第七十一章:拒絶
手の甲を、刺すような痛覚が貫いた。
だが混乱してしまっている僕の脳は、それを鈍いモノとしてしか理解してはくれない。
だって、彼女が。
遠夜 亜希が、僕を鋭い目つきで睨みつけているのだから――。
「亜、希……?」
理解出来なかった。
予想もしていなかった、彼女からの突然の拒絶。
なぜ、彼女は僕に怒りを向けているのか。
なぜ彼女は、あんな底知れない憎悪が籠もった目で、僕を睨みつけているのか。
凍り付いた僕の頭では、とうとうそれを理解する事は出来なかった。
「……、ゴメン。
触られるのはあんまり好きじゃないの。
……過去ログってコレでしょ?
多分、探せば氷室が死んだところくらい映ってるんじゃない?」
亜希はそれでだけを言って、哀しそうな、どうしようもないくらい哀しそうな表情で俯くと、さっきまで彼女が見ていたモニターを示した。
なるほど。
どうやら左側の十個のモニターは、初めから過去の映像を確認する為に用意された物だったらしい。
「……、悪かった。
確かに、いきなり触られたらいい気はしないよね」
彼女の様子は、気がかりではある。
だが今の僕たちにとっては、間違いなく映像の確認の方が優先度が高い。
だから僕は、彼女に表向きの謝罪をするだけでモニターの操作に移る事にした。
問題となる映像は、幸い直ぐに見つかり――、
――――。




