表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/37

お願い


「久しぶりだね、ディラン」


 墓石の前に花を添えて彫られた文字を視線でなぞる。

 紛れもない旧友の名前が刻まれていて、本当に死んだんだと今更ながら実感が湧いた。

 これまでも冒険者になった同級生が亡くなったことはある。

 死体さえ残らなかった人もいた。

 冒険者になった以上は覚悟の上だ。

 でも、薬物で死ぬなんて、そんなのあんまりだ。


「俺たちが学生時代の時はよく馬鹿やってたよね。その分、怒られたし罰も受けたけど、毎日が楽しかった」


 思い出の数々がシャボン玉のように浮かんでは消えて行く。


「ダリル先生、悲しんでたよ」


 あれから三日が経った。

 コリンはまだ目覚めていないらしい。


「今、ディランと似たようなことしちゃった子がいるんだ。だからディランから言っといてくれないか? まだこっちに来るなってね」


 引率の先生としての役割は終わったけど、短い間とはいえ一度は面倒を見た生徒だ。

 無事に目覚めてほしい。


「お、先客がいる」


 ふと声がしてそちらに目を向けると懐かしい顔を見た。


「ランザ。キミ、ランザか?」


「シンリ! 久しぶりだな、おい!」


 駆け寄って来たランザとがっちりと手を握り合う。

 思いがけない旧友との再会になった。


「卒業式以来? 意外と会わないものだよね、お互いに冒険者やってるのに」


「だよな。知らないうちにニアミスしてるんだろうけど。こうして面と向かって話すのはホントに久々だ。ここが旧友の墓の前じゃなけりゃもっとよかったんだが」


「俺もそう思うよ」


 学生時代、ランザとはよく連んでいた。

 同級生の中じゃ一番くらいに。

 お互いに卒業してから冒険者になってそれっきりだった。

 最近は懐かしい顔によく会える。


「シンリは聞いてるか? なんで死んじまったのか?」


「うん。ドーピングドラッグでしょ」


「まさかあのディランがな。こうなっちまった以上、どうしようもないけど。なにかしてやれなかったのかって思っちまうよな」


「だね。俺もちょうどそんなことを考えてたところ。結局、たらればなんだけどね」


 墓の前に二つの簡素な花束が並ぶ。


「最近、どうだ? 噂で聞いたけどパーティーを抜けたんだって?」


「あぁ、うん。でも、もう新しいパーティーで再始動してるよ」


「順調?」


「いたって順調。メンバーがまだ学生だから気が抜けないけど、楽しくやってるよ」


「そっか」


「そっちは?」


「僕も最近新しいパーティーに入ったんだけど。中々上手くいかなくてな。正直、俺の前任者が滅茶苦茶できる奴でさ。誰も口には出さないけど比べられてるんだ。他にも問題が山積みでへとへとだ」


「そんなに大変なら辞めちゃえば?」


「そうは行かない。一度引き受けた誘いだ。出来る限りのことはしたい」


「ランザってホントに律儀だよね。変わってないようで何より」


 なんだかこの感じ懐かしいな。

 このままずっと話していたいけど、残念ながら時間だ。

 学生の頃、見たいにもっと一日が長ければいいのに。


「もう行くよ」


「ダンジョンか? 戦闘服だもんな」


「そう。あ、そうだ。これ」


 ランザに投げ渡す。


「通信石の欠片か」


「暇な時は連絡して。こっちも暇なら応えるから」


「了解。じゃあな、シンリ」


「また今度」


「死ぬなよ」


「わかってる」


 ディランの墓を後にしてダンジョンへと向かう。

 思わぬ再会に浸るのはここまで、緩んだ気を引き締めないと。

 今日、ダンジョンで死にでもしたらディランとランザに笑われる。


「――で、なんでここにいるんだ?」


 ククとの待ち合わせ場所に着くと、見覚えのある女子生徒がいた。

 つい最近会ったばかりで見間違うはずはない。


「ノア」


「あははー、ちょーっとシンリ先生にお願いごとあるんだよねー」


 ノアは不敵な笑みを浮かべている。


「お願いごとね」


 面倒なことじゃなければいいけど。


よければブックマークと評価をしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ