表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~  作者: 瘴気領域@漫画化してます
第四章 戦え! エルフの森

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/126

第八十八話 おまえを女の子にしてやんよッ!

「ミリーちゃん、ここはお願い!」

「わかりました! みさきさんも気をつけて!」


 一瞬で意図を察したミリーちゃんが銃を受け取る。北門が破られたということはそこでは接近戦になっているはずだ。そしてわたしたちの中で接近戦の最高戦力は他ならぬわたし自身。素直に得意な土俵は任せようということだろう。


 北門の敵はかなり少なくなったとは言え放置はできない。北門に続き南門まで破られてしまったら挟み撃ちにされてしまう。北門を死守しつつ、南門から侵入してきた敵を撃退するのがこの場の最善手に違いない……と思う!


 物見櫓から飛び降り、北門に向かって全力で走る。怒号や悲鳴、金属同士がぶつかり合う音が徐々に近づいてくる。その中に混じるうめき声に、いつかドワーフ村で起きた事件を連想してしまう。


 北門前の広場に到着すると、そこではエルフの男たちとトカゲゴブリンたちの乱闘が繰り広げられていた。竹の小片をつないだ鎧をまとったエルフたちが短槍を振るっている。


 ゴブリンたちの装備は統一されておらず、薄汚れた鎧を身に着け、小剣、片手斧、棍棒などてんでバラバラな武器を振り回していた。戦争で人間から奪った武器を思い思いに使っているのだろう。


 マーシャルさんの話では武装したゴブリンがいるということだったが、それまで自分の目では目撃していなかった。おそらく、これまで温存されていた精鋭部隊なのだろう。


「ゲギャギャギャギャギャギャ!」


 躍りかかってきたゴブリンの頭を、兜ごと戦鎚で叩き割る。一撃で地面に倒れ伏せ、ぴくぴくと痙攣している。よし、いける。トカゲゴブリンとの接近戦ははじめてだが、これなら十二分に戦える。


 戦場を見渡す。メルカト様の加護のおかげで混戦でも視界はくっきりしている。押されているエルフのところへ優先的に駆けつけ、敵を蹴散らす。


「一人ひとりで戦わないで! 二三人で組になって一体にあたって!」

「わ、わかった!」


 トカゲゴブリンは草ゴブリンや地潜りゴブリンなんかよりずっと強いようだ。普通の人間が一対一で戦ったら無傷で勝つのは難しいだろう。だが、その程度だ。奇襲で足並みが乱れているから押されているが、落ち着いて正面から戦えば勝てない相手ではないはずだ。


 戦場を駆け回り、一体、また一体とゴブリンを屠りながら集団戦を徹底するよう声をかけていく。曖昧ではあるがエルフ側に徐々に戦列が形成されはじめ、ゴブリンたちを押し返しはじめた。


「あっちゃー。一人加わっただけでこれなんて、あーしドン引きー」

「やつが(かなめ)だな。このギガーズが直々に叩き潰してくれよう」

「はーい、よろしくー」


 人語!? 声が聞こえたほうを見ると、巨大な戦斧を担いだゴブリンと、露出の高い服を着た浅黒い肌の女がいた。


 ゴブリンの方は他のトカゲゴブリンをそのまま身長2メートルちょいまで拡大したかのようだ。ただ、おしりからはワニを連想させる太いしっぽが生えている。


 女の方は何の武器も持っておらず、一瞬ロマノワさんと見間違えそうになったがその胸は平坦であった。裏切ったのかと思いかけたが、あれは別人だな。なんで人間がゴブリンの側にいる?


「貴様ァ! 名は何という!」

「個人情報を教える義理はないッ!」


 進み出て大声を張り上げてきたゴブリンに、打ち上げ気味で戦鎚の一撃を叩き込む。だが、戦斧の刃の腹で受けられてしまった。身体が浮けばこのまま追撃をするところだが、どっしりと構えたままで体勢は崩れない。


 これは強敵だな……。一旦後ろに跳び、距離を置く。


「一騎打ちの名乗りもせんとは……随分と野蛮な人間なようだ」

「キャハハハハ! 何の影響受けちゃってんのよ。殺し合いに作法も何もないでしょー」

「貴様は黙っていろ! そもそも最初からこうやって攻め込んでいれば何日も待つ必要はなかったのだ!」

「元気いっぱいのエルフさんたちの矢の的になってただろうねー。それはそれであーしも見たかったかもー」

「エルフどもの弱矢など、このギガーズに通じるものか!」

「そもそもさー、あーしが合流するまで兵糧攻めってゆうのは魔王様の指示だったしー。ギガーズは魔王様の作戦を無視しようとしてたってチクっちゃおうっかなー」

「貴様……! いつかその首をへし折ってやるからな!」

「いつかっていつですかねー? 雷鳴が何回巡ったときぃ?」


 なんだこいつら……わたし()をそっちのけで口喧嘩をはじめやがった。まぁ、それならそれで好都合だ。雰囲気からしてこいつらがこのゴブリン軍団のトップで、なおかつ最高戦力なのだろう。それが無駄話で遊んでくれているのはありがたい。


 視界の端で戦況を確認すると、エルフたちの隊列はさらに整然となっていた。乱戦では使えなかったのだろう弓矢も近隣の建物の上から撃ち込まれはじめている。この二人がいくら強かろうが、雑魚を殲滅してから数で包んでしまえばなんということもないだろう。


 戦斧を担いだゴブリンに向かって数本の矢が飛来する。よしっ、口喧嘩に夢中なうちにこいつで仕留められてしまえ。だがそんなわたしの願望はあっさりと裏切られた。(ごう)という風切り音とともに戦斧が振るわれ、矢が叩き落される。


 あれ、つか斧に当たってない矢まで軌道を変えたな。風圧で払ったのか……あんなんで殴られたらひとたまりもないぞ。


「ちょっとー、あーしに当たりそうだったんだけどー」

「ふん、知るか」


 浅黒女の手に1本の矢が握られている。流れ矢を手で掴んで止めたのか? どういう動体視力をしとんねん……。見た目は人間にしか見えないけど、こっちも要注意だな。中身は怪物だと思っておいた方がいいだろう。


「おまえは雑魚を黙らせてろ。この人間は、俺様が片付けておく」

「りょーかーい。あんたに命令される筋合いはないけどー、あんたと一緒に戦うなんて死んでもやだしー」

「無駄口はいらんからさっさといけ!」


 次の瞬間、浅黒女の姿が消えた。いや、かろうじて見えた。恐ろしいほどに速い。矢を放つエルフを狙ってこの場を離れたのか?


「やかましいやつはいなくなった。もう一度だけ聞いてやろう。貴様の名は……」

「東京特許許可局です」

「トウキョウトッキョキョキャッ……?」


 もらったー! 大ゴブリンが噛んだ瞬間を狙って飛びかかり、股間に思いっきり蹴りを叩き込む。武術大会でも使った上段の戦鎚をフェイントにしての急所攻撃だ。うへへへ、武術大会のときは事故だったけど、今回は狙ってやったぜ。おまえを女の子にしてやんよッ!


「おばっ、おま゛、ぶざげお゛っ゛でぇぇぇえええ!!」


 大ゴブリンが口の端から泡をこぼしながら横薙ぎに振った戦斧を後ろに跳んでかわす。くそう、一撃決着とはならなかったか。


「ぎざ……貴様、楽に死ねると思うなよ!」


 若干膝を震わせながら大ゴブリンが追撃を仕掛けてくる。いよいよガチンコバトルののはじまりだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ