第14話 その青年、神である
クロノ様とおっしゃる方ですが。わたくしの視線に気づきますと柔らかく微笑んでくださいましたわ。
ドキドキですが、トキメキはありませんでしたの。不思議な微笑みですわ。
「僕はクロノソティス。長いからクロノでいいよ? この『イリス』を統べる主神候補さ」
「候補?ですの??」
わたくしはリデル様も含め、イリス国のことを存じておりませんでしたから……クロノ様のことも知りませんでしたわ。あの自分に利がない者は興味無しの両親にとって、わたくしは爪弾きでしかありませんもの。必要でないと思ったのでしょう。
「……ふーん」
考え込んでいたら、クロノ様が急接近してましたわ!? 髪に吐息がかかる距離まで!! びっくりして、リデル様の横まで逃げましたわ!!
「クロノ様。いつものようにしないでいただきたい。彼女は我々のように慣れていないんだ」
「……びっくりしましたの」
リデル様はなんといいますか、『安心』しますわ。親近感は王太子殿下と知る前からありましたし、仕事のためと慕う相手だったからでしょうか? 見目麗しいはクロノ様の方が上に見えるせいもあるでしょうけど……とにかく、クロノ様の懐にはびっくりしましたの!!
「ははは! 神よりも身近を……か。流石、表裏を覆してくれた子だ」
「……はぁ?」
わたくしの行動に、お腹を抱えて笑う箇所はあったでしょうか?? しかし、気分を悪くされてなくとも、不敬を働いたことに代わりありませんから謝罪はきちんとしましたわ。
「ん。僕が適合者へと合わせた……とあるスキルをレイシアはきちんと『開花』してくれたようだね?」
「……『洗濯』がですの??」
「正式なスキル名は違う。扱い続けて驕らないように……狭間に漂っている僕を起こすためにも、隠してたんだよ」
「……お聞きしても?」
「ふふ。『聖浄』と言っているけど、洗濯……ね? 態と濁して洗濯か……ぷくく」
笑い上戸でしょうか、クロノ様はよく笑われますね。ですが、わたくしはスキルの適合者であれど、あの虹を綺麗に出来たことへの満足感から……祖国の扱いが逆だったとしても、亡国してよかったですわ!!
あの浮気貴族とは違って、リデル様やライオス様もですが。お仕事を頑張るお姿がお美しいのはお姉様もでしたもの!! わたくし、スキルの名前を聞いてから、改めてリデル様に申し込みしましたわ!!
「聖浄を持つ者として、わたくしを御身の傍らに置いてくださいますか?」
誇り高いお仕事をお手伝い出来る喜びは勝りますが……リデルの申し込みも嬉しくないわけではありません。
最敬礼しますと、リデルはあの王城での場を利用した時のように跪いてくださいました。
「もちろん、我が妃として受け入れたいくらいだ。だが今は、君の幸せの方法を考えていこう」
「……ありがとうございます」
「立ち会いに、僕が居るから。これは正式な盟約としようか」
ということで、わたくしはイリス=アースト国に滞在することが決定しましたの!!
次回はまた明日〜




