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三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~  作者: 瘴気領域@漫画化してます
第一章 降り立て! ドワーフ村!

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第十一話 なんでドMの化身みたいな脳みそに改造されなきゃならんのだ

 このところ、セーラー服君の説教モードが止まらない。曰く、


「我が創造主から与えられた使命を果たすには、繁殖か瘴気領域の(ぬし)を倒すかのいずれかであることはご主人も承知のはず」


 えー、そうなんですけどね。


「ゴブリンとの繁殖に忌避感をおぼえるのであれば、あのローガン氏でもよいでしょう。ドワーフ男性と人間女性の繁殖成功例はまだ確認されていませんが、男女逆であればいくつもの事例が確認されています。成功する可能性は高いでしょう」


 そういう微妙にリアリティがある提案やめてくれませんかね? つか、万が一にもそんなことになったらミリーちゃんからどんな目で見られるかわからん。


「どうあっても繁殖が嫌だというのなら、瘴気領域の(ぬし)を狩らねばなりません。体を鍛えるなり、武術の稽古なりをすべきでしょう。ローガン氏や他のドワーフ男性たちも、暇を見つけては研鑽に努めているようですよ」


 なんだよこの正論マシーン。いや、わかる、わかるよ、君の言っていることは正しい。でもね、そもそもなんでわたしがそんな押し付けられた使命なるものを果たさなければならないのさ? 仮に使命を果たさなかったらどうなるわけ?


「あまりに進捗が(かんば)しくないようでしたら、小生も強硬手段に出ます」


 あ、なんだか不穏なキーワード。具体的には……どういう?


「ご主人と繁殖可能性がある異性を可能な限り誘引するフェロモンを合成して散布しましょう。ゴブリン、オーク、ドワーフ、非効率なのでなるべく避けたいところですが同族の人間など。生殖に不要なサポート機能をすべてオミットし、それに集中すれば四方数キロメートルからオスが集められるでしょう。これで晴れてご主人は複数種族の女王として君臨できます。おめでとうございます、よかったですね」


 欠片もよくねえよ。


「純潔を失うことに恐れを感じているのでしたら、脳内化学物質の分泌量を操作して()な気分にすることも可能ですし、なんであれば痛みが快感に変わるようにすることも可能です」


 可能だからなんなんだよ。なんでドMの化身みたいな脳みそに改造されなきゃならんのだ。


 さすがに焦ったわたしは反論する。


「ちょっと冷静になりたまえよ、セーラー服君。わたしの使命のひとつはわたし自身が子どもを産むことではなくて、この世界に産まれる子どもたちを増やすことでも達成できるんじゃないのかね? つまり、このドワーフ村の食糧事情を改善し、出産率を高めることによってもわたしの使命は果たせると思うのだが、いかがか?」


 そうなのだ。あの自称女神的存在から与えられた使命をストレートに解釈するならば、この方法でもまったく問題がないはずである。わたし自身がビッグマザーになる必要もないし、瘴気領域の(ぬし)とやらにしてもわたしが仕留めなくてもいいのだろう。傭兵なり刺客なりを雇って、それに討伐を委ねるという手段もあるはずだ。


「いえ、小生が我が創造主から下された使命はあくまでご主人自身が子を為すか、あるいは瘴気領域の(ぬし)を倒すかのいずれか。それに至る過程は任されておりますが、目指す目標が変わることはありえません」


 うっわー、融通きかねえ。いくら人間味に溢れたウィットな対応ができると言ってもセーラー服君はしょせんスウェット爆乳に生み出されたAI的存在に他ならないのだ。コンピュータープログラムがプログラマーの意図したとおりにしか動かないように、セーラー服君も決してスウェット爆乳に与えられた命令から逸脱することはないのだろう。


 うーん、どうにかしてこの堅物セーラー服君を説得し(言いくるめ)なければならないようだ。


「あのさ、セーラー服君は料理という行為を甘く見ているようだけれど、実際はけっこうたいへんなんだからね? 頭も使えば身体も使う。直接的に筋トレしたり武道の鍛錬をしてるわけじゃないけどさ、わりとけっこう心身を鍛えることにつながってたり? あーあー、あとー、男は胃袋からつかめって言うしさ、料理上手の聖女様の評判が広まったら全国各地から白馬の王子様が駆けつけて逆ハーレム状態とかもワンチャンあると思わなくもなくない?」


 前半はわりと本音だ。ひとりでやっているわけではないけれど、ドワーフ集落数百名の食事の面倒を見るのは決して簡単な作業ではない。セーラー服君のパワーアシストがあるからいいが、重力2倍そのままだったらとてもこなせる労働とは思えない。


 後半に関しては……ぶっちゃけ心にも思ってない。たとえどんなイケメンだろうが、複数の男を侍らせる毎日なんてのは精神をすり減らせる未来しか見えない。女の嫉妬は怖いというが、男の嫉妬だって十分に怖いのだ。「わたしのために争わないで!」なんて状況に酔えるほど、わたしの嗜好はサディスティックではない。


「後半の可能性は計算上極めて低いと断じざるを得ませんが」


 とセーラー服君は前置きして続けた。求めてないけど、ないって断言されるとそれはそれでなんか腹が立つわー。


「前半については理がないとは言い切れませんね。わかりました。いまから少しずつパワーアシストのレベルを落とし、ご主人のたるんだ身体を鍛えていくことにしましょう」


 日常が筋トレと化した瞬間だった。果たしてこれを避けるルートはなかったのだろうか?

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