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9話 ヤベー雰囲気ですわ

途中に視点変更があります。

 1学期も終わりが近づいてきました。震電と出会ってから既に1年近くが経過しようとしております。私もこの1年で様々な成長を見せました。

 第2部開始からは一学期が経過したと言うことですね。え? メタいですって? どこのスラングですか?


 さて、本日は学園主催のパーティーと言うことで学園の生徒達が集まっております。

 カトレア様やデイジー様もいらっしゃいます。


「ごきげんよう、リリア様、デイジー様」


 さすがは、カトレア様ですね。すらっとした自身の容姿を引き立たせるドレスでこの場に来ています。

 そして


「いやー、こういう場って緊張するよね」


 デイジー様ですね。今日は明るい色のドレスを着て参加です。彼女の快活なイメージと合わさってとてもよく似合っています。


「カトレア様、デイジー様、ごきげんよう」


 私も負けてはおりません。今日のために震電に化学繊維や人工宝石などの技術を供与して貰い、おしとやかなイメージのドレス――しかし見る者が見ればその価値に気付くという感じにして貰っています。

 たまに周囲から貧乏だと思われる服装で参加される方も居ます。着古したドレスや型落ち品、その他制服、軍服などドレス類を用意できない者まで。私はあまり気にしない方なのですが、やはり空気を読むというのは大事かなと思い高価なドレスで参加です。


「どんな料理がでるのかなー」

「楽しみですね」

「リリア様、デイジー様、はしたないですよ」


 デイジー様もそうですが、私の今日の目的は美味しい料理を食べることです。このパーティーは他の貴族(の子息)との顔つなぎやお見合いなどとしても活用されますが、正直あまり興味ありません。別に私は家を継ぐわけでは無いのですから。(お父様の予定では体が弱い私は領地でスローライフ。お兄様が家を継ぎます。ただセルドランス伯爵家はどちらかと言えば武門の家柄ですからお兄様は大変ですね。体力ありませんから)


 一応、趣旨としては次代の国家を担う貴族達の結束を強めるためであり、こういった学園主催でのパーティーは各学期の終わりなどに定期的に開かれております。こういった時には大抵カトレア様とデイジー様の3人でグループを作って参加しましたね。たまに他の子も居て……



「素敵なお嬢様方、少々よろしいですか?」


 と思ったら、誰か声をかけてきましたね。顔を見ると男子生徒です。おそらくナンパですね。こういった方はカトレア様に任せるのが良いでしょう。彼女は大人びており男子にモテます。

 実際一言二言カトレア様と言葉を交わすとその令息の方は肩を落として去って行きました。



「この料理美味しいよ。」


 そんなナンパをカトレア様が退けている内に、デイジー様はテーブルに並べられた料理に突撃しています。

 さて私も料理に舌鼓をうちに行きましょう。



「~~っ、美味しいですわ」


 学園で出される料理ですが、さすが貴族が通う学校だけあって、質の高い物が並べられています。他の生徒達は顔つなぎやナンパに忙しいのか料理を食べている生徒は今のところ1割程度ですね。


 そうして料理に舌鼓を打っていると、周囲が少しざわめきました。何かと思い視線の先を見ると妙に古くさいドレスの女性が入ってきたのでざわめいていたようですね。私は、その方の顔も良く確認せず料理の方に戻りました。



 ◇ ◇ ◇



 パーティーホールに入ってきたマリーはそのままアルレアン第一王子の元へと向かう。ある程度近寄ればアルレアンも気付いたようでマリーの方に近づいていく。


「マリー、良く来たね。エスコートは任せておいてくれ。ああ、周囲は気にしなくていい。それにしてもそのドレスは?」

「はい、私の家は少々貧乏でして……」


 言いよどむマリーにアルレアンの周囲に居たクリストファー達――取り巻き軍団がそれぞれ声をかける。


「いやいや、似合っているぞ」

「そうだな、ごちゃごちゃしたドレスなんかよりよっぽど良い」

「マリーさんが着れば何でも似合いますよ」



 ◇ ◇ ◇



「うっぷ……食べ過ぎましたわ。」


 美味しいからと次々に口に入れていた私ですが、元々そこまで食べる方ではありません。すぐに胃は限界を迎えました。ちなみに前回のパーティーでも似たようなことがありましたわ。

 学習しないのではありません。美味しいからいけないのです。


 さてさて、私、壁際に設置された椅子に座っておりますが、カトレア様はいつの間にか男性陣に囲まれどこかに行ってしまいました。デイジー様は未だテーブルの料理を美味しく頂いております。


 なので、私一人になっていますね。そこへ声をかけて来る人が居ました。


「リリア、大丈夫か」

「アリステラ様!」


 アリステラ様がこちらに寄ってきて心配そうに声をかけてくれましたわ。


「いえ、大丈夫ですわ」

「そうか、……一緒に回らないか」


 パードゥン?


「え? 一緒にですか? ……そのアリステラ様には殿下が……」

「いや、いいんだ」


 どうしたことでしょう。アリステラには王子様という婚約者がいらっしゃいますし、侯爵家のご令嬢ですので引く手あまたでは無いのでしょうか?

 とはいえ、誘われたのですから受けないわけにはいかないですわ。


「そうですか。では喜んで。一緒に回りましょう」


 そう言って、アリステラ様と一緒に回り始めましたが……すぐに問題にぶち当たりました。




 アリステラ様と一緒にパーティー会場を回っていた私ですが、目の前に信じられない光景が現れます。

人目もはばからずにイチャイチャしている王子様一行とマリー様です。ヤベぇですわ。


「あ、アリステラ様、今度は向こうに行きましょう」

「どうした……ん、ああ」


 必死にアリステラ様に見せるまいとしましたが、速攻で見つけられました。


「全く殿下にも困った物だ……少々注意してこよう」


 少しあきれたように、アリステラが言います。どうも怒っているとかでは無いようですね。

 そうして、婚約者がいながら他の女性とイチャイチャしていた王子に注意しに行ったのですが。どうも雲行きが怪しくなっていきました。

 いえ、本当に最初は注意を投げかける言葉だったのですが、その言葉に王子が反論し、そしてそれにアリステラ様が突っ込みを入れてとなり最終的に――


「皆もいるので、今日この場で宣言しよう。皆聞いてくれ! アリステラ=フォル=バルトシェル! お前との婚約はこの場で解消するっ!」

「なっ、何を言っているのですかアルレアン様!」


 アルレアン第一王子の突然の宣言に声を荒げるアリステラ様。

 アリステラ様はその場に膝を付きます。と言うか、どうしてこんなことになったのでしたっけ? ただの注意だったはず。


「お前がマリーにしてきた嫌がらせの数々、俺が知らないとでも思ったか!」


 王子や周りの男性方の陰に隠れるように一人の女性がいます。その方を庇うように周囲の男性達がアリステラ様を囲みます。


「そのような卑怯者と俺が婚約者など虫唾が走る。俺はこのマリーと婚約する!」


 そう王子が宣言します。

 これには周囲もビックリしたようで、ざわめきが大きくなっていきます。


「で、殿下、私を嫌うのはともかくとして、その者との婚約は――」

「黙れ! 父上にもこの事は報告する! アリステラ、お前のような女とは話したくも無い、とっとと立ち――」



 ばちーん!!



 会場に軽快な音が響き渡りました。

もはや様式美となっている婚約破棄騒動ですね。

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