「『生命感知』」
「あったこれだ! 『生命感知』!」
無数のスキルの中からサラが選び出したのは『生命感知』というものだった。
ステータスカードの説明書きによるならば、『一定範囲に存在する一定以上の力を持つ存在の居場所を特定』する。『力を持つ存在』とは『生命体』のことを指すらしく、いわば索敵スキルのようなものらしい。
「じゃあさっそく使ってみようっ!」
スキルを取得したサラは勢いよく叫ぶと、即座にスキルを発動させた。
「スキル発動――『生命感知』!」
コマンドワードに従い、サラの胸の前に直径三十センチぐらいの球体のホログラムが現れた。
ホログラムは周囲の地形を地図として立体的に表していて、細かな地形の起伏や藪、川などの水源までもが表示されている。
ところどころにあるチェスのポーンのような緑色の表示が生命体で、隣にはその生命体の個体名が記されている。
ちなみに球体の中心にいるのはサラで、『人間(女):サラ』。
そのすぐ隣にいるのが私で、『人間(男):ニコ』。
「わあ、性別と名前までわかるんだ?」
「……サラ、これはかなり便利なスキルだぞ。立体図としてもこの上なく貴重な情報だが、ただの人間でなく性別と名前までわかるのなら、これからの選択肢の幅が一気に広がる」
サラの友人であるパティマをピンポイントで探せるというだけではなく、危険人物に近寄らないようにするとか、魔物の襲撃だって回避できる。
防御的な使い方だけでなく、こっちから攻撃をする際だって圧倒的なアドバンテージを得ることができる。
「うんうんっ。いいねいいねっ」
自分で選択したスキルが優秀なものであったことが嬉しいのだろう、サラはニコニコご機嫌な笑みを浮かべている。
サラの手元を見るに、操作方法はスマートフォンに似ているようだ。
まずはタップだ。
球体も右側をタップすることで『一定以上の力を持つ生命体』の『一定以上』の値が『上昇』する。
最初は小動物まで表示されていたのが魔物と私たちだけになり、そのうちそれすらも表示されなくなった。
球体の左側をつつくと今度は値が『減少』する。ゼロ以下になるとマイナス領域。『負の生命力』を持った存在――サラ曰く『不死者』の存在などは、こちらで計測出来るらしい。
そしてピンチインとピンチアウトだ。
球体表面で指を開いたり閉じたりすると、地図の表示範囲が拡大されたり縮小されたりする。
周辺の地形を確かめるために縮小したり、あるいは全体的な魔物の所在を確かめるために拡大したりと、これまたケースバイケースで便利な使い方が出来る。
ひとつだけ問題があるとすれば……。
「ん~……最大まで広げても直径百メートルぐらいかな。もっとグレードが上のやつなら範囲も広がるみたいだけど、初期のポイントで取れるのはこれが精いっぱいって感じ」
すぐにパティマを発見できるわけではないと知って、少し気落ちした様子を見せるサラだが……。
「いやいや、とんでもない。これは実に重要なスキルだよ。彼我の位置はもちろんだが、歩いて移動することすら困難な魔境の中で、周辺の地形や魔物の位置を事前に把握しておけるなんていうのは最高のアドバンテージだ」
「え~、そう? そうかなあ~? あたしってばけっこう見る目のある方だったり? えっへへへ~」
根が素直なサラは、私が褒めるとすっかり機嫌を取り戻した。
頭をかき、鼻を高くして調子に乗っている。
これがただの先走りなら諫めるところだが、実際有益なスキルではある。
ちょっと前まで自分の無力を嘆いていたサラが笑顔になれるなら、いくらでも褒めてあげるべきだろう。
が、あまり興奮させて眠れなくなって、明日の行動に支障が出ても問題だ。
というところで、今日のところはこの辺にしておこうか。
「さて、ではもうそろそろ寝ようか。明日も早くから行動しなければならないからな」
「うんっ。おやすみニコっ」
改めて周囲に魔物がいないのを確認した上で、私たちは眠りについた。
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