第41話 野営料理の練習
ふたり分の浄化をしたということで、本日も『野営料理』をリデル様が振舞ってくださることになりましたの。お兄様とお姉様は、穢れを落としても体力がかなり削られたとのことで辞退されましたわ。
ライオス様やアディルカ様は別のお仕事があるからと、今日は朝ご飯のあとからご一緒していませんの。けど、リデル様とふたりきり……なのには、少し気恥しく感じますわ。
(だって……だって!! 契約とはいえ、婚約者ですのよ!? しかも、麗しい殿方との!!)
あの浮気者だった子息と比較しても、リデル様は素晴らしい御方ですわ。ご尊顔がお綺麗なのもですが、こちらへの気遣いの仕方がスマートですもの。こんなあばずれにも気遣いを忘れないでくださる殿方は貴重ですわ。しかも、王太子様がですもの。
「レティ。穀物は平気だろうか?」
「穀物……ですの?」
パンとお肉の、あの美味しいご飯とは違うものを作られるのでしょうか? リデル様は道具をいくつかご用意されていたので、別のご飯を作られるようです。穀物は粥以外あんまりですが、美味しいご飯になるならと気になりますわ!!
「東方の国由来の野営料理だが。穀物を『炊く』という手法で食べるんだ。俺が父上らに習ったのはそれを具材と一緒に炊く方法なんだが」
「……美味しいのですか?」
「俺は好きだな。そして、今日は旅路の練習も兼ねて……レティにも手伝ってほしい」
「! わかりましたわ」
そのために、工程の多い食事を作るのですね! 婚約して最初のお仕事……少し、わくわくしますわ!!
わたくしは、まずはさみで『野菜を切る』ところからお願いされましたの。リデル様は包丁をお使いですが、わたくしは初心者過ぎるので最初はダメだと。指を切っては大変ですものね?
「今回の料理は『パエリア』というんだが。米という穀物を炊くんだ。麦よりも柔らかく煮える感じが美味い。レティには知ってほしいんだ」
「こめ……ですの? 家畜の穀物では」
「それが、東方では主食扱いらしいんだ。俺も最初知ったときは驚いた。今日のは父上が昔作ってくれた方法でやろうと思うんだ」
「そうですのね」
では、リデル様には思い出の逸品。道具は大きな平たい鍋とか竈替わりの火魔法など……色々ご準備なさっていますが、わたくしは与えられた仕事をするのみ! はさみで食材を切るのは初めてですが、意外に固いのですのね。
リデル様が炒めるところからすべて見ていましたが……殿方がお料理される姿はなんと素敵でしょうと思わずにいられませんわ。わたくしも練習すれば、最低スモアクッキーくらいは作れ……あれは、料理と言えるのでしょうか? どちらかと言えば、お菓子ですわね?
「少し煮るまで時間がある。腹ペコなら、いつものホットドックかハンバーガーでも食べないか?」
「……いただきます」
すぐに出来上がらないことを理解していましたのに……この、お腹が!! スキルを多めに使ったことで体力はかなり消耗していたようですの。大人しく、頷けば……リデル様には軽く笑われてしましましたわ!!
けど、バカにはされていませんので……その、親しくなった証拠とでも言うのでしょうか? いやな気持にはなっていませんの。
次回は金曜日〜




