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スキル『洗濯』の能無し悪役令嬢は、冷酷王太子殿下と虹染めに夢中〜無自覚溺愛に振り回されつつも、隣国は楽園です!〜  作者: 櫛田こころ


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第26話 清め、浄め

 虹染めの工程を見学させていただきましたが、染料が糸のように細く手袋に巻き付いたかと思えば……それぞれの色に反応したのか、手袋へ移した色がぽんぽん光っていきます。


 そして、染布の方にシュルシュルと流れていく色はどんどん白っぽいものから、どんどんパートごとの色へと染められていきますわ!!



「……素晴らしい」

「ええ! 虹のグラデーションが特に」

「違う。手袋が必要以上に汚れていない」

「はい?」



 水の中から出した、リデル様の手袋……ですが。わたくしが波紋の模様に染めてしまった布で作りましたが、その色がかなり薄くなっていましたの!? ほとんど白と言ってもいいですわ!!



「……こんなこと、今まで一度も」

「…………いけません、でしたの?」

「……違うんだ。なんと言うか、その……嬉しいと言っていいか」

「喜んで、良いのでは?」

「素直に出来ん。レティを道具扱いなど、俺はしたくないし……皆も同じのはずだ。それを喜ぶだなんて」



 心が弾んでしまいそうでしたわ! リデル様はわたくしを卑下せずに、むしろ『人間扱い』してくださっていますもの!! 洗濯と認識されていただけの、貧弱令嬢だったわたくしとそのスキルですのに……こちらの話をきちんと聞いてくださいます。


 とりあえず、汚れは『染料の混ぜ過ぎ』が原因で。仕分ければ、汚れる必要がないようですの。



「……わたくし、凄いことをしたつもりはないのですが」

「…………今までの冷遇が役に立つのは、喜ぶべきではないのだが。しかしながら、その発想は上流に匹敵する教育を受けていても浮かぶとは思えん」

「じゃあ、染料というか『汚れ』を仕分ける方法をちゃんと見つければ」

「俺たち以降の、イリスの血筋を持つ人間が『呪物』扱いされないということだ」

「……じゅぶつ?」

「父上たちを見た時、思わなかったか? まるで呪われているようだと」

「……まあ」



 両陛下はそのような扱いを?


 虹を創り出すお仕事の裏側では、わたくし以上の冷遇な人生を送って来られたと??


 そんな……そんな冗談、あってはいけませんわ!! あんなにもお優しい方々ですのに!!



「紡ぎの方も、なんらかの方法で『聖浄』以外のスキルを持つ者にやらせてみよう。これは言い換えれば、聖女の力ともてはやされるかもしれん」

「……せいじょ??」

「……レティは、な。我らイリスの血筋には希望の光だ」

「ぇえ!?」



 許可をいただいた上で、自分の思う通りにスキルを扱っただけですのに……三日程度で、底辺令嬢からとんでもなく高級な位置に格上げされてしまいましたわ?!



「レティ。次はこの虹を空に放とう。俺たちの最初の仕事だ」

「あ、はい!」



 重さも感じないように、さっと神殿の外まで布を持っていくと。神殿の中央に位置する巨大な噴水に投げられ……布は光となり、そこから外へと虹の橋をかけられましたわ!!



「……ここからセレストの皆も来るだろう」



 つまり、これはあの大きな国布の代わり……でしょうか?? 上を見上げていますと、黒の点が見えてきて。だんだんとこちらへ近づくにつれ、紺色の立派な馬車が駆けてきましたわ!!


次回はまた明日〜

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