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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
115/156

ワールド・ポイント 6

いよいよ最終決戦へと向かう前の話になります。

 意識が醒めると視界の先にホテルの天井が見えてきて、高級ホテルだけあってベットの感触もフカフカでもう少し見ていたいという気持ちが生まれてくる。

 たかが一時間ほどの眠りだったとはいえ随分深い眠りで、多少の疲れが取れたような気がする。

 勿論それでも疲れが全くないわけでは無く、正直油断していたらまた眠りそうになる。

 しかし、今の現状を想えばすぐにでも動かなければならない。

 ベットから這い出てそのまま部屋のドアをゆっくり開けてエレベーターまで辿り着くと、下のボタンを押してそのままエレベーターの壁に背を持たれる。

 大きく息を吐き出し全身の疲れや痛みがジワリジワリ襲い掛かってきて、眠気が意識を刈り取ろうと襲い掛かってくる。

 心の中で「急いで下に降りてくれ」と願いながらひたすら体力の回復に努めていると、到着の際に生じる音と同時にホテル一階のロビーが目の前に姿を現し、俺は足を引きずりながら降りていく。

 まだ体力は回復していないが、それでも急いでみんながいると思う食堂へと急ぐと、食堂とは無縁の通信機器やモニターで埋め尽くされた部屋が目に入った。

 全員が視線をおれの方に向けると、先に目を覚ましたエアロードとシャドウバイヤがみんなと何かを話している。

「やはり目を覚ましたのか。詳しい話はまだ聞いていない。お前の口から聞いてもいいか?」

 父さんがそう言ってくることを俺はある程度予想していたので、先ほど聖竜達から聞いた話を父さん達は最初こそ混乱しているようであった。

「聖竜は俺達が東京につくタイミングで竜達にゲートを作るように告げるらしい。それと同時に向こう側からこちら側に戦力をつぎ込み、イリーナの歌声と同時に音竜を目覚めさせ、今回の混乱を収束させる。それからは皇帝陛下と天皇陛下を中心に日本とガイノス帝国が条約を組む形で周辺国に混乱の収束を訴えるのが目的らしい」

「そうか……それで皇帝陛下がいらっしゃっているのか。しかし、国会議事堂が爆撃されたという事は………総理大臣も」

「それについてなんだけど………これについては多分としか言えないけど………三年前のあの事件まで総理大臣をしていた人が皇居一帯にいると思う」

「ソラ。その根拠は何だ?お前がそこまで言う理由は?」

「皇帝陛下や天皇陛下だけでは条約は結べないだろうし、ならその話し合いを代理で出来る人間、最高議長と総理大臣がその場にいると思う。それなんだけど……これは朝比姉がこっそり教えてくれたんだ。当時の内閣メンバーが行方が分からなくなっているって」

「なるほど。皇居に閉じ込められているという事か……確かに、一部の屋敷は天皇陛下の護衛という名目で人員を割くことが出来るし、当時の計画を知る人間を閉じ込めたいと考えれば行方不明もよく分かる」

「下手に捕まえれば変な事を記者に告げられても困るし、『呪詛の鐘』が紛失している前後の話だからな。面倒は隔離しておきたいはずだ。それに、情報部が調べている内容では、その時期は天皇陛下も『呪詛の鐘』について話し合いを消耗していたらしいし、多分まとめて隔離したんだろうな。ガーランド、これでも不満があるか?」

「しかし、皇居一帯に連絡が取れないのだぞ?どうする?それにその話をすれば皇居は敵の手中ではないか?」

「ガーランド大将。それなのですが、先ほど連絡が入り、サクト大将率いる部隊が皇居一帯の占拠に成功したらしく、現在は結界の中で立てこもっているようです。一部市民も中に避難しています」

 ゲート越しに映像が回されると、皇居の中で多くの避難民が集まっている姿と、ガイノス帝国親衛隊を含めた主力部隊が展開している。

 そんな中に見慣れない鎧姿の男性が二人ほど歩き回っている。

 そんな姿を見たレクターは「ソラが分身した?」と真顔で尋ねてくる。

「知っていたか?俺は今ツッコミをする元気が無いんだが?」

「あれは法務省の執行官の『ジャッジ級』の人達だよ」

 俺も学校で習ったことがあるが、こうしてみるのは初めてだ。

 鉄製の鎧を着ており、俺の星屑の鎧同様にマスクを着けているが、デザインは実在の動物をモチーフにしていると聞いたことがある。

 目の前にいるのは羊とトカゲだろうか?

「ジャッジ級が来ているのか?随分上は警戒を挙げているんだな」

 ガーランドが感心半分、鬱陶しさ半分という声を挙げると父さんはそれに同意するように頷く。

 俺はジュリの耳元で小さな声で「厄介な人たちなのか?」と尋ねる。

「う~ん。法律の管理職で彼らの行動は法律で制限できないの。ある程度の環境下では彼らある程度の自由が保障されているの。実力は折り紙付きだよ。一人で師団に匹敵するとすら言われているの。まあ、噂だとは思うけどね」

 そう言われてみると映像越しにでも強そうに見える。

 父さん達軍人とは違って自由度の強い職種だからだろうな、強いという点では同じなのだろうが、法律を使って他者を捌くという点が相容れないのかもしれない。

 法律や人を守る軍人と、法律を使って他者を捌く執行官。

 似ているようで少し違いがある。

「しかし、ジャッジ級が来ているとなると上は本気だな。すぐに移動した方が良いだろう。ガーランド異論はあるか?」

「無い。一時間後に移動するとして……作戦を立てる必要があるな………何か作戦はあるか?」

 父さん達がこそこそと軍メンバーと話し合いをしていると、後ろの扉からイリーナとヴァースの両名が入って来た。

 確か両方とも病院にいるはずではと思ったが、どうやら軍人に連れられてやって来たらしい。

「それについては提案があるのですが?」

 イリーナの言葉にガーランドが渋顔を作るが、アベルが一歩前に出て「提案とは?」と尋ねた。

「小野美里駅には新幹線の路線があります。新幹線の路線は行き場として最終的に東京に向いているはずです。これで一気に行けるはずです」

「なるほど。クレーン車を使って列車を用意させよう。新幹線とは分からんが軍用の高速列車を十両編成用意させ、合計三十両を用意させよう。ウルズナイトを中心に編成を組む。ガーランド」

「うむ。クレーン車を使って高速列車を用意させ、準備ができた列車から移動を開始する。問題は現在も列車が動いているかどうかだが」

「問題ありません。ほんの三十分前に新幹線は全て車庫に入ったようですね。恐らく周辺一帯で起きた事件に影響されたようです」

 これで戦いへ向けて作戦が決まった。


 小野美里駅では新幹線の線路に順次高速軍用列車を用意させており、中にはウルズナイトや戦車を多数準備させ、先に軍関係者が最初の列車に、二つ目に士官学生が乗り込み、最後の列車は協力者たちが乗り込む手はずを整えた。

 分け合ってイリーナは俺と同じ列車に乗ってもらうとして、逮捕されることが決定されているアラウ以外、ヴァースとベースも同じ車両に乗り込む。

 二台目列車と三台目の列車の準備が始まり、作業員が素早く仕事を終えていくと、周辺の人々は何事かと心配そうな面持ちで見守っている。

 いや、皆分かっているのだろう。東京一帯や周辺国一体で起きている騒ぎや悲劇をこれから沈めに行くのだと。

 俺が列車に乗る前、まだ列車が接続作業中なのでホームのベンチで休んでいると「お兄ちゃん!」という奈美の声を聴いた。

 振り返り、奈美の姿を確認すると奈美は急いで駆け付けてくる。

「どうしても……行くの?」

「ああ、俺にしかできないことだし………俺の役目だしな」

「………」

 何か言いたげにしている奈美の頭に手を置くため一度立ち上がり、頭を優しく撫でると奈美は涙目でこちらを見てくる。

「帰ってくるさ。だから……海や万理を頼むぞ。今、二人の側にいてやれるのはお前だけだ。そしたら……皆でまた笑い合えるさ」

「ほんと!?約束だよ!海や万理お姉ちゃんと仲直りしてね!」

 俺は黙って頷くと「準備できました」という作業員の指示に従って列車に入っていく。

 イリーナも奈美と会話をした後列車の中に入り込み、レクターやジュリ、キャシー達乗り込み、最後にマリアや朝比姉も乗り込むと俺達を載せた列車はゆっくりと速度を上げながら東京へと向かって行く。


どうだったでしょうか?今回は最終決戦に向かう前の話となります。次は列車の中での話になると思います。いよいよクライマックスが近づいてきています。では!次回!

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