14話 決戦ですわ
視点変(ry
翌日、日が高くなると共に騎兵と魔物がぶつかり合う戦場で、異様な光景が見られた。
「なるほど、確かに凄いですね」
『大きさや質量は強さに比例します。あの程度想定の範囲かと』
今、目の前のモニターでは王子達の乗る魔導鎧が手にした剣などの武器で敵を吹き飛ばしていく様子が映し出されていた。
「現在、魔王に動きは見られません。このまま監視を継続します。」
上空を飛行しているイベリスからも通信が入る。
アリステラやその部下達も既に戦闘準備を整えている。後方部隊ではあるがだからと言ってのんびりと休憩しているわけでは無いのだ。
開戦の合図と共に騎兵が魔王の集団に向かって突撃していく。ある程度距離が詰まったら、魔法使いによる先制攻撃が始まる。それにより大きな爆発や土煙が舞い魔物が混乱する。そこに騎兵が突撃をし蹂躙する。と言うセオリー通りの流れだ。
ただ、魔王側も練度が高く混乱から素早く立ち直ると騎兵に対して抵抗し始める。大多数の魔物は人間よりも体格、パワーの面で勝っている。中には騎兵よりも数倍大きな魔物も存在する。それらにより突撃していった騎兵の足が止められ吹き飛ばされる。
戦場は一進一退に見えた。
そこに楔を打ち込んだのが魔導鎧を装備した第一王子達4人だ
「ふん、この程度か! 大したことないな!」
「さすがは4賢人の遺産ですね」
「魔物って、大したことないね!」
「俺たちが魔王を倒す!」
「みんなー! 頑張ってーー!」
彼等は魔物よりも大きなその巨体を操り魔物を吹き飛ばす。大型と言われる魔物ですら、10m以上ある魔導鎧の前には小型犬程度の体格差に成り下がる。
魔導鎧【フォレストロン】が振るう武器によりあっさりとパワー負けし吹き飛ばされる魔物達。
後ろでは嬉しそうにしたマリー男爵令嬢が従者を引き連れ観戦していた。
そうして徐々に魔王側は数を減らしていった。
「ふむ、そろそろか」
そう呟き立ち上がる男がいた。今まで陣中央で座りながら戦いを見物していた人物――魔王であった。
周囲の魔物達はあらかた倒されるか行動不能にされており、既に魔王を取り巻く軍勢は壊滅したと言っていい。
「貴様が魔王か! 引導を渡してやる!」
「おとなしくくたばりな!」
魔物の軍勢がほとんど壊滅した平野に立つ魔王。それを取り囲む4機の【フォレストロン】
勝敗は決定づけられたかに見えた。
だが、
「ふん、あの程度を倒したぐらいで得意面か……まったく人間というものは」
余裕の表情で語り始める魔王であったが、それに焦れたクリストファー(軍人の家系のワイルド系イケメン)が【フォレストロン】が持つ大剣を振り上げる。
「見せてやろう! 魔の王たる神髄を! 『超強化』ビルドアップ!!」
「「「「なっ! うぁぁぁぁ!!」」」」
次の瞬間、発せられた闇と衝撃により4人は吹き飛ばされた。
魔王が変質する。体格の良い成人男性程度であった魔王が闇を広げる。闇はそのまま周囲を覆い今まで倒された命――死者を敵味方関係なく飲み込んでいく。生きている者には害の無いその闇であったが、死者が飲み込まれる光景は相手を怯ませるには十分であったようだ。
飲み込んだ後は再度収縮し魔王がそれら全てを吸い込む。そうして多数の死者を吸い込んだ魔王はみるみるうちに巨大化していく。
「なっ!!」
「ば、馬鹿な……」
「あれが魔王……」
闇を吸い込んだ魔王は以前の様相とはまったく異なる……黒い人型になっていた。人型なのでかろうじて頭の位置は分かるが、顔のパーツはよく分からない。そうしてそれ以上に変化したことそれは大きさ。
「何ですの?」
「こちらイベリス。魔王の質量増大。全高約30mに巨大化しました」
『おやおや、周囲の質量を取り込んで巨大化したのでしょうか?』
そう、ものすごく大きくなっていたのだ。目視で周囲にいるアルレアン達の魔導鎧【フォレストロン】の2~3倍程度。
上空からその状況を探っていたイベリスの機体からリリア達に画像が届いた。
「あれが魔王の真の姿か」
その映像を通信拡張チョーカーにより目の前に投影したモニターで見ていたアリステラは呟いた。
「怯むな! こけおどしだ!」
「デカいからっていい気になるなよ! 行くぜ!」
一度吹き飛ばされた【フォレストロン】は体勢を立て直し手にした武器を構え魔王に向かっていく。
「ふんっ! 小賢しい! 魔王パンチ!!」
「ぐぁぁぁ!」
「魔王キック!!」
「うわぁぁ!」
「魔王エルボー!!」
「くそぉぉぉ!」
「魔王張り手!!」
「ひぃぃぃ!」
立場が逆転した。魔王の攻撃の前になすすべも無く吹き飛ばされていく第一王子達の魔導鎧。
「そ、そんな……」
「4賢人の魔法遺産が……」
その光景を見ていた各国軍の兵士達も絶望したような表情になる。
「くそっ! デカいからっていい気になりやがって」
「アルレアン様このままでは負けてしまいます」
魔王の攻撃になすすべも無く蹂躙されていった【フォレストロン】。それぞれのパイロット――第一王子達も弱気になる。
しかし後ろから声がかかった。マリー男爵令嬢だ。
「頑張って、皆! アイツを倒せば私達は幸せになれるのよ!」
「マリー……」
「へっ、そうだったな」
「こんな所でやられるわけには行かない」
「しかしどうしたら……」
そのとき第一王子達は皆一斉に一つの結論に至った。そのときアルレアン達は間違いなく心が一つにつながったのだ。
「皆、いいか? 奥の手だ!」
「「「おうっ!!」」」
第一王子達の操る魔導鎧【フォレストロン】その隠された能力とは――
「行くぞレッツフォレストロン!!」
「「「合体っ!!」」」
そう、合体である。コマンドワードを叫ぶとアルレアン達の魔導鎧が光り輝きだしその形を変えていく。
アルレアンの魔導鎧が飛び上がるそれに続くように、クリストファー、トーマス、タールの魔導鎧が追随する。そして各機構解除による変形を行い合体シークエンスが開始される。
さながら「ガシーン!!」という効果音でもつこうかと言うぐらい無茶苦茶な変形を行いそれぞれの部位へと合体する。
それぞれが胴体に、腕に、足に、頭部に変形合体していく。
「「「「合体完了! 【スーパーフォレストロン】ッ!!!!」」」」
合体により現れたのは全高30mにもなろうという超巨大ロボットだった。
◇ ◇ ◇
なんと言うことでしょう。4体の魔導鎧が合体しましたわ。でも、
「なんだか格好悪いですわね……」
『なぜ、低い技術レベルであのような複雑な合体機構を組み込んだのでしょう。理解に苦しみます。質量の増大と動力の直結は認めますが、強度の低下、関節など可動範囲のさらなる低下が見られます。』
「どうしましょうお嬢様? このまま監視を続けますか?」
映像を見てあきれているとイベリスから通信がありました。
目の前には全高30m級の魔王と魔導鎧が相対しています。
こちらもそろそろ何かしら行動を起こした方が良いのかという問いかけですね。
だって、あの魔導鎧……【スーパーフォレストロン】とか言っていましたが……どう見ても弱そうです。震電の予想では9:1で負けます。1はあれの能力を十全に使える運用を出来た場合の可能性です。
あと、あれコックピットの位置変わっていませんわよね。腕や足になった方達はどこに居るのでしょうか?
でも、そうですね。そろそろ私達の見せ場も欲しいですからね。
「アリステラ様、私達はどうしましょう。王子達のバックアップにでも入りますか?」
「……いやそうだな、――っ!! マズい!! リリア!」
アリステラ様が一瞬早く気付きました。
魔王が魔法をしようとしているその兆候を。
スーパーフォレストロン。おもちゃ化出来ないぐらい無茶苦茶な合体をしています。




