vsカール『攻略』
そのツヴァイたちの闘いを、アインスは一瞥する。
「気になるか? お前にそんな余裕はないぞ」
ブラウは相変わらず岩に腰を預けたまま、アインスを挑発する。
しかし事実だ。そう、余裕はない。
アインスは音だけを頼りに、慎重にカールの攻撃に備える。離れた場所にいるドライの耳の方がずっと頼りになるため、カールが少しでも足音を立てようものなら彼女から指示をもらえるはずだ。
ドライは能力を発動させたまま弓矢を構える。
体力はそう残っていない。ドライが能力切れを起こしたら、透過能力には太刀打ちできない。
このあたりの土が柔らかいことはナンバーズに災いした。慎重に歩けば足音はそう立たないのだ。
緊迫した空気が流れる。
そして、ザッ、とドライの背後で音が鳴る。
まさかもうこんなところまで──ドライは即座に振り返り、弓を放つ。
しかし弓はカールをとらえることなく飛んでいき、やがて何もない地面に突き刺さる。
音のした場所には石が転がっていた。
「……投石?」
ザッ、ザッ、とあちこちで音が鳴る。聴覚強化を施したドライの耳には、その音がよく響いてしまう。
足音を聴き取られないために、ノイズを増やしているのだ。
やはり能力の正体には気づかれている。
それならカールが先に狙ってくるのはドライの方だと、2人とも理解している。
ドライの顔に冷や汗が流れる。
姿を消した人間が、殺意を持って自分を狙っている。狡猾に、投石で音を誤魔化しながら、じわじわと接近されている。これほどの恐怖はない。
アインスは地面を見つめ、思考する。
カールの能力は、自身だけでなく身につけている衣服や武器も透明にしていた。
しかし投げた石は透明になっていない。
つまり『能力発動時に身につけているものを透明にする』か、あるいは『発動後に身につけたものも透明にするが、カールの手元を離れた時点で解除される』かのどちらかということになる。
この特性を利用しない手はない。
そして、カールの恰好……ジャラジャラと装飾品を身につけていた。
アインスは口元を歪ませて笑う。




