15話 決着ですわ
「〈魔王獄炎光線波〉!!」
魔王が腕を組み前に突き出し魔法の射撃準備に入る。
それを察知し、すぐさま妨害に動く【スーパーフォレストロン】しかし劣悪な関節可動範囲は機敏な動きと言うにはほど遠く、まったく間に合っていない。
実はこの【スーパーフォレストロン】の役割は動力炉の直結による固定式大型砲台であり運用方法自体が間違っているのだが、そんなこと第一王子達は気付かない。
そうして、魔王の腕から黒く太いビームが放たれる――
「させません!」
その兆候を受け取ったアリステラ。その声にいち早く反応したのはイベリスだ。
彼女の乗る【イーグルⅢ】は高空から一気に降下。同時に航空機モードから変形する。【スーパーフォレストロン】など比にならないほどのスムーズで流れるような変形により人型になった【イーグルⅢ】は逆噴射をかけて地上すれすれでホバリング。一瞬の間を置いて着地。魔王の左側面300m付近に着地した。
そして、すぐさま背部の大型ビームランチャーを構え発射した。
「なにぃぃぃ!!」
これに戸惑ったのは魔王である。まさか邪魔が入るとは思っていなかったようである。そもそも【フォレストロン】のような大型兵器が他に存在することも。
【イーグルⅢ】から放たれた高出力ビームは魔王の胴体に向かっていく……が、魔王の放った高出力、大規模破壊魔法に干渉し、ビームが湾曲。左足に着弾、消し飛ばした。
「ぐわぁぁぁぁ!」
「うゎぁぁぁ!」
魔王と第一王子達の悲鳴が交錯する。
魔王は左足を軽々と吹き飛ばされたことにより。第一王子達は直撃はまぬがれたもののその余波により、軽く数百メートル近く打ち上げられそのままゴロゴロと転がっていき戦線離脱した。
魔王の放ったビームはバランスを崩したため、目標を大きく反れ、人間国家連合軍右翼に着弾した。
その威力はすさまじく右翼連合軍は消滅。その衝撃波は連合軍中央にまで押し寄せた。
たった一発である。たった一発により連合軍は1/3を失うことになった。
◇ ◇ ◇
「このままでは不味い! 我らも行くぞ!」
アリステラ様がそう言いながら、馬をかけます。その後をついて行くアリステラ様の部隊と私の【ハウンドⅡ】
「まずは、魔王の周りの生き残りを掃討する。我に続け! リリア、イベリスは魔王を牽制しておいてくれ!」
「分かりましたわ!」
アリステラ様率いる部隊はまず魔王の周囲を片付けようと言うことらしいです。
私とイベリスは魔王の相手ですね。
【ハウンドⅡ】の76㎜ライフルから放たれる対装甲弾が、【イーグルⅢ】の内蔵式30㎜レールガンが、魔王を削っていきます。
「ぎゃぁぁぁ! 痛いたいたちあちあーー!!」
弾が当たった部分から漆黒の血液が飛び散りますが、その程度で魔王と呼ばれた者がどうにかなるとは思ってませんわ。なるべくこの場に釘付けしておかなければ。
『思ったより効果がありますね』
「防御力は弱いのでしょうか? このまま仕留められそうですが……」
イベリスなどかなり楽観視していますね。そういった油断はいけませんわよ。あれでも魔王。この程度の攻撃でどうにかなるとは思っておりません。やはりここは新しく装備した武器で決戦に挑むべきでしょうね。
アリステラ様旗下の部隊はアリステラ様を中心に騎兵によるスピードで相手を確実に仕留めていきます。元々敵はそこまで残っていなかったためすぐに片付きました。
その後アリステラ様は反転し後退、こちらに魔王を倒すように言ってきます。
「よしっ! 周囲の掃討は終わった。私達は退避する。リリア達はそのまま攻撃を続行! 国王陛下に宮廷魔法師による大規模攻撃を要請しろ!」
アリステラ様は安全圏に交代した後、宮廷魔法師部隊に連絡し大規模魔法攻撃を行って貰うそうです。
「ぐぁぁぁ! おのれぇぇぇ! 小童共がぁぁぁ!!」
魔王が苦し紛れに腕と右足のみで体を持ち上げました。そうして頭を垂れると口をガパっと開けました。次の瞬間、何と、そこから漆黒のビームが放たれます。
先ほどのビームよりはかなり細いですが、それでも連合軍右翼を全滅させた魔王です。このような……
『空間エネルギー量から問題ない程度と判断。【ハウンドⅡ】の装甲であれば直撃しても問題ありません』
ビュゥゥン! と飛んできたビームですがそれは【ハウンドⅡ】に当た…………らず、ちょうど脇の下をくぐり抜けて連合軍中央に着弾。
「ああっ! 宮廷魔法師部隊が!!」
外部マイクから誰かの声が聞こえてきました。リアカメラを確認するとちょうど今の攻撃が宮廷魔法師部隊の陣地を直撃したみたいです。
……ごめんなさい
「くっ、魔王を侮ったのが間違い。最大の攻撃で魔王を撃滅します!!」
どうやら未だ油断があったようですね。しかし私は同じ失敗は2度しない女です。
私は、昨日【ハウンドⅡ】に追加した武装。356㎜ビーム砲を立ち上げました。背中に接続、折りたたまれていたバレルが展開し右肩にセットされます。
右手をトリガー位置にセット。対象ソフトウェアを起動。網膜に投影されたビーム砲用のロックオンサークルを合わせます。
「目標魔王! ロックオン! エネルギー充填率50%……70%……」
『お嬢様、この兵器にエネルギー充填率は関係ありません。すぐに撃てますよ?』
「……90%……100%! 発射!!」
ドォォォォ! と言う轟音と閃光を伴い、肩に担いだ大型ビーム砲からビームが発射されました。それは正確に魔王を捉え――
「おのれぇぇぇ! こんな所で負けてなるものかぁ!! 我が必殺奥義をくらえぇぇ!! 〈魔王獄炎光線波・極〉ォォォォ!!!!」
魔王の口から先ほど連合軍の1/3を飲み込んだ黒い光線が――いや先ほどよりも強く太いビームが発射されます。その漆黒のビームは周囲の光を飲み込みながら私達の方へ――
ドガァァァアァァァ――――
【ハウンドⅡ】の放ったビームと魔王の放ったビームが中心で直撃する。
一進一退。辺りに閃光と熱が飛び散る。
私の……私達の思いの詰まったビームと魔王のビームが拮抗する。
「私達は負けません。人類の平和の……明日への願いのために。うぉぉぉ!!」
…………
……
『…………お嬢様、ビーム砲の出力が10%にも届いていません。出力を上げれば倒せますが……何をやっているのですか?』
「あの……お嬢様。最終決戦ゴッコはもういいのでさっさと倒してください。王様やアリステラ様が心配そうにこちらを見ていますよ。」
もう、まったく! イベリスも震電も風情がありませんわね。ここ最後の大一番と言うときに。実力が拮抗しているがそれを知恵と勇気で乗り越える。それこそが英雄譚にふさわしいですのに……プンプンですわ。
でも、アリステラ様を心配させるのは良くありませんわよね。リアカメラを確認すると確かにアリステラ様がハラハラとした様子でこちらを見守ってくれています。
「もうちょっと楽しみたかったですのに」
「お嬢様、わがままを言わずに」
「分かりましたわよ。はい、出力20%」
ビームの拮抗が崩れる。私の放ったビームは魔王の究極魔法? とやらを貫きそのまま魔王を直撃――
「ばばば、馬鹿なぁぁあぁぁ!!!! こ、この私ガァあぁぁぁぁ!!!!」
そんな最後の台詞と共に魔王は消滅しました。
進化した科学は魔法と区別がつかないとかなんとか




