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三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~  作者: 瘴気領域@漫画化してます
第四章 戦え! エルフの森

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第八十七話 ゴブリンがうんこ投げてきた!

 街道に出ての削り作戦初日を終え、翌日も同様に街道に出る準備をする。物見櫓からの狙撃と合わせれば、70体以上を片付けた結果となる。推定される相手の戦力の1割以上を削った計算だ。戦果は上々である。


 厩舎付近に停めてある地を這う閃光号(ソーラーカー)に乗り込もうとした、そのときだった。


「ご主人、左上方から飛来物です」


 セーラー服君の警告を聞いて視線を上げるとなにやら茶色いものが飛んできていた。慌てて避けると、謎の物体は地面にぶつかってべちゃりと飛び散った。


 一体何なんだこれは。ゴブリンが毒物でも投げ込んできたのか?


 謎物体の正体を観察していると変な臭いがしてきた。臭いというか、これはクサイだ。わりとかぎ慣れたたぐいのクサさである。セーラー服君よ、この物体ってもしかして……。


「はい、ご主人。ゴブリンの排泄物と推定されます。次が飛んできますのでご注意を」


 うげぇぇ、あいつらうんこ投げつけてきてるんかい! こんなの食らったら精神的なダメージが大きすぎる。「ゴブリンがうんこ投げてきた! 気をつけて!」と周囲に注意を呼びかける。うーん、我ながら間抜けなセリフだ。


 幸い、次弾は誰の直撃コースでもなかった。自動車のフロントガラスに命中し、べちゃりと汚れを散らす。


「あのクソゴブリンどもッ! 我が地を這う閃光号になんてことを!!」


 瞬時に鬼の形相になったサルタナさんがベルトから火霊石のナイフ(手榴弾)を抜く。いやいやいやいや、壁越しに投げてもさすがに当たらないと思うっすよ。


 空から降るうんこの数がだんだんと数を増してくる。あいつらどんだけうんこ集めてきたんだ……こりゃたまらんとひとまず屋根のあるところに避難した。


 それにしても、うんこを投げつけてくるとかゴブリンの生態はチンパンジーやらと同じなのか?


 村中から悲鳴や悪態が聞こえてくる。ここだけではなく、あちこちからうんこが投げ込まれているようだ。


「くだらない嫌がらせを……あとで風霊様に祈って雨を降らせてもらわねばな」


 マーシャルさんが忌々しそうにつぶやく。


 おおう、風霊様は天候操作までできるのか。竹だらけの村だから焼き討ちにされたら大変だと考えていたが、そんなことができるのなら無用の心配だろう。


「おおーい! 南門にゴブリンどもの大群が攻めてきたぞ!」

「くそっ! 本当の狙いはこれか!」


 物見櫓で見張りをしていたエルフからの叫びを聞き、マーシャルさんが躊躇なく飛び出していく。このうんこの雨の中を勇気あるな……。しかし、命に関わる事態だ。汚いだのなんだのとは言ってられない。


「ミリーちゃん、いける!?」

「はい! もちろんです!」

「ボクも手伝いますよ!」

「わたくしもお供しますわ。地を這う閃光号の仇を取らなければ腹の虫がおさまりません」


 戦闘ではいつも一歩引いた立ち位置のサルタナさんがやる気だ。目に本気の殺意が宿っている。地を這う閃光号(ソーラーカー)の方を見てみると、あの後も何発もうんこを浴びたようですっかり無残な姿になっていた。こりゃわたしも腹が立つぞ。


 意を決して屋根の下から一斉に飛び出し、南門付近の物見櫓のハシゴをのぼる。物見櫓やいくつも立てられているが、1つの櫓に4人ではギュウギュウ詰めになってしまう。


「わたしとミリーちゃんはこっち! サルタナさんとリッテちゃんはあっちでお願い!」


 無人の物見櫓を指差して指示をする。櫓は無数に立てられていて、普段は一部に見張りのエルフが立っているだけだ。真新しいものがいくつもあり、ゴブリンの襲撃にあってから急遽追加したことがわかる。


 こうしている間にもうんこの雨はやまない。幸いわたしたちに直撃はなかったが、頭に食らったらしいエルフの男性がすごい顔で大声を上げていた。わかるよ……わたしもゴブリンのうんこを頭からかぶったら発狂する自信がある。


 南門の外を見ると数百のトカゲゴブリンが南門に向かって押し寄せてきていた。複数の竹を束ねて大きな丸太のようなしたものを、10体ほどで抱えて走ってくるものも何組かいる。なるほど、あれを破城鎚(はじょうつい)代わりに門にぶつけようってわけか。


「みさきさん、お待たせしました!」


 ミリーちゃんが背負っていた銃を受け取り、すぐに構える。櫓の手すりに銃身を預け、狙いがぶれないようにする。


「セーラー服、狙いは竹束を持ってるやつの先頭」

「承知しました。右1.2度、上2度に修正してください。照準合いました」

「撃ちます!」


 照準があった瞬間ミリーちゃんが引き金に指を添えて発射する。櫓からの狙撃は丸3日もやっていたのだ。いまさら細かい打ち合わせなどいらず、スムーズに初弾が発射される。放たれた弾丸は一体のゴブリンの頭部を貫き、後続のゴブリンの喉にも突き刺さった。


 絶命した2体のゴブリンが無様に転び、竹束を抱えていた他のゴブリンたちもバランスを崩して丸太を取り落とす。後続のゴブリンたちがそれにつまずき、さらに複数体が地面に転がった。


 よーし、この調子で破城槌部隊を優先して潰していこう。門さえ破られなければこちらは一方的に攻撃できるのだ。この戦争、勝ったぜ!


 狙撃を続けているとゴブリンの集団の中で時折火柱が立ち上がったり、爆発が起きたりして一度に数体が黒焦げになっていく。これはサルタナさんとリッテちゃんだな。


 草ゴブリン戦以来温存していた火霊石のナイフ(手榴弾)を使っているようだ。たしかにここは出し惜しみをしている場面ではない。……大いに私怨が含まれている気もするがそこは忘れよう。


 リッテちゃんの魔術もかなりの戦果を上げている。踊っている間に攻撃される心配もないし、大群だから弾速が遅かろうとどこかに打ち込めば被害を与えられる。なるほど、魔術はこういう場面で本領を発揮するものなんだな。


 エルフの男たちも続々と到着し、ゴブリンたちに矢の雨を降らせている。物見櫓からではなく、地面から矢を放っているものも多い。そんなので当たるのかと思ったが、櫓にいるものが狙いを指示しているようだ。


 ゴブリンたちはみるみる数を減らしていき、逃げ出すものもあらわれてきた。丸太部隊も門まで到達できそうなものはいない。何本もの竹束が無数のゴブリンの死体に交じって放置されている。


 だいぶ数を減らしたゴブリンへの狙撃を背後からすさまじい轟音が鳴り響いた。いったい何事ぞ?


「北門が! 北門が破られたぞー!!」


 えっ!? 敵ってこっちから来てた奴らだけじゃないの!?


 突然の凶報に、わたしは背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。

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