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スキル『洗濯』の能無し悪役令嬢は、冷酷王太子殿下と虹染めに夢中〜無自覚溺愛に振り回されつつも、隣国は楽園です!〜  作者: 櫛田こころ


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第33話 具沢山のサンドイッチ?

 紙で落ちないように包んではありますが……このままかぶりついて良いのでしょうか??


 リデル様をちらっと拝見しても、頷くだけでしたので。好きに食べてよいとおっしゃってくださったのなら、わたくしは施しをいただくまで!! はしたないですけれど、出来るだけパンと具材をいっしょに食べましたが!!?



「|美味しゅうございますわ《おいふうごじゃいましゅ》!!」



 あまりにも美味しくて、ついつい食べながら答えてしまいましたが。それから何度もかじり、かじりついて……いいえ、かぶりついて!!


 もぐもぐと口の中でもきちんと咀嚼してから飲み込み……美味しい味をお腹にも伝えていく。ひとつを食べ終えるのが、あっと言う間が正しいのでしょうか。気が付いたら、手の中にはソースで汚れた紙のみ。



「レティ。おかわりはまだいくらでもあるが」

「いただ!! ……いいえ、ですが」

「くちくするまで食べていいんだ。君くらいの年頃の令嬢の食べる量を知っておきたい」

「……よろしい、んですの?」

「俺たちの恩人をもてなしたい気持ち。では、だめだろうか?」

「……はしたない食べ方を」

「全然。見ていて、気持ちがいいくらいだ」

「えぇえ」



 リデル様。お目は腐っていませんですのこと!? わたくしが遠慮しているのを見てもちっとも否定してくださいません。本当に、わたくしのお腹が満足していくのを見ていてくださっているだけですわ。


 でも、それなら……許されるのであれば。


 もう一度、お顔を拝見しても口元を優しく緩めているだけでしたわ。



「……遠慮はこの際、いい。レティの満面の笑みをまだ見ていたいんだ」

「あ……はい」



 なぜか、愛に近い告白のような言葉も賜りましたが……遠慮しなくてよいのは本当のようですから、つい頷いてしまい。今度はお魚を揚げたものをはさんだサンドイッチをいただきましたわ。



「旅は基本的にひとりだからな。仕事以外は、出来るだけ食べたいものは自分で覚えるんだ」



 都合、三つもサンドイッチをいただいてしまったわたくしでしたが……リデル様はちっとも怒っていらっしゃいませんでした。それと、ご自身のこれまでのお仕事を少しだけ話し出してくださいましたの。



「……外で、『染める』は出来るんですの?」

「いや。材料を集めに行く時だな。手が穢れで染まってしまうのは……神殿の作用があれど、虹を染めたことで『受け手』になるのがイリスの血筋の欠点なんだ」

「紡ぐ方も?」

「クロノ様は俺が子どもの頃に言っていたな? 『綺麗に見えて毒の塊』だったと」

「……まあ、そんな」



 虹は美しいもの。


 果ての地面の奥には宝物でもあるような架け橋。


 なのに、誇らしい仕事であれ、実は黒いものが多く存在していた。


 それらをすべて、リデル様方……イリス国の王族方は何代も受け継いできていたと? わたくしがもし、陛下方の穢れを取り除かなかったら……あのようなお姿になられていたんですの??


 それを想像するだけで、また涙があふれてしまいますわ……。リデル様は別のハンカチで、わたくしの顔を軽く押さえてくださいました。



「……レティは、俺たちにとっての聖女。利用のためだけじゃない。居てくれないか? この国に」

「……もちろんですわ。お仕事、もっと頑張らせてください」

「熱心なのはいいんだが。今の意味……わかっていないのか?」

「はい?」

「いや、いい。今は君の健康優先だ。腹はもう大丈夫か?」

「あ、はい。お腹はいっぱいです」



 なにかぼそっとつぶやいていらっしゃるようでしたが……小さくて、うまく聞き取れませんでした。片付けはごいっしょにしたあと、やはりアディルカ様の手の穢れが気になりましたのでふたりで探すことにしましたの。

次回はまた明日〜

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