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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
113/156

ワールド・ポイント 4

続きです。

 以下聖竜の回想。

 三十九人はこの世界の終焉が既に始まっている事、それが自分達の転移の後に起きたバス事件現場で起きた悲劇と、管理の甘さが生じた『呪詛の鐘』の紛失と、そこから起きる『王島聡』の憎悪の正体を直ぐに知った。

 『王島聡』の憎悪を何とかする術を自分達は持たないというのが三十九人の生じた結論で、同時に『王島聡』を止めることが出来る人間は『ソラ・ウルベクト』事『袴着空』だという結論が出た。

 しかし、ソラが止めるためには自分達が邪魔になるというのも嫌な結論が出るのに時間が掛かった。

 何故なら、自分達が生き残ればソラが死に、ソラが生き残れば自分達が死ぬのが『クーデター事件』で、お互いが生き残れば『王島聡の事件』を止めることが出来ない。

 王島聡の『呪詛の鐘』に対して自分達はあまりにも無防備で、ソラの邪魔にしかならない。やはりこの時もソラが生き残れば自分達が死に、自分達が死ねばソラが死ぬ。

 そして、ソラが死ぬ場合は『呪詛の鐘』を防ぐ手立てが事実上なくなるという意味でもある。

 何故なら、『呪詛の鐘』に真正面から対抗できるのは『竜の欠片』の真の継承者である『ソラ・ウルベクト』のみ。

 『異能』に対して大きな耐性を持ち、真正面から対抗できるほどの力を持つのはソラのみ。

 しかし、ソラ一人では対抗できない。

 そう、足りないんだ。

 世界中を巻き込むほどの大きな騒動を阻止するには『一人』では足りない。

 そう考えた三十九人はある思考に至った。それは私にも想像できなかった結論だった。

 予知能力と言っても一つ一つの未来を自分の思考能力を駆使して想像し、それによる因果律を併用した演算能力でもある。思いつかなければ未来なんて見えない。

 彼らが見つけ出した未来、それは―――――、


『西暦世界の騒動に皇光歴世界の戦力をぶつけることで鎮圧させる』


 実にシンプルな考え方だった。

 しかし、それには世界を動かす為の理由という名の口実が足りん。

 いくらもう一つの世界のためとはいえ『皇光歴』の世界の人間にとっては無関係な世界の事、賛同できるわけが無い。

 世界を動かすことが出来るとすればそれは『ガイノス帝国』のみ、ガイノス帝国は『皇光歴』の名を世界に与えるほどの勢力。世界の中心国家が頭を下げてお願いすれば他の国とて動く気にはなるだろう。

 その為に皇帝陛下を動かすのが一番簡単、だから彼らは『死』という衝撃を与えることでこのガイノス帝国という国を動かした。

 しかし、これでもまだ足りない。

 人間を移動させるためには世界中に『ゲート』を開く必要がある。

 それを可能にするのは『ソラ・ウルベクト』がこの世界に歩く三年間で積み上げていくことでもある。

 お前は竜と共にこの三年間を歩いたはずだ。

 様々な竜と出会い、様々な竜の手を借り、様々な竜の助けになった。

 エアロードと機竜を中心に全部の竜が『竜人戦争』を終わらせるために立ち上がろうとしているんだ。

 呼びかけに全ての竜が答えてくれた。

 竜の殆どは君が困っているのなら助けたいと言ってくれたぞ。勿論他の竜としては他が参加するからと言って理由もいたがな。それでも、君の噂は他の竜達にも届いていた。

 そして―――――こうしてここに集まる事が出来た。


 死ぬことでガイノス帝国を動かし、俺は三年間の経験で竜を動かす。

 そうして皇光歴の世界の全てで事態を収束させる。

 勿論それだけで死んだ人が生き返るわけでも無い、混乱した社会が元の状態に戻るわけでもない。

 それでも、ここで阻止すれば最悪の事態を阻止することは出来るはずだ。

 復興には時間が掛かるだろう。

 多くの人は難民として多くの土地を歩き生きる場所を探すだろう。

 国が元通りになるには時間が掛かるだろう。しかし、一人でも多くの人を救う事が出来ればまだ助かるはずだ。

 堆虎達もそれを望んで死んだのだ。

 俺に託し、俺に希望を残し、多くの人に「救ってください」と願いながら。

 それは誰にも出来る事ではなく、とても勇気のいる、それで信頼のある行動である。

 託された者は、信頼された者はその想いを胸に抱きながら突き進むだけだ。

 多くの竜がこうして俺の周りを取り囲むようにこの場所に姿を現し、堆虎達も記憶だけの存在だが俺に向かって微笑んでくれる。

「さて………問題はこの事態をどうやって収束すればいいのかだが……問題はやはり『呪詛の鐘』の存在だ。ここでお前が『呪詛の鐘』に不用意に触れれば呪詛の鐘が粉砕して音竜を復活させることは叶わん」

「無理に復活させる必要あるのか?」

 エアロードがふいに聖竜にそう尋ねると聖竜は「勿論だ」と即座に反論した。

「『呪詛の鐘』をそのまま使うにはデメリットが大きすぎる。イリーナとヒーリングベルが揃えば事態の収束を迎えることが出来る。問題はどうやって音源を世界中に届けるかだが……」

「待て聖竜。そもそもヒーリングベルが協力するという保証がどこにある」

「シャドウバイヤ。お前はヒーリングベルが協力しないという理由の方を捜す方が難しかろう。そもそも、呪術の存在に否定的な奴だからな。言わずとも協力すると思うが?」

「でしょうね。昔話していたままなら本人は直ぐに協力するでしょう。それも、ソラが触れなければという前提条件でありますが」

 機竜は大きな体ごと視線を俺の方に向けてくる。

 間違えて触れそうな気配がするのは俺の気のせいではないだろう。

「間違えても触れるんじゃないぞ。エアロードとシャドウバイヤは木竜と直接構えることになるな。勿論ソラは王島聡を阻止するのがお前の戦う目的になる」

「なあ………聖竜。王島聡ってなんでこんなことをしたんだ?」

「妹が亡くなった事が切っ掛けだったようだ。親戚の手によってある意味殺され、金を巡って殺された。勿論家族関係も決して良くはなく、彼はある意味この社会が生んだ被害者なのかもしれないな。この世界はある意味歪にできている。法律やルールを重んじる一方でその法律とルールが人を傷つけているのも事実だ」

「皇光歴の世界とて同じだ。お前の生活をこの三年間ほど見ていたが、人間の作る法律やルールだけでは命を守る事は出来ない。人間が作るルールだ、人間の手で抜け道を作ることもできる」

 エアロードの言う事も分からないでもない。

 所詮は人間が作るモノだ。人間の手で抜け道を作る。そう言う意味では完全な公平な世界なんて言うのは作れないのだろう。

 同じ過ちを何度も何度も繰り返し、失敗してはもう一度トライし、そうやって失敗を繰り返しながら人は正解への道を目指すのだろう。

 始めっから正解への道を探すのではなく探り探りで進んで行くしかない。

 三十九人も探り探り未来を探し出し、その道を俺に託してくれた。


 きっと「ソラなら何とかしてくれる」と信じて。


「過程が大事なんだよな?未来を捜す過程が。人類はそうやって何度も過ちを繰り返しながら一つ一つハードルを越えてきた。横着すればどんな正解も間違いになる。正解を捜すという事は間違いを繰り返すという事なんだよな。昔の人は間違いを犯してもいいからと前に進んだんだろうし。そういう意味では未来を捜すという事は『勇気』を振り絞るという意味なのかもしれないな」

 過去の偉人は失敗のリスクを背負いながら偉業を成し遂げたんだ。


「俺も勇気を振り絞ってみよう。失敗しても生きている限り何度も挑戦するよ。それが託された者なすべきことなんだと思う」

 聖竜は、竜達は微笑む。


「ソラ・ウルベクトは世界に生きる人を少しでも多く救いたい」


 堆虎達の願いを背負い、海や万理たちのように巻き込まれた者の為に剣を握りしめ、今苦しむ人たちが少しでも未来を見れるように戦おう。

 空のような青色と風のような緑色、飲み込むような黒の色合いで星屑の鎧が変わっていく。

 マントのデザインは三十九の星々と一本の剣。

 腰には今までなかった鞘が姿を現し、鞘には緑星剣が姿を現す。


「俺は戦うよ。これまでと同じように守る為に戦うよ。未来に辿り着くために」

 

どうでしたか?今回はソラが真実を知るという一点にあります。三十九人が死んだ理由とその先にある三十九人の覚悟、ソラ自身がそれを知ることで覚悟を決めて戦いに向かう展開です。同時に竜の欠片もまた強くなりましたね。次回はソラ達が東京に向かう展開になると思います。では!次回!お会いしましょう!

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