第20話
私が孤児院を抜け出した事は、レイナと少数の騎士にしかばれていなかったようで、必死に何事もない様に振舞いその後を過ごした後、私達は再び馬車に乗り城へと戻った。
「あれは絶対に、クリス兄様だった」
部屋に戻り、私は一人孤児院の外で見かけたクリス兄様の事を想う。
「確かにあの時クリス兄様は死亡したと伝えられたわ」
あの時のショックは今でも忘れない。
「でも、それを私はこの目で見たわけじゃないじゃない」
クリス兄様は城に戻る事はなかった。
「でも、わざわざ死亡をごまかすなんて事はしないだろうし・・・・」
もしかして・・・・・・・・クリス兄様は生きているんじゃ・・・・・・。
「あー!!わかんないわ!!でも、やっぱり絶対あれはクリス兄様よ!!」
部屋に戻り、しばらくしたら気持ちも幾分落ち着いていた。
だが、クリス兄様の事は頭から離れない。
「とりあえず、落ち着いて下さいませ」
「わかったわ!!・・・・・っ!?」
一人思考に耽っていた私の中に、突然レイナの声が聞こえて思わず飛び上がってしまった。
「驚かせてしまい、申し訳ありません。何度もお声を掛けさせて頂きましたが、返事もなく、部屋の中からぶつぶつと何かを唱えている声が聞こえ心配して部屋へ入ってみれば、姫様が部屋の中をぐるぐると歩きまわりながら呪文を唱え、頭を振りまわしているので、ついついお声をかけてしまいました」
レイナは頭を下げて謝っているのよね・・・・?
なぜだろう。まったく謝罪をされている感じがしないのは。
「そ、そう。ごめんなさい。ちょっと考え事をしてたから。・・・・頭を振りまわすって何!?」
思わず、レイナの言葉に引っ掛かり突っ込んでしまった。
「うんうん、と唸りながら一人頷いているのかと思えば、はぁーと溜息をつきながら天井を仰ぎ見たり、うーんと首をひねってみたり・・・そんな事をされておいででした」
レイナの言葉に、思わず口の端が引きつる。
一体、レイナはいつからこの部屋にいたのだろうか?
「それより、姫様。本日の分をお持ちいたしました」
何事もなかったかの様に、レイナは机の上に一山を築き上げた。
それを見て、思わず私の眉間に皺が出来てしまう。
「・・・・これはなに?」
聞かなくても分かっているが、つい先日パーティーを開いたばかりのはずだ。
「もちろん、姫様の婿候補者様の絵姿でございます!!」
私の気持ちを知ってか知らずか、レイナは力強くにっこりとそう宣言してくれた。
「いらないわ。昨日、パーティーを開いたばかりなのよ?私がパーティーの中で誰か気になる人を見つけたかもしれないとは思わないの?」
「何をおっしゃっているのですか。よい方はいらっしゃらなかったと王妃様におっしゃていらしたではありませんか」
その言葉にグッと、押し黙ってしまった。
「そもそも、これは王妃様よりお預かりした分でございます」
さらに追い打ちをかけるようにそう付け足すレイナに、思わずクラリと眩暈がした。
「お母様から?・・・・勘弁してよ」
お母様選別のこの候補者の絵姿など、見なくてもわかる。
そう思いながら、山の一番上に置かれた絵姿を手に取り、それを開いてみる。
「・・・・やっぱり」
その絵姿をそっと山に戻す。
「どうかされましたか?」
レイナが驚いたように私にそう聞いてきた。
「見て見ればわかるわ」
そう言うと、レイナは失礼します。と声をかけ先程私が手に取った絵姿を手にとり開いてみる。
すると、レイナの口元が引きつったのがわかった。
「ありえないでしょう?」
私の言葉に、レイナはそっと目を瞑り絵姿を戻した。
「わかりました。では、こちらは王妃様にご返却しておきます。ですが、他の物は目を通して下さいね!!そうでもして頂けないとこちらをお返しする理由が出来ません!!!」
涙目で訴えかけるレイナに私もしかたがないと頷いた。
「わかったわ・・・。とりあえず、それはないから戻してきてちょうだい」
そう言うと、レイナは山を抱えて部屋を後にした。
「・・・・お母様。私に一体何をさせたいのでしょう・・・・・」
誰もいなくなった部屋に呟いた言葉は誰にも聞かれる事はなかった。
うっかり予約し忘れていました(@_@;)
新年早々すみません・・・・
あ!!
新年明けましておめでとうございます!!
稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
本年も精進いたしますので、生ぬるい目で見守ってくださいませ!!




