お覚悟を
久し振り更新です 待っていた人いますか?
ホーンの服装は、胸をはだけた真っ赤なシャツに腰履きのズボン。しかも。ポケットに手を突っ込んでいるのだ。
正直、ダサいです。桜達もドン引きしている。
(服装が平成過ぎないか?)
……もしかして勇者の影響なのか?なんか日本が誤解されて伝わっていないか心配です。
「人間、しかもおっさんじゃん。そんな傷だらけになって、だっさ。早く終わらせてナンパ行きたいんだよね」
気怠そうなあくびをするホーン……魔王軍にいたら、秒で鉄拳制裁していたと思う。
でも、今は分かる。彼は、あれが格好良いと思っているんだ。
「魔力からすると中級魔族……子爵家辺りの縁戚。そこの次男か三男ってとこか。」
理由は簡単。直系の子弟はちゃんとした教育を受けてる。何より貴族はプライドが高い。異世界の人間と召喚契約を結ばないと思う。
「う、うるせえ!血筋がなんだ。男は強けりゃ良いんだよ」
いきりたい気持ちは分かるけど、多分二十歳超えているよね。流石にきついぞ。
「喧嘩の強さを自慢して良いのは、中学生までだぞ。良い仕事紹介してやるから、向こうに帰れ」
まだやり直しがきく年だと思う。肉体労働で汗を流せば、モヤモヤも消えると思う。
「はん!おっさんの説教なんて聞きたくないんだよ……どうせ、俺様に殺されるんだからな」
そう言いうと同時にホーンの爪が伸びた。角姓なのに爪。よく見れば角も短い。
「いきるのも良いけど、相手との実力差が分らねえと……死ぬぞ」
骨喰みを振い、ホーンのロン毛を斬り落とす。流石は中級魔族、髪の毛だけでも充分な魔力だ。
「ま、魔力が吸い取られた!?魔道具並みの武器を持っているなんて、お前は?」
ホーンの顔に焦りの色が浮かぶ。やっぱり、源先生はちゃんとした契約を結んでいなかったんだな。
そして魔道具と気付いたホーン君は偉い。魔王様が誉めてあげます。
(才能ある若者が腐って、不利な契約を結ばされている。向こうに戻ったら法整備をしないとな)
副追さんに頼んで法律家を紹介してもらおう。召喚制度にもクーリングオフを導入するのだ。
「こいつは骨喰み、斬った相手の骨を喰い魔力を吸い上げるのさ。先生が、何回も召喚してくれたから、向こうと繋ぎやすくなったぜ」
骨喰みを地面に突き刺し、溜まった魔力を一気に解放する。
「し、召喚陣が上書きされた?お。お前等、早くそいつを殺せ」
源先生から余裕が消える。でも、もう遅い。
「け、結界?さっきまで普通に攻撃出来たのに?」
サーキャズムの矢が甲高い音を立てながら地面に落ちていく。一時的に人間に戻っていたとは言え、俺は魔王だ。お前等を倒す事は簡単である。
「さーて、来やがれ。バージョ!ブラッド、飛べ」
俺が召喚したのは、ケンタウロスのバージョ。魔王軍陸軍軍団長で、並の魔族では束になっても勝てない。
「王よ、会えて嬉しいですぞ……ジャント様に喧嘩を売るとは、良い度胸だ。ブラッド、避けろ」
バージョは、そう言うと一気に坂を駆けあがっていく。でかい戦斧が煌めく度に、血飛沫が飛ぶ。
「あれだけいた仲間が全滅……嘘だろ」
グリーグは未だに信じられないらしく、口をあんぐりと開けていた。
「ブラッドも全滅させる事は出来たけど、後ろにいる生徒も巻き込んじまうからな。それで……」
唖然としているグリーグ達の脇を駆け抜ける。戦地で油断は命取り。新生魔王軍は、こんな基礎も教えていないのか。
だから、簡単に首を取られるんだ。
「ホーンとグリーグが一太刀で……サーキャズムさん、私を守って下さい」
必死にサーキャズムを探す源先生の前に何かが落ちて来る。それはサーキャズムだった者のなれの果て。
飛んで逃げようとした所をブラッドに捕まったのだ。
「魔王ジャント様に軍団長が二人も揃っているんだ。大隊でも足りねえぞ」
バージョが源先生を睨みつける。蛇に睨まれた蛙状態で、動けなくなる源先生。
(今のうちにサーキャズムの死体をアナライズして……お、あった)
「ブラッド、バージョ。人化の魔法掛けるぞ」
サーキャズムが使っていた人化魔法を二人に掛けておく。この場に吸血鬼とケンタウロスがいたら、大騒ぎになるのです。
◇
……部下だけど、言いたくなる。お前等ずるくないか?
「ここが王の転生した世界ですか?話に聞くと美味い酒が沢山あるとか」
人化したバージョはイケメンなイタリア人って感じだった。こいつ、ザルなんだよな。居酒屋からバーで満足してくれるだろうか?
「主、ナツゾラ様達が来ますぞ。これで主もネングの納め時というやつですな」
ブラッドは美形なドイツ人って感じになっている。何で、俺だけモブ顔なんだよ。
「年貢の納め時……良く、そんな言葉知っていたな……あっ」
フェスティ、また会えて嬉しかったよ……俺、確かに言ったよな。
(どうしよう?いや、夏空さんも何の事か分からない筈)
奇跡的に聞いていなかった可能性もある訳で。
「慈人さん、大丈夫ですか?それと聞きたい事があるんですけど」
なんでしょう?今朝のご飯かな?それとも元カノ事とか。
「ま、まずは山を降りましょう。源先生、死にたくなければついてきて下さい」
だって背後から殺気を感じるんだもん。狙われているのは俺達じゃなく、源先生。
◇
うまく誤魔化せた。そう、思ったんだけどな。
気付いたら、石畳の上にいました。
(そうか。夏空さんも師匠の信者になったんだよな)
それなら召喚出来るよね。
「し、慈人さん、ここはどこなんでしょうか?私達、山にいた筈ですよね?」
俺知っています。ここは女神クレエの神域。上級天使でも、許可なく立ち入れない聖域。
「そこのキングオブへたれ。お前だよ、お前。まさか、ここまでチキンなんて思わなかったわ」
つまり、ここには師匠がいる訳で。そんなでかい溜息を漏らさなくても。
「私、あの方を知っています。遠い日に、お目に掛かった記憶があります」
不味い。神域の影響で、フェスティの記憶が戻りつつある。このままじゃ、夏空さんの脳に負担が掛かってしまう。
「少し昔話をして良いですか?」
覚悟を決める時が来た様です。
遅れた理由は活動報告に書いてます




