第27話 セレストの国王
立派な馬車が神殿へ音も立てずに着地にも驚きましたが。中から出てきた真っ黒い頭巾を被り、ローブも真っ黒の方々を見て……わたくし、驚き過ぎてリデル様の後ろへと隠れてしまいましたわ。
「ああ、レティ。驚くのも無理ないか」
リデル様からは安心して良いと、頭を軽く撫でていただけましたが……この方々は敵でないのがわかると、少しだけほっと出来ましたわ。
ですと、おそらくこの方々は。
「ああ、驚かせたようだね? 我らはイリス=セレスト国の者だ。故あって、こんな黒ずくめなのはお許しいただきたい。レディよ」
やはり、ライオス様が普段いらっしゃると言うセレスト国の方々。殿方はこちらの陛下と……たしかご兄弟でいらしたはず。長子がアーストを、次子がセレストを継承されるとお聞きしてますわ。
ですが、何故真っ黒な服装でいらっしゃるのでしょう? 汚れの件があるにしても、白で良いのでは??
「いえ、申し訳ありませんでしたわ。わたくし、レイシア=ファンベル=ラディストと申します。殿下にはレティと呼んでいただいておりますが」
「…………え? リデルがそんな呼び方を?」
「はい?」
「……叔父上」
「いやいや、だって? 女性嫌いのお前がわざわざ……ううむ、良い兆しではあれ」
どうやら、リデル様がわたくしへの呼び方が少しおかしいようです? 愛称としては別段……だと思っていましたが、セレスト国の陛下には可笑しく見えてしまったようです。
「まあ、本当?? たしかに愛らしいお嬢さんではあるけど。今の架け橋を染め上げるのにも助力してくださったのなら、リデルとしては好印象も仕方ないでしょう」
「お母様? リデルを褒めているのか貶しているのかわからないじゃない」
馬車の中にはまだどなたかいらしていたようで。陛下と同じ真っ黒い衣装の方と、水色のウェーブが可愛らしい女性が出てこられましたわ。リデル様を呼び捨て……と言うことは、従姉妹様でしょうか?
わたくしと目が合いますと、王女様……はダッシュでこちらに詰め寄り、リデル様ではなくわたくしの手を長手袋の手で掴んでくださいました。
「……アディルカ」
「可愛い! 可愛いお嬢さんだわ!! え、ほんとにあの汚れというか穢れを落として下さったの?? しかも、女嫌いのリデルがわざわざお迎えに行くだなんて!!」
「……えぇ、と?」
「あら、ごめんなさい? この堅物の従姉妹、セレストでは第一王女のアディルカと言うの。呼びにくいようなら、アディでもルカでもいいわ」
「あ、はぁ……」
身内にもあまりいませんでしたが、王女様でもハキハキした物言いで勇ましく見えますのね? ちょっとだけ、砂糖菓子のようなイメージを持っていましたが……元気な方なので、印象はいいですわ。
次回はまた明日〜




