辿り着いた未来 19
最終話は前中後編構成となります。話はほぼ全部がジュリとのデート話です。では前編です!
七夏祭最終日。
観光客の中には今日にでも変える者が多い日、帝都民としては明日から始まる平日に憂鬱さを感じ、俺は今から始まるデートを前に心高鳴らせる。
帝城前広場でジュリと待ち合わせし、今日は一日邪魔が入らないように配慮している。
俺が青色のTシャツに簡単な上着とジーンズ、スニーカーを履いているのだがはき心地がイマイチに感じてしまう。
後ろに2WAYバックを背中に背負い、腕時計で時刻を確認。
メインストリートの方からトラムから降りて俺を発見するジュリ、俺の方から近づいていき、ちょうど噴水前で合流する。
「ごめん待った?」
俺はジュリの頭から足先までじっくり拝見。
青の薄い感じのシャツだろうか、その上から厚手の上着を着ていて、スカートは少しだけ長めの水色、普段履かないハイヒール。
そう問う気合の入った格好である。
「似合わない?結構悩んだんだけど」
「いや、似合っている。ただ………気合が入っているなって」
ジュリは俺の言葉を受けて頬を赤らめ、両手をもじもじさせながら「だって……デートだし」と俺にだけ聞こえるような声で呟く。
そんなことを言われると俺も恥ずかしくなってしまう。
「そ、それじゃ行こうか」
「そ、そうだな。取り敢えず南区の新市街地にある新緑園に行こう」
トラムに乗って南区中央駅へと向かい、そこで新市街地にある地下鉄に乗り換えて南区の新緑園に最も近い駅で降りる。
新市街地のビルの密集するオフィス街から少し離れた場所、ガイノス帝国立新緑園と大々的に書かれた看板。
外からでも見える新緑園の木々の緑色、中に入る為に受付でチケットを二人分購入し、俺達はそのまま中へと入っていく。
木々で涼しげな影が出来ており、その中の一本の道を進む。
「新緑園って始めてきたけど、静かで落ち着くな」
「この辺は近所の人の散歩コースだから、平日は休憩がてら来る人も多いらしいよ。そうだ、この奥に休憩所があってそこのアイスクリームが美味しいって聞いたことある」
「じゃあ、そこでアイスクリームを買って適当な場所で食べようか」
ジュリは微笑みながら「そうだね」と俺の手を強く引っ張る。
俺はそのままジュリに引っ張られながら進んでいると、ジュリは慣れないハイヒールで転びそうになり、俺は急いでジュリを抱っこして受け止める。
「大丈夫?走らなくてもアイスクリームは無くならないよ」
「あ、ありがとう」
俺はジュリが走り出さないように右手を強く握りしめ、歩きながら近くの休憩所へ向かう。
木造で作られた小屋、木造の看板や木で出来た椅子やテーブルなんかが雰囲気を醸し出し、木々で囲まれた小屋という事もあり落ち着いた感じがする。
そこそこ人が多く、俺達は休憩所の中へと入り、俺はバニラ味、ジュリはストロベリー味を注文しそのまま一旦草原フロアまで移動する。
草原フロアではヌートリアなど動物と戯れる家族や、俺達のようにデートで訪れている者達まで様々。
俺達は近くの小さな丘の上で腰を下ろし、アイスクリームを食べ始める。
「アイスクリームって久しぶりだな。帝都の夏って熱くならないかな、あまり食べる機会がないし」
「分かるな。でも、今日は少し暑めかな。実際半袖の人が今日は多く見かける」
「だな。この調子だとたこ焼きの売り上げ。予想より少し下がるかもな」
「大丈夫だって言ってたよ。多少下がっても一位の座は変わらないって。レクター君たちも今日の出し物で頑張ってくれてるらしいし。それ以外にも魔動機の勉強会みたいなこともやってるよ」
売り上げトップを目指すためにプライドを捨てている気がする。
まあ、元々父さん達が勝手に始めた勝負、俺には全く関係ない。名前だけの責任者、責任何て果たすつもり何てはなっから存在しない。
「ストロベリーおいしそうだな」
「食べる?はいどうぞ」
ジュリが俺の口元までアイスを持ってくるので、俺は一口だけもらいお返しとばかりにジュリにバニラ味のアイスを食べさせる。
「意外とストロベリー美味しいな。そっち選べばよかったな」
「バニラも美味しいよ」
二人でゆっくりする事一時間ほどで新緑園の奥へと更に足を進めていき、一周する頃にはお昼を迎えていた。
「そろそろお昼だけど………近くのカフェでいいか?」
「そうだね。さっきアイスクリームを食べちゃったし、少し早めのお昼を軽くとって夕食を少しだけ豪華にいこうか」
「それいいな。だったらここに来る途中で見かけたカフェに行こうか」
外の席に腰掛け、俺はサンドイッチのランチセットでドリンクはアイスコーヒー、ジュリはナポリタンスパゲッティーとアイスコーヒーを注文。
注文した品が届くまで、俺はタブレットで売上勝負の勝敗の行く末を確認。
「取り敢えず売上勝負は俺達の勝ちで終りそうだな」
「そうだね。ガーランドさん達の売り上げがランキングが三位だったのはご破算だったのはこっちには嬉しい誤算だったね」
「だったら俺達が昨日あんな試合しないで済んだのに」
「言わない。もう終わったことでしょ?」
「そうだけどさぁ。あんな負け方までして……納得なんて出来ないぞ」
不満を顔全体に現し、ジュリは「もう」と言いながら微笑むだけ。
あの試合の影で賭け事が行われたらしいと聞いている。
俺だってあんな試合をしたうえ、賭け事の対象にまでなったと聞くとテンションなんて下がるだけだ。
「しっかし、試合後のレクターの態度を見る限り体力が有り余っているらしいな」
「そうだね。試合後にはしゃぎまわっていたし。多分、体力配分をきちんとしたうえで戦っていたんだと思うよ」
俺に無いのは体力配分という事か。
クソ。『竜の欠片』を最大まで扱う事が出来れば負けないのに。
「今『竜の欠片を最大まで扱う事が出来れば負けないに』って思っているでしょ」
「何のことかわかりませんね」
「もう………分かるんだからね。顔に書いてあるよ」
「なんてことだ。どこかに油性ペンで書いてあるのか?それとも……書かれた?」
「そんな事しません」
まあ、冗談だけど。
しかし、実際の所で俺としてはあの試合はしなくて済んだのなら俺としてはしたくなかったというのは本心の一部である。
「でも、去年できなかった試合が出来たでしょ?」
「それな。あの時はそう思ったけど。よく考えれば今年の聖竜誕生祭で戦う可能性が高いんだから……」
「三年生相手に決勝まで行けると?」
「うっ!それは………まあ、難しいけど」
水を飲みながら誤魔化す。
レクターならともかく俺は少し難しい所はある。
「まあ、今年の聖竜誕生祭まで努力を重ねるしかないよな……」
聖竜誕生祭……か、特に毎年何もないけど。今年は何か起きそうな気がするんだよな。
まあ、杞憂で終れば一番だけどさ。
「ご注文の品をお持ちいたしました」
店員さんがお互いに注文した品をお互いの前に並べ終わり、俺達はコーヒーで乾杯する。
「そういえば。東区に面白い建物があるって聞いたの」
「面白い?楽しいではなく?」
「うん面白い建物があるって聞いた」
「面白いって建物が?それとの中でやっている催し物が?」
「えっと………両方って聞いたよ」
どんな建物なんだろう。疑いたくないが誰情報なのかを探っておくか。
「それって誰から聞いた?」
「えっと………エリーちゃん別の学科の友達と一緒に行ったんだって。結構面白くて楽しかったって。ちなみにエリーちゃんはレクター君から聞いたらしいけど」
やっぱりあいつが情報源だったか。
こういう変わった情報が俺の元までたどり着く時は大体あいつが絡んでくる。
「まあ、エリーが下見をしたんなら別にいいか……」
俺はセットメニューのサラダを口に放り込む。
感想は後編の時に、次は二時間後に中編を!




