表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Criminal  作者: Dr.Cut
65/114

第六十五章:黒土

「船橋、氷室は――?」


「小部屋にぶちこんで来たわ。

ま、しばらくしたら目ぇ覚ますだろ。

んで、これからどうすんだ?」


症状の進行具合を聞いたのだが――。

こういう言い方をするという事は、きっとあまり変化も無かったのだろう。

油断は出来ないが、取り敢えずは安心していい筈だ。


「そうだね――。

幸い出口も近いし、まずはなんとかこの施設から脱出しよう。

――と、言いたいところなんだけど。

その前に、出来る限りは犯人と治療薬を探すべきだと思う」


多少回り道になるかもしれないが、仕方がない。


氷室は善人とは言い難い男だったが、それでも見殺しにするのは忍びないし。

……何より、これはもう氷室だけの問題では無いのだ。


氷室と一緒に行動していた以上、僕たちだって細菌に感染している可能性があるのだから――。


「――ったりめぇだろうが!!

こんな施設造ったイカレ野郎、野放しにしとけるかってんだ!!」


「……ふーん。

アンタでも一応、アイツを助けてやろうとか考えるんだ。

いいんじゃない? それで」


この二人にとっては、これはわざわざ確認するまでもない事だったようだ。

今は話が早くてありがたい。


「――ありがとう。

それじゃ、早く先に進もうか」


ドアの前に跪いて、手元の機械を操作する。

――、良かった。

いちおう最悪のケースも考えたが、番号を入力すると、扉を閉ざしていた電子ロックはあっさりと外れてくれたらしい。


「おし。そんじゃ、行こうぜ」


その扉が、乱暴に開かれる。

三人になってしまった今、彼にも何か思うところがあるのか。

船橋は、率先して扉の先へと進んでいった。


僕もそれに続こうとして――。



不意に、おかしな物を見た気がした。



「……、ん?」


不審に思って、目を細める。

開かれた扉と床板の間。

五ミリくらいの、本当に小さなその隙間。

そこに、奇妙なモノが挟まっている事に気が付いたのだ。



「……、土?」



――そう。

そこに挟まっていたのは、熱帯の森林に敷き詰められているような黒土だったのだ。

腐葉土、だろうか?

よくよく見るとこの辺りの床一面に、薄っすらとその土が散らばっているように見える。


……、おかしい。


こんな地下の研究施設に、いったいどこからこんなモノが紛れ込んだというのか――?



殆ど無意識に、僕は地図を取り出してしていた。

調べるべきは、地下三階と地下二階の間取り。

それを比べると、今僕が立っている床の真下にあるのは――。


「相原? ナニしてんの?

船橋、もう行っちゃったよ?」


そこまで考えたところで、階段からは亜希が引き返してきた。

……、これ以上待たせるのも悪いか。


「――、ゴメン、すぐ行くよ」


ちょっと考えれば、すぐに結論は出る事だ。

ただ、今だけはその答えに目を瞑って、僕は逃げるように地下一階への階段に駆け出した――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ