88話 ヨミの精度。
88話 ヨミの精度。
(闘いの質が、明らかに変わった……まるで、ルールそのものが変わったような……命の奪い合いという前提に変わりはないが……まるで、そう……『五目並べ』と『囲碁』ほどの違い……)
100%断言できる精度ではないが、
『ほぼ確実にそうだろう』と言えるレベルで、
セイラは、
(おそらく、こいつは、碁打ち。顔に覚えがないところから察するに……ワシが死んだ後にでも台頭してきた新鋭、最年少記録を塗り替えまくった天才と言ったところか)
強者は強者の雰囲気を纏っている。
それを、長くて濃い人生経験の中で知っている。
カミノがまとっている強者のオーラは、
何度か直接顔を見たことがある『タイトルホルダー』に匹敵する。
(――面白い。立場上、ワシは表に出ることが出来んかったし、時間もなかったからプロになることはなかったが、実力だけで言えば、プロ相手にも負けとらんという自信がある。事実、ワシは名人相手に三子局で勝ったこともある)
相手が、セイラにビビりすぎていた、というのが、大きな勝因だが、しかし、それだけで勝てるほど甘い世界ではない。
セイラの実力はハンパではない。
十二分にプロ級であり、素質だけで言えば破格の天才級。
碁だけに特化した人生を生きていた場合、タイトルホルダーになることも夢ではなかった。
セイラは、そんな自分の『今できる全て』を、カミノにぶつけた。
優れた演算力をフルで活用して、カミノに対抗していく。
カミノの一手一手をお手本にしながら、神闘を学習していく。
神闘を知らないくせに、神闘についてくるセイラを見て、
カミノは、最初、普通に驚愕し、その異質な資質に嫉妬し、
そして、
(……こいつの戦闘思考力……俺の想像をはるかに超えていた……研ぎ澄まされていく……才能だけで言えば、こいつは、俺を置き去りにしている……っ)
しかし、それは、『才能だけ』の話。
手探りで『神闘』のシルエットを模索している者が、
元主人公の神闘をトレースしている上、
実は『破格の才能』を有しているカミノに勝てる道理はない。
闘いは、常に、カミノのペース。
勝つだけなら楽勝だと、魂の芯が理解する。
セイラを圧倒していく中で、カミノは、無意識に、指導手へと切り替えていた。
セイラを殺せる算段はついた。
――セイラは、ちゃんと強いが、
だからこそ、カミノは、この闘いの終着が、寸分の狂いもなく、デジタルに目算できた。
もう、どうあがいても、セイラに負けることはない。
そうなってくると、違う欲が出てきた。
ソレは、まったくもって合理的ではない感情論の坩堝。
『どこまで強くなるのか見てみたい』という謎の欲求。
――闘いの中で、
カミノの強さを『おおよそ理解したセイラ』は、
「……信じられん……ヨミでワシに勝つのか……」
セイラには強い自信があった。
自分の頭脳は破格であり、常人を置き去りにしているという自負。
それは事実で、彼女は、本当に強いのだ。
数値も高く、戦術も高位。
いきなり神闘を要求されて、普通についていける胆力。
構想力、演算力、超高度な論理的思考力。
だが、今は、相手が悪すぎた。




