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スキル『洗濯』の能無し悪役令嬢は、冷酷王太子殿下と虹染めに夢中〜無自覚溺愛に振り回されつつも、隣国は楽園です!〜  作者: 櫛田こころ


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第32話 あとはごゆっくり?

 アディルカ様とライオス様は。すぐに来てくださったんですが??



「「お邪魔しないから、ごゆっくり」」



 と、淀みの無い言い方でそうおっしゃって……食堂にはわたくしとリデル様だけですの。おふたりは、いろんな食材を持ってきていただいただけで……何故、ご一緒に食べないのでしょうか??



「……あいつら」

「……よろしいのでしょうか? わたくしがたくさんいただいても」

「それは間違ってないから大丈夫だ。とりあえず、これだけ材料があれば……」



 戻って来られるご様子がないので、リデル様は袖をめくって料理をされるようです。王族の方が料理……と、今更ですが畏れ多いことをしてくださるのに、少し慣れてしまったのですが。あの甘くておいしいクッキーから、じゅんわり美味しいお肉のパンの虜になってしまったので……実は、楽しみにしている方が強いです。


 たくさん食べてよいと言うことでしたら、たくさん食べたいです!! お腹がぺこぺこですもの!! とはいえ……ですが。



「わたくし、なにかお手伝いすることはないでしょうか?」



 まかせっきりはよくありませんので、きちんと質問はしますわ。



「そうだな。では、食事の好みを聞きたいから……俺の質問に答えてほしい。好き嫌いはないか?」

「好きか嫌いか?」

「苦手な味があるものは、出来るだけ口にしてほしくないからな」

「……ですと。その、お野菜は苦いのが苦手です」

「食わず嫌いではなく?」

「そう、ですね。あの家では変な味付けがあったので」

「……これをかじってみてくれないか?」



 渡されたのは、赤くてツヤツヤしたお野菜? トマトではないように見えますが、初めて見るお野菜。受け取って、おっしゃるようにかじってみますと、ほんのり苦いですが甘味が強くて美味しいと感じ取れました。



「……あんまり、苦くありません」

「それはよかった。これ以上に苦いのはあるが、パプリカが平気ならいつか食べられるかもしれん」

「……そうですの?」

「栄養の偏りはよくないからな。俺もあんまり他人事ではないが……なら」



 パプリカ以外にも、お野菜を細く刻んでいかれ……火魔法の方では、棒に刺したお肉がいい音を立てて焼かれていきますの。この組み合わせで、どんなお料理が出来上がるのでしょう? マナーをあまり気にしないお食事でしたから……また、大胆にかぶりつくご飯でしょうか?? あの食べ方、はしたないんですが好きですの!! 今までお皿にちょこんと乗っているだけの質素なご飯よりも『食べている!』っていうのがはっきりわかるんですもの!!


 リデル様はてきぱきと進めていらっしゃる間、わたくしはまだ手にしたままのパプリカをかじることにしましたわ。本当に、ほんのりですが苦みを感じる以外はほとんど甘いですの。噛み応えもよくて瑞々しく……こちらも、食べているを実感するような気がしますの。



(ああ……なんて、至福の時間)



 ただご飯を待つ時間がこんなに楽しいなどと、自分で野山を駆け回る以外はほとんど食事などがありませんでしたし。衣装などのドレスについても質素なものばかり。そちらについては、馬を操る上では汚れすぎるので問題がありましたから良かったですが。


 あの浮気元婚約者が、どこぞのご令嬢へ執心していたことでわたくしはわたくしなりの生き方を見出せ……リデル様という仮でも素晴らしい保護者兼婚約者が出来てしまいましたもの。感謝とは違う気持ちですが、自業自得を思い知りなさいと今なら叱責したいほどです。


 リデル様のように、好き嫌いから慎重に相手を思う心配りのない人間に、幸せな生活を送るなど言語道断ですわ!!



「レティ、少し持ちにくいかもしれないがこれを」



 もう出来上がってしまったのか。お肉の焼けたいい匂いが目の前に!!


 紙ナフキンで包んでありますが……パンを上下に、間にはお肉とお野菜がたくさん挟まったお料理が!! 目の前にあったので受け取るのはこちらも慎重になりましたわ!!


次回はまた明日〜

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