そのものになってしまっていました。
「姫様!!いい加減になさってください!!本日は、予定が詰まっているんですから!!」
レイナの言うとおり、これを確認する時間はあまりない。
ないのに、この山とかありえないけど。
しぶしぶ、絵姿を一つ手にとり開いてみる。
「あー・・・。うんうん」
パタリ。ぽいっ。
「あー・・・。はいはい」
パタリ。ぽいっ。
「あー・・・・・・・・」
思わず、手が止まった。
「姫様?」
投げると思っていたのだろうそれが、私の手元にとどまったままある事にレイナは不思議そうに声をかけてきた。
「お気になる方が見つかりましたか!?」
「・・・ある意味ね」
レイナの問いかけにそう返せば、レイナは首をかしげる。
今、私の手元にあるその絵姿には先日パーティーでダニー兄様から紹介された人物が映っていたのだから。
「ふーん・・・。やっぱりあの人も私の候補者に入っているわけね。まぁ、公爵の位だし、ダニー兄様がすすめるくらいだしね」
私は、手を顎にあて少し考えた。
「・・・いいわ、この方とお会いしましょう」
私の言葉に、レイナはこれでもかと言うくらい驚きをあらわにした。
「・・・・ひ、姫様!?・・・・・ほ、本気ですか!!?」
散々、絵姿を見ろ、婿候補を決めろと言っておいて、この反応はいかがなものか。
まぁ、今まで見ているようで、見た端から記憶を消去していた私が悪いのだろう。
うん、きっと。
「えぇ、本気。本気。この前、ダニー兄様からも紹介された方だしね」
そう言う私の言葉に納得したのか、レイナは思い切り息を吐いた。
「あぁ!!なるほど!!あ~よかったです。姫様が何か拾い食いでもされたのかと思いました」
なんて、失礼な!!
顔をしかめる私に、レイナは全く気付かず言葉を続ける。
「では、こちらの方とのお茶会をセッティング致しますね」
その言葉に私は慌ててストップをかけた。
「待って。彼と2人で会えばいらぬ誤解をうけてしまうでしょ?だから、あと2、3人呼ぼうと思うのよ」
「いらぬ誤解ですか・・・?しかし、姫様が婿様を探していらっしゃると言うのは周知の事実ですし、候補の一人としか思われないのではないでしょうか?」
レイナの言葉に私は頷く。
「そうよ!それよ!私が、この中の一人とお茶をすれば必ずその人は候補に挙がってしまうでしょう?そうしたら、あれやこれやと言う間に候補は増えて、終いには誰かを選べということに・・・」
考えただけでも恐ろしい。
思わず両手で自分を抱きしめてしまう。
「いくらなんでも、それは考えすぎなのでは・・・」
「甘い!!砂糖に蟻が集るくらい甘いわ!!」
思わず傍にあるテーブルを叩いてしまいそうになった。
・・・・手が痛そうなので、寸で辞めたが。
「いい!?今や、この国の重臣たちが今か今かと私の婿候補を用意して待っているのよ!?そんな中、この絵姿の山から一人を選びだし、お茶をしたと知られれば、奴らに餌を蒔く様なものよ!!」
私の必死な形相に恐れをなしたのか、レイナが一歩後ろへ下がった。
「まだ、決めきれないし、周りがうるさいからしぶしぶ茶会を開きました~的な体で、お茶会をすれば奴らだって警戒はするでしょうがゴリ押しをする馬鹿な真似はできないでしょう!?」
そう言いきると、私は熱くなりすぎたのか少し息切れをしてしまった。
ふぅ~と息を整え、近くにあったソファに身を沈めると、山の上に置いたままになっていた例の絵姿を手に取り、レイナに渡した。
「ま、そう言う事だから、とりあえずこの方とあと2、3人を城に呼んでくれる?」
そう言うと、レイナはなぜか引きつった笑顔のままそれを受取り了承すると、この部屋を後にした。




