第16話 ゆっくり寝ている中に
発表は少し日程をずらしてくださると、わたくしがすべきことは変わりました。
(ぬくぬくで気持ちいいですわ!!)
実家の固い布団とは雲泥の差ですわ!!
ネグリジェにお着替えさせていただいたあとですが、ふわんと掛け布団の中に入った途端……蕩けそうでした。わたくし、余程疲れていましたのか……ふーっと、意識が落ちてしまいまして。
次に起きた時、お部屋は真っ暗でしたわ。夜までぐっすり寝てしまいましたの!!? リデル様でしたら、遠慮せずに起こしてくださってもいいですのに!!?
『ふふふ。少し、違うわ』
可愛らしい声がしましたの。お姉様ではありませんわ。
暗い部屋の中を、ふよふよ浮かんでいる何かがありましたわ。……虫にしては大きいような?とこっちに来るようなので待っていれば。
虹色の人魚姫、という格好をされたお姫様の登場ですの!!? 愛らしいですわ!!
「ど……どなた、でしょうか?」
『私? さあ、姿が変わり過ぎていて……具体的なのがないの?』
「え?」
『散り散りに別れた魂の集合体。誰の元に帰ればいいかが……さっきまでわからなかった。でも、ひとつはわかった。あなたが、まずひとつ帰れたんだもの』
「……帰れた、ですの?」
『そう。クロノの配下となり、イリスの統合を成すために』
手を出してとおっしゃるので、一応出してみましたが。人魚姫様の体にある真珠のひとつを乗せられたのです。
「……綺麗ですわ」
ですが、氷が溶けるように、すっと消えてしまいましたの。他には何も感じません。
『幾久しく、あなたが本当に帰りたいところへ』
帰れますように、と人魚姫様のお声も遠くなった気がしましたわ。夢の中……だったのでしょうか? 次は窓からの陽射しが感じ取れる時間に起きられました。
(……帰りたいところへ、でしょうか)
まだアースト国へは来たばかりですが……ここでは、いけないでしょうか?? 素直にそう思うことが出来ましたわ。
「でも……今はもう少しぃ」
この蕩けるような手触りのお布団の中で、眠っていたいですわぁ。
せめて、お姉様か他のメイドの方々が来るまで……ゆっくり寝ていたいです。スゥっと寝てしまいましたが、今度は普通に寝てしまいましたわ。
次回はまた明日〜




