表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
37/156

巡り逢えて良かった 2

最終決戦後半になります。どうぞ!

 俺は剣を握りしめエアロードの体から跳躍し一気に近づいていく、エアロードが風の刃を木竜へと向けて放ち、木竜はそれは血の腕で庇きながら飛翔していく。捌きながらの為だろう視界を風の刃が視界を妨害しているせいで俺との距離があいまいになってしまったのだろう。

 俺は剣を木竜の鳩尾目掛けて剣を突き刺し、そのまま連撃へと移行しようとするが、木竜は俺の体は振り落とす。

 エアロードが俺を回収する為に低空飛行へと移行する。それに合わせるように木竜も低空飛行へと移行し、摩天楼の間を行きかう二匹の竜は街中で未だに戦う全て者の視線を釘付けにする。

 エアロードが両腕に風の弾を形成しそれを木竜へと滑空しながら放つ。木竜は血の弾丸で対抗する。空中で衝突する瞬間に衝撃波が周囲のビルの窓を破壊する。それに合わせいて隣のビルからレクターが木竜のこめかみ目掛けて拳を叩き込む。

 あの状態からこめかみを狙えますかあなたは。

 レクターはそのまま反対側のビルまで跳躍しながら一旦距離をとる。

「ずるい!一人だけ竜の体に乗っているなんて!」

「冗談をいう気分に見えるか!?戦闘に集中しろ!あいつの気を逸らすだけでいい」

 低空飛行で竜同士が飛び交うたびにビルディングの窓ガラスを破壊していく。俺はもう一度木竜へと切りかかり、鳩尾へと二連撃ほど決めるが、身体が分厚いからか致命傷にはならない。すれ違い様にレクターが打撃で頭を揺らしてエアロードの体に隠れながらビルディングへと移動する。

 かく乱されている木竜は周囲のビルを破壊する為に血の弾丸を適当に放ち始める。

 レクターと俺は攻撃の軌道に集中し一歩一歩確実に回避するが、全てを回避しきれるはずがない。俺は左腕に、レクターは右足に着弾してしまう。

「まだ戦えるかな少年たち」

 エアロードはどうやら羽や肉体の一部から血が流れており、痛みで表情を歪ませている。

 レクターは「もちろん」っと言ってのけるが、正直に言えば満身創痍もいい所だ。俺も「もちろん」と言いたいが、黙って頷くだけで精一杯だった。

「レクター………一瞬だけでいい……ひるませてくれ」

 レクターは痛みに耐えながら跳躍し、木竜からの鋭い爪の攻撃を捌き、血の弾丸の攻撃に耐えながら鳩尾と顎と胸に十連撃を叩き込み、そのまま落下していく。

 ありがとう……レクター。

「エアロード……一気にあいつを空の上まで連れて行ってくれ!俺事!!」

「フン!いいだろう」

 怯ませたからだろう。動きがあまりよくない木竜の体を掴んでエアロードがそのまま遥か上空へと連れていく。

 体中に木竜からの攻撃を耐えながら上空まで連れていく。酸素が薄れていき、エアロードの体を必死に掴む。

 帝城より遥かに上に上空へと上がっていき、三千メートルまで上昇するがそこで限界が来たようで、エアロードは木竜の視界を一時的に封じるため風の刃を放つ。

 視界が封じられてしまったのだろう、動きが悪くなっていく。

 しかし、適当にでも両腕を振り回し接近しても致命傷を与えられえる気がしない。しかも、俺は左腕にダメージを負っているような状態だ。

 どうすればいいのかと脳神経を摩擦するような一秒が経過したとき、下から木竜の四肢目掛けて光の矢が貫き動きを拘束してしまう。

 エリーが放った魔導機の矢なのだとぐらいは分かるが三千メートル上空に正確に当てる腕前に戦慄を覚えるが、それが無理なのだというぐらいは分かる。

「ああ……そうか。ジュリが補正したのか。俺は……みんなが居たからここにいるんだ。ここまで来れたんだ」

 この力だって皆から貰ったモノだ。俺一人でたどり着けたわけじゃない。そう思った瞬間、俺は最後の手段を思いついた。

 正直に言えば満身創痍の体と体力と集中力でできるかどうか不安しか残らないが、やるしかないし、ここまで来れたんだ。やらずに後悔するよりやって後悔してやる!

「ラウンズ!」

 俺の周囲に三十九のラウンズを呼び出す。ラウンズ全てに緑星剣を持たせる。

 俺一人で戦うんじゃない。皆で、三十九と共に戦うんだ。

「ラウンズ・オブ・コンビネーション!」

 俺の叫び声と同時にラウンズの一体が剣を構えながら突っ込んでいく。木竜はそれを薙ぎ払おうとするが、他のラウンズが攻撃を受け止め、その隙に鳩尾に叩き込む。

 大きく怯み、同時に二体のラウンズが駆け出していき鳩尾に斬りつけていく。

 次々に掛けていくラウンズ………三十九人。

 最後に残ったのは俺以外に二人だけ。

 隆介と堆虎のように思え、二人はほぼ同時に駆け出していき鳩尾を大きく抉る。すると小さくではあるが原初の種が見えた。

 俺は一気に距離を詰めていく、もう地面が見えてきている中、それでも降下スピードを上げていく。緑星剣を原初の種に当てるが、木竜はそれを妨害しようと両腕の光の矢の拘束を強引に解き、緑星剣を握る俺の右腕を掴んで離そうとする。

「離してたまるかぁ!!」

「グギャァァ!!」

 しかし、片手では勝てるはずがなく少しづつ離されていく。

 やっぱりだめなのか。

 諦めそうになった時、俺の右腕を掴む手に温もりを感じて必死に閉じていた目を開く。そこには幻のように儚く、油断すると消えてしまいそうな腕が重なっていた。

 一人じゃないんだ。

 しかし、同時にあの化け物は独りぼっちなんだ。

「ウオオ!!」

 力が籠っていき原初の種を抉るように突き刺さっていく。

 叫び声を上げながら最後の力で突き刺し食い込んでいく姿が見えてくる。

「ナンデ理解デキナイ!?我々ハ………世界ヲ変エル!!タトエドレダケノ犠牲ヲ出ソウトモ!!」

「犠牲だと!?その犠牲だってあんたが苦労もせずに得た犠牲だ!!そんな人間が!!そんな化け物がどの口で犠牲なんて言葉遣うんだ!?」

「バケモノ?」

「そうだろ!お前の姿を見ろ!見てみろ!!お前は人間じゃない。人を人と思わず。命を弄び。犠牲を得ることを当たり前のように認める。それを………化け物っていうんだよ!」

「ワタシ……ハ…バケ………モノ?」

 緑星剣に写る自らの姿を見て、俺の言葉を受けて表情が絶望の表情へと変わっていく。まるで現実を理解したように。

 最後の力を籠めようとするが、地面までもう距離が無い。このまま死ぬかもしれない。そう思った時、俺の体を回収する存在が現れ、咄嗟に後ろを見るとそこにはエアロードが優しく抱きかかえていた。

 そして、もう一度地面を見ると黒い血を地面にまき散らしながら木竜が苦しみ………小さくではあるがもがき苦しんでいる。

 エアロードはゆっくりと降下し、俺を下ろしてくれる。

 胸に突き刺さる剣を優しく触れ、突き刺そうと力を籠める。

「ヤダ………死ニタクナイ」

「どうして………そんな言葉が許されると思うんだ!?あんたは………皆を殺したんだぞ!?三十九人を!父さんの家族を!故郷の人達を!アンタは!アンタの仲間達は!!!」

「ヤダヤダ!!ヤダァァ!!」

「………!?」

 小さくではあるがもがき苦しみ、抵抗にすらならないような抵抗を繰り返す姿はまるで子供のように見えた。一瞬だけ躊躇しそうになる。

「殺してやれ。生きていても苦しむだけだ。自我が少しづつ奪われていき、自分が誰なのか、周りが誰なのかすら分からなくなる。そんな絶望が待っているだけだ。それにこのまま生き続けてもこの世界を滅ぼした後、もう一つの世界へと滅ぼしに行くだけだ」

 それは分かっていた。

 俺は握る剣を片手で深々と突き刺す。

 小さく『ゴリン』という砕ける音が聞こえてきて、同時に木竜の体が光の粒子へと変わっていく、俺の体が落下していき立ち上がることもできないほどに疲弊してしまっている体で夜空を見上げる。

 光の粒子がまるで雪のように降り注ぎ、同時に流星のように見える。

「ああ………約束……果たせなかったな」

 鎧を解除しながらそんな事を呟き、一人涙を流しているとジュリが俺の視界に入っていく。

「終わったね」

 ジュリもまた涙を流しそうになりながら俺の体を起こしていく。ジュリに支えられながら降り注ぐ光の雪がまるで崩壊しかけている東区を幻想的に見せている。

 少しづつではあるが一人で立てるようになると俺はジュリと手を繋いだ状態に変わっていく。

 ジュリを見ながら綺麗だと思え、今までにない胸の高鳴りを感じてしまう。

 幻想的な風景がそう見せるのかもしれない。そう思った時この光景と共に俺は三年前の林間学校で見た堆虎との風景を思い出す。

 ああ、そうか。俺………堆虎とジュリの事が好きなんだ。

 なんて単純なのだろう。

 三年前のあの日、堆虎の横顔を見たとき俺はとっくに好きになっていたんだ。

 そして、ジュリにも………今日この日、俺は好きになってしまった。

 告白してもいいのかな?

 罪悪感と戦っていると後ろからエアロードがまるで独り言のようにつぶやく。

「罪悪感は自らの心が生み出す牢獄だ。他人の意見を勝手に解釈することは悪だ。その者が何を想い何を感じているのかを勝手に想像し、押し付けることはあってはならない。大切なのは自分が他人の想いを受け取り、どうするのかだ」

 その視線は俺の方をじっと見つめている。

 そうだな。俺はずっと勝手に意見を押し付けてきたのか。

 謝る事より。皆で労をねぎらう事よりするべきことを見つけ出した。

「ジュリ………こんな時でごめん」

 ジュリの方に向き合いながら、きちんと目を見て、ジュリもまた真剣な面持ちで、まるで何を言われるのかをなんとなく理解できているかのように。

「君が好きだ。俺と一生を共に過ごしてくれないか?この世界で、俺と一緒に」

「いいの?私で。この世界で。ここはあなたの世界じゃないんだよ?酷い世界なんだよ。それでも………いいの」

 複雑な表情だ。

 嬉しい気持ちとそれでいいのか分からないような感情が複雑に絡み合い、複雑な表情を作り出す。

 俺はうれし涙を流すジュリの頬を優しく撫でる。

「いいんだよ。俺はこの世界を愛してる。父さんが居て、レクターが居て、エリーが居て、レイハイムが居て、ジュリが居る。確かにこの世界は酷いのかもしれない。でも、そんなのきっとすべての世界で同じなんだよ。不条理で理不尽なのが世界ならそれは認めながら歩いていくしかないんだ。俺は皆と逢えて………巡り逢えて良かった。だって、俺は堆虎の事を好きだったんだって気づけて、君が好きなんだって知ることが出来たんだ」

「私も………好き。ずっと……好きだよ」

「こんなに待たせてゴメンな」

「ううん。いい。この気持ちだけで十分だから」

 俺はジュリを抱きしめる。

 温もりを体中で感じ取り不条理で理不尽な世界を体中で受け止める。



 みんなと出会えて本当に良かった。


どうでしたか?ガイノスエンパイア編最終話まであと少し頑張ります。あと少しで追いつきます!追いついて以降はでき次第掲載します。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ