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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
155/156

辿り着いた未来 20

中編となります。

 東区の繁華街はアメリカのニューヨークにあるマンハッタンのタイムズスクエアを連想させつ造りをしており、液晶パネルには様々な告知が映っている。

 その中に一風変わった建物がある。

 確かに建物が面白いというのも分かる。

 なんというか、虹色で彩られているだけで面白いのに、建物がそれこそピカソ風になっている。なんだこれ?

 上の方とかどういう作り方をすればあんな風に作れるんだ?

「個々の事か?」

「だね。エリーちゃんも面白かったって」

 二人で出入り口に入ると、中も何というか……濃いの一言である。

 色とりどりの色合いとは言うが、その全てが厚塗りしてあるかのように、且つ濃いめの色が使用されている。

 禍々しい色合いである。

 邪悪の一言なのだが、これ以外とカップルが多いうえ、その上俺の二個前に見慣れたカップルがいるような気がする。

 なんというか、奈美と海に見えてならない。

「あれって奈美ちゃんと海君じゃない?」

「見えるな。気にしなくていいんじゃないか?別段一緒にまわる必要があるとは思えないし」

 というか嫌だ。今はジュリと二人っきりの時間。その時間を邪魔されたくない。

 という訳で俺達は少し遅れて進むことにした。

 階段で二階に上がると、絵画がアトラクション形式で体験できるようになっている。

「もしかしてそれぞれのフロアでこんな形で進むわけ?」

「そうだね。全五フロアでテーマごとのアトラクションのような形で進んで行く形みたい」

 手に取ったパンフレットを視線を落としながら説明していく。

 俺も覗き込むと確かにそんな形で進んで行くようだが、服が汚れたりするようなアトラクションは存在しないらしい。

「実際に書いたりというのも無いのか?」

「直接というのは無いみたいだね。その代り体を使ったアトラクションや最新技術を使った絵画アートを即席で作る様なのがあるみたい。ここは………ブロックを使って様々な形に組み立てるんだって」

「みたいだな。さっきから奥の方から奈美の大きな声が聞えてくる」

 さっきからやりこんでいるような声が聞えてきて、身内だと知られると一生の恥になりそうなので一切無視である。

 ここで少し休憩して、奈美達が一個上のフロアに移動したのを確認した後に俺達もブロックのフロアに辿り着く。

 壁にはブロックを意識した絵画が飾られており、俺達はそれを見ながら道のり順に進んで行き、最奥で大きく開けた場所に辿り着いた。

 様々な色と形をしたブロックがその場に積み重なっており、その中でも奈美の傑作と思われる芸術がそこにはあった。

「これって………奈美ちゃん?」

「だろうな。さっきの声と言い。あいつ変な所でこだわるからな。しかも芸術肌だし、あいつ基本的に剣道をしているのがおかしいぐらい芸術方面に秀でているから。あいつが認識すればそれこそその分野で金を稼げると思うよ」

 そういう意味では両親の進学先の勧めは決して間違っていない。

「まあ見れば分かるけ………すごい男の子感があるんだけど」

 目の前のブロックを積みあがって完成された傑作。

 中国文化に登場する神龍を連想させる姿をしており、部屋中を一周する形で完成されている。

 もう………弄る気すら起きないその芸術を前に多くの人がため息を吐き出している。

 しかし、それでもブロックはかなりの数が残っているようで、残りのブロックで遊んでいる者もちらほらと見受けられる。

 取り敢えず奈美の傑作を写真に収めて置き、適当にブロックを積み上げて遊んでみるが俺は芸術方面が疎いので棒人間しか作れない。

「棒人間をブロックで作る人初めて見たけど?」

「苦手なんだよ。芸術ってよく分からないし」

 そっち方面に疎い人生なので。

 これからも足を踏み込むつもりは一切ない。

「なんか………あの神龍を見るとどうでも良くなるよな」

 あの芸術品を目の前にすると何を作っても楽しく無くなる。

 今は単純に奈美達と距離を開けたいがための行動なのであまり意味は無い。

 ジュリも芸術方面は別段特化しているわけでも無く、しいて言うなら並より上ぐらい。

 なので別に得意にしているわけじゃない。

 俺達はそのまま道のり順に進んで行くが、全てのフロアで必ず奈美が芸術品を残すので作品作りがはかどらない。

 まったく楽しくないわけじゃないし、フロアによっては体を使うようなパターンもあるので楽しいといえば楽しいのだが、あの妹は全てにおいて人のやる気をそぎ落としていった。

 奈美達にばれないように建物から出る事には成功したが、なんというか……奈美達が居ない時に来たかった場所である。

「さて……どうするか。灯篭流しは夜中の9時だし………まだ十四時だから大分時間があるしな………ジュリは行きたいところある?」

「う~ん」

 顎下に指を置いて思考し続けるジュリ。

「東区は基本的にビジネス街だし………面白い建物っていえば」

 どうも行く先の候補が『面白い場所』でくくられているようだ。

「この先を北に進んだ場所に昔からある『アーレンジューン』があるよ」

 はて?聞いた事の無い名前であるが。

「行けば分かるけど……多分ソラ君に合うと思うよ」

「それって体を使ったアトラクションって事?」

「う~ん。アトラクションじゃないかな。体を多少は使う事が多いけど。それだけじゃないけど。まあ行けば分かるよ」

 というのでジュリの道案内に従って進むことにした。


 見たことがあるのか、無いのかと言えば全くないというしかないし、しかしジュリがどうして俺に合うと言ったのかよく分かる外装をしている。

 近代的な造りをしている東区の中に、古ぼけた中世のお城をイメージした建物がそのまま作られている。

「何?これ」

「昔の帝城を守る為に造られた要塞。新市街地は昔は平原だったから外に侵略者用の建物を作ったの。これはその名残。それを改装したのがこの建物なの」

 ジュリ曰く名前の『アーレンジューン』は要塞の名前らしい。

 中は侵略者から帝国を守る昔の時代をイメージしたゲームがあるらしいが、基本は千年以上昔の時代を勉強できる建物らしい。

 実際建物の中には当時の兵士が来ていた簡易な鎧が時代によって飾られており、武器も時代によって進化していくのが見てわかる。

「帝国建国時代から鎧ってあったんだな」

 なんだろう。鎧って中世時代ってイメージがある。

「そうだね。と言っても帝国建国時代はまだ皮の上から鉄製の防具を付けただけのものだけどね。当時は鉄は貴重品だったから」

「完全鉄製になったのは千二百年前からか。それ以降は完全に鉄製?」

「いや、八百年前から二百年前は魔導機を取り入れる為に特殊合金が使われたはずだよ。ほら、これがそう」

 ジュリが指さされた所には金色に近いようなブロンズ色の部分があるのが見て取れる。

「最近は防弾ジョッキのように一般的な軍服の上から着込めるタイプのものが主流だね。まあ、今でも鎧を着ない人がいないわけじゃないけど」

「だな。見たことあるし」

「帝国でもジャッジ級と呼ばれる人たちなんかは鎧を着ているしな」

「あれは威厳を保つためだね。あの人たちは帝国内でも特別な仕事に付いているから」

 確かに前にあった時もそんな話だったはずだ。

 娯楽都市内で起きた事件を解決したが、あれもある商会が周辺の鉱山で不正行為を行っているという事で取り締まりをしていたという話だった。

「ジュリはいなかったよな?」

「うん。そうだね。ソラ君だけじゃない。私達も基本的には全く関わらなかったし」

「と言ってもな。最後に手伝いをしただけだぞ。あれはあそこのスラム街の人達が解決したわけだし。まあ、奴隷商人というだけで最低だと思うけどさ」

 腕時計を確認すると意外と時間を食っていたようで、時刻は夕方の六時を迎えていた。

「そろそろ夕食を食べつつ、北区に移動しようか」

「そうだね。夕食はソラ君に任せていいの?」

「ああ、いい場所予約しておいた」

 そろそろ向かわなくては予約の時間に間に合わなくなる。


次が『ワールド・ライン【呪詛の鐘の章】』の最終話となります。では二時間後に!

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