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スキル『洗濯』の能無し悪役令嬢は、冷酷王太子殿下と虹染めに夢中〜無自覚溺愛に振り回されつつも、隣国は楽園です!〜  作者: 櫛田こころ


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第31話 ぷんぷん、ぷんぷん

 わたくしの不遇だなんて、とても可愛らしいものでしたわ。イリス国の皆様方のがもっともっと酷いだなんて、思ってもいませんでしたもの。


 リデル様などのお若い王族の方々には、まだ穢れが移り切っていなかったために手袋程度ですんでいたとしても。きちんとした血筋がおありなのに、陛下方は素顔のままでいられない事情のせいで……他国からは貶されてきたと。


 見た目判断だけで、非常識ですわ!! わたくしのスキルが役立って、本当にようございました。



「まあまあ、レティ? そんなにも泣かないで。私たちは将来についてはほとんど受け入れてたのよ? けど、貴女が来てくれたんだから……もしかしたら、この国も大きく変わる可能性が出てきたわ」



 アディルカ様がやわらかいハンカチでぽんぽんと優しく涙を拭いてくださいましたけど。わたくしはなかなか止めれずにぐずぐず言うばかり。そんな悲しいお言葉を口にしてほしくなかったのですが、この方々の『今まで』を思うとそうだったとしか思えませんわ。


 将来を、決められた道に進むしかないだけの生活。


 素晴らしいお仕事の中には裏があるとも、貴族社会の噂で聞きはしましたけれど……これは酷すぎますわ! わたくしの不遇など、本当に些細な出来事だと痛感致しました。


 なので、最後にアディルカ様の手に染み付いた穢れをはがそうとしたのですが。肩をリデル様に掴まれたため、出来ませんでしたわ。



「レティ、急ぐ必要はない。たしかに、焦る気持ちはあるだろうが……叔父上たちの穢れを移したことで、相当疲れてないか? 軽く食事を摂った方がいいと思うんだが」

「……そう、ですの?」

「勢いで無茶をしてほしくない。これまで君が施してくれたスキル事態、すべてが奇跡なんだから」



 なんと、甘やかな賛辞。心の奥がくすぐったくなってしまい、蕩けてしまいそうですわ!!


 ですが、たしかに。大きな魔力を使ってしまった感覚はあったので、軽くお腹が空いてきた気分ではありましたの。



「……リデル、が。女の子にメロメロ?」

「でしょう? 僕と引き合わせてから、ずっとああだよ」

「可愛らしいだけじゃない、芯の強い女の子だものね? お嬢様口調なのもチャームポイント」

「食事はふたりで?とかにする?」

「材料の準備だけ、ささっとしましょ」



 少し後ろでなにかこそこそされているのはうまく聞き取れませんが、今度はセレストの陛下がこちらにいらして……恭しく、わたくしの前で腰を折ってくださいましたわ!?



「レイシア姫。我々のために、たくさんの魔力を消費したのだろう? そこは我が子たちにたくさんフォローさせてくれないかな? 一時的保護とはいえ、リデルの婚約者になるのなら……私たちにとって、君は姪と同じだ。私や妻をおじさんとおばさんとも思っていい」

「そうね。それは大歓迎よ!」

「え、あ、はいぃ?」



 王族の方を、縁戚と同等扱い? そんな畏れ多い特権など無理ですと首を強く横に振っていましたら、おふたりからころころと笑われてしまいましたわ。



「なかなかに、礼節が整っているようだ。英才教育も期待できそうだね」

「ええ、ダンスレッスンもきちんと受ければ。リデルとも絵になるでしょうし」

「……叔父上、叔母上。レティが混乱しているのでそのくらいに。レティ、食堂に行こう。ルカたちが先に行って色々準備してくれてるらしい」

「あ、は……い?」

「大人たちは大人たちで話し合うから、お前たちは好きにしてなさい」

「はい、父上」



 という具合に、あれよあれよと今度はご飯をいただいたお部屋に戻ることになりましたが。大きなテーブルは部屋の端に避けられ、真ん中にはリデル様が火の魔法で焚火のような準備をしてくださいました?



「あの、ここで何を?」

「廊下だと匂いが外に広がってしまうからな。ここは王家の使う部屋だから、片付けだけきちんとすれば大丈夫だ。昨日のように野営料理を色々食べよう」

「! 本当ですか!!」



 もちろん、今朝の朝ごはんも美味しかったんですが……その、わたくしには。


 ちょっとだけ、物足りなかったんですの!! だから、ボリュームのあるように感じる野営ぽさがあるリデル様が振舞ってくださったのは大賛成ですわ!!

次回はまた明日〜

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