第9話 能無しなんてとんでもない(リデル視点)
即席サンドを作ってもリスみたいに食べてる……可愛い。ライオスに少し指摘されながらも、俺の作ったものを素直に口にしているのは素直に愛らしいと思えた。
(見つけたのはたまたまだが……正式な披露が必要だ)
イリスに属する国の知識すら、レティは知らなかった。あの小国が閉鎖的な状況であったのはもちろん、レティのスキルの有益さを秘匿していたのは変だ。
「美味しいですわぁ……!!」
温かい食材すら、満足に与えられていなかった?
一応は貴族令嬢だったはずなのに??
婚約者は下衆野郎……有益でないと、親からは爪弾き。
ざっくり、レティのことは調べてあのパーティーに潜り込んんだのだが……。
(むしろ、養育次第では『聖女』くらいの気品さを兼ね備えられて……不思議じゃないんだが)
今も、必要最低限のマナーは守っても、頬張り方は俺たちが気崩した態度の時とそっくり。微笑みは小動物のように輝かしく……やはり、何度見ても愛らしい。
(……俺の婚約者に、と仮でも申し込んでよかった。のだが)
英才教育次第では、さらに愛らしくなるのではないか?
自分を卑下する女を磨き上げた快感……はこちらとしても鍛えてはいるが。身の回りはリーリルに任せているので、俺やライオスの出番は必要ない。
とりあえず、ベーコン以外だと……ソーセージのホットドッグも食べたことがないはず。ソース無くても美味しく食べれるのを作ってやったのだが。
「まあ! 中から美味しいスープが!?」
「……普段。そんな食べさせられてなかったの?」
「用済み扱いだったはずですわ。わたくしのスキルはただの屑だと」
「…………ほぉ?」
スキルを屑?
これを聞いたライオスはセレストに魔法瓶を送ったようだが、結構頭にきているだろうな? 自分の恩人を卑下どころか害悪扱いが日常生活で多かった……と、本人の口から聞けば。
俺は俺で、澱みそのものであの国を沈めて……本気でよかったと思うくらい。
殺しはせずに、繭の中のように汚れで包みはしたが。犯罪者でも決定権は我らが神にあるせいだ。
クロノ様を念話経由で叩き起こすことにしても……まだ腹いっぱいじゃない、レティのお腹を優先してやることに。デザートより食事が欲しい感じだったため、飽きずに即席サンドをたくさん食べていく。
これは、軽くひと眠りしてからのちゃんとした食事もたらふく食べてもらった方がいい。俺とライオスは徹夜に慣れているから、あとで料理長へいくつか頼むことを決めた。
次回はまた明日〜




