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「そのスキルは誰が為に」

 夜になっても蒸すのは変わらないが、気温が下がったことで幾分か過ごしやすくなった。

 食事も終わったので焚き火は消してもよさそうなものだが、夜行性の魔物への牽制のためにも残しておきたい。

 それに、焚き火がぜる音には人を安心させる効果がある。

 ただでさえ文明社会を離れ不安を抱いているサラには、なくてはならない音のはずだ。


「慣れないことをして疲れたろう、今日は早めに寝なさい」


 今後の行程を考えると寝ずの番をするわけにはいかないが、目を閉じてウトウトとするぐらいは許されるだろう。

 そんな風に考えた私が木の根元に腰掛けると。


「……もう何度目になるかもわかんないけどまだ言うわ。ハリウッドスターってホントになんでもできるのね、すごいと思う」


 ベッドに横になったサラが、感心しきりといった風に息を吐いた。


「火起こしに水筒作り、料理だって美味しいし、あげくの果てにはこんなベッドまで作っちゃってさ」


 飲み水や食料の確保にベッド作成。

 今日私がしたことをサラは指折り数えると……。 


「それに引き換えあたしはなんにもできなくて……正直ヘコむわ」


 やがて、力なくため息をついた 


「何を言ってるんだ。君は私を召喚するという役割を果たしたじゃないか」


「それはあくまで自分が助かりたかっただけ。死に物狂いだっただけだもん」


「木の枝を集めたり木の実を集めてくれたりもした」


「あんたのそれに比べたら、子供のお使いみたいなもんでしょ。ああもう、自分で自分が嫌になるわ」


 サラは目を閉じると、げんなりとため息をついた。


 ……なるほどそういうことか。

 私はようやく合点がいった。

 ちょっと前からサラの元気がない様子だったのは、疲れよりも精神的な負い目の部分に理由があったのだ。

 張り切れば張り切るほどに空回りし、自分の実力不足が目立つから。


 これは私のマネジメント不足だ。

 同行者の精神状態を見誤り、いたずらに不安定にさせてしまった。


 ならばもっと前向きな気分にさせよう。

 褒めて、称えて、道を示して。

 失敗を失敗のままで終わらせるなんてこと、あってはならない。


「神力は? あれを使えばまた違った活躍ができるんじゃないか? 今日の行程でもそこそこ溜まったはずだろう?」


「まあそうなんだけど……」


 今日の私とのやり取り、そして夕飯を食べた時のリアクションで、サラにはまたいくばくかの神力が付与された。

 20を超えれば小なりとはいえスキルが取得できるので、また違った活躍ができるはずなのだが……。

 

「まだ悩んでるんだよね。緊張しい(・ ・ ・ ・)を治せたら一番いいんだけど、そんなに都合のいいのは無くてさ。じゃあどれにすればいいかっていうとわかんなくて……能力アップも武器や道具の取得も違うし。思い切ってお試しで取るには、あまりに貴重すぎるものだからさ……」


 サラはステータスカードをぼんやりと眺めている。


 現在のサラの神力は22。

 私の神力は41。

 たしかに貴重で、希少で、お試しで消費してみるにはあまりにももったいない。


「あたしにもできること……そのための助けになるものか……うう~む」


 眉間に皺を寄せ、うむむと唸り続けるサラ。

 このままいっても堂々巡りになりそうなので、私は他の提案をすることにした。


「なら、見方を変えるのはどうだろう?」


「見方を変える?」


「自分にできることではなく、自分がしたいことを考えるんだ。あがり症を治す以外に、今もっともしたいことはなんだい?」


「そりゃあもちろんパティマと合流することだけど……」


 道すがら聞いた話では、パティマというのがサラの学院での唯一の友達らしい。

 十三歳の時に寮の二人部屋で一緒になって以降の仲で、辛い時も苦しい時も、彼女がいたから耐えられたのだとか。


「――あ、そっか」


 何かを閃いたのだろう、サラはパッと明るい顔になった。


「パティマを探すのに役に立つスキルを取得すればいいんだ!」


「おお、それは素晴らし閃きだ! やったなサラ!」

 

「うん! うん! そうだよね? ありがと、ニコ!」


 サラは満面の笑顔を浮かべながらステータスカードを操作し、操作し――やがて数あるスキルの中からそれ(・ ・)にたどり着いた。


「あった! これだ!」

 

 無数のスキルの中からサラが選び出したのは……。

サラが得たスキルとは?

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