ワールド・ポイント 3
今回はソラサイドのお話となります。空と竜達の会話のみとなります。
自分のいるこの場所を夢なのではと思うぐらい綺麗な場所で、正直に言えば少しの間見惚れていた。
この一面が水面で出来ており、雲一つない青空をこの水面は綺麗に移している。
どこまでもが水平線で俺と青空以外の全てを拒絶しているような気さえしていると、正面から水面が人の形をとるようになり、それが三十九に分かれえ合われると俺はそれが元クラスメイトだと直ぐに判断できた。
堆虎を始めとする三十九人が目の前に現れ、同時に俺の後ろにエアロードとシャドウバイヤが姿を現しこちらを見てくる。
「ここは世界の起点。様々な名前を持つ場所だ。この水は記憶の水、お前の記憶の中にある一番強い記憶などに反応して形作る」
「どうしてここに?」
「お前に呼ばれたのだ。エアロードも他の竜達もな」
空から現れ、自ら浮かび上がり姿を現すのは皇光歴の世界に存在している竜達である。
俺の知らない竜達も存在しており、その全ての竜がこの場に集まっており、その全てが俺の方を見ている。
聖竜までもがいるというこの状況は明らかに異常という事を現しているだろう。
「ソラ………ようやくこの場所に来れるまでの状態に至ったか。ここはお前の肉体が極限状態まで披露した時無意識に訪れることが出来る場所」
「私達は記憶の存在。ソラの記憶の中に居て、決して触ったり話したりは出来ないの。この世界、私達の世界の言葉で表せば『アカシックレコード』とでも言うべき場所よ」
「アカシックレコード……確か世界の記憶だっけ、なるほどね。ここは訪れる者の記憶を現すための場所で、その為に多くの世界の人が集まってくるというわけか?」
俺の解に正解だと答えてくれたのは正面にいる聖竜であった。
「その通り。あくまでも記憶はここに集まる命をもつ存在だけだ。そして、集まった命はここで自らの正しい記憶を覗かせることが出来るというわけだ」
「どうしてここに俺を?」
「ここで『竜人戦争』と呼ばれる戦いをお前に教えることで三十九人が命を懸けた理由を語る為だここでのことはすべて真実だ。それをこの世界は証明してくれる」
なるほどそう言う場所だからこそ真実を語る上では大切な場所なのだろう。
それだけ聖竜自身が語る事をずっと黙っていた場所でもある。
「まずは………竜人戦争がどうして始まったのかという事は省かせてくれ。少々込みっている話でな。それにそれ自体はあまり関係は無いのだ。大切なのは決着だ。お前は竜人戦争末期の話を多分別の形で知っているだろう?」
はて?聞いたことがあるだろうか?
「木竜の話は覚えているだろう?私が帝都で戦った際に少しだけ教えただろう?木竜はかつて人間と争ったと」
そう言えばそんな話をしていたような気がするが、正直覚えていない。
「木竜との戦いが竜人戦争末期の事だった。その頃竜達の考え方にもある程度の違いで出てくるようになった。何せ多くいた竜達も半分以下に減ったのだからな。もちろん人間の技術文化を千年レベルで低下すれば問題にもなる」
千年も下がれば今でいえば………戦国時代か室町時代という事になる。
それは確かに困る事態でもあるが、それだけの事態になるまで人間は戦ったという事になり、同時にそれだけ『竜人戦争』という戦いが人間達にとって竜達にとって大切だったのかを占めているだろう。
そもそも、竜人戦争とは何がきっかけで起きた戦いだったのだろか?
「竜人戦争は『竜』と『人間』が争った戦いでもあるが、これには正確な勢力図がありこれが戦争にきっかけにもなった。どの時代も戦争の始まりなんてものは変わらん。そして、この争いは今の時代すらも巻き込んでいるといえるだろう。ソラ、今お前が立ち向かっている戦いは二千年以上前から続く戦いの延長線上でもある」
争いの原点、戦争なんてものはいつの時代も結局は勢力争いだという聖竜の言葉はこの世界と向こうの世界の歴史を知る俺にはすんなり受け入れらるものがある。
戦国武将が争った室町から安土桃山時代、幕末やそれこそアメリカの建国や人種差別の問題なんて言うのは勢力争いでもあるだろう。
それこそエアロードが言っていたことでもあるが、知性が争いを加速させるのだ。
知識が考えるという事が無益な争いを生みだし、それが人々の考え方に亀裂を生んで戦争に発展するのだろう。
「そして、この争いの原点とは『魔導』と『呪術』でもある。この争いは未だに続く」
「そもそも、『魔導』と『呪術』差ってなんなんだ?デメリットとメリットの関係だって『魔導』と『呪術』に違いはあるけど差があるとは思えないけど」
聖竜に訪ねてみるが聖竜は「違いはあるがここでは関係無いのだがとしか言わない。代わりに答えてくれたのはエアロードだった。
「『道具』として存在するか、対象に『付与』するのかの違いだな」
なるほど、『呪詛の鐘』や『原初の種』など道具として存在し、『竜の欠片』や『竜の焔』など対象者に『付与』するのが魔導と言うわけだ。
「明確な差があるが、呪術は誰でも触れることが出来るという最大のメリットが存在し、その力は人間でも手軽に使う事が出来る。同時に使った際のデメリットが大きいが」
そう考えれば誰でも使える力として特化した分使用した際のデメリットが大きい『呪術』、使う者を選ぶというデメリットを持っていて力が大きければ大きいほどに選ぶ対象が絞られる『魔導』。
「それぞれ竜が原点という意味では全く違いはない。最もそれが争いの原点であり、竜達ですら分かり合えなかった部分でもある。しかし問題が起きたのは人間側の被害が竜達が思う以上にひどかった点だ。これ以上被害が出せないと言い出したのが………呪術を扱う竜でありながら、エアロードと同じく争いに対して関わろうとしなかった音竜『ヒーリングベル』だ」
音竜。
おそらく『呪詛の鐘』作った本人だろうな。
「争いには無縁だった集落が襲われ始め、それだけでなく多くの難民が生まれていくと、いよいよ他の竜達も見逃せなくなり。ヒーリングベルは「自分の体を呪術に帰る事で争いを収束させたい」と言い始め、自らを『呪詛の鐘』に変えてしまった」
呪詛の鐘って音竜本人だったのか。
それは流石に知らなかったな。
「結果として争いは終ったわけだが、ダメージも多かった。特に木竜の争いは二年にも及び続いていき、我々竜側にも多くの被害が現れた。しかし、結果からすれば木竜を『原初の種』の状態で封印することには成功したが、この後に『不老不死』に憧れるような輩がこの種を使いだした」
この辺はクーデターでも言っていたことだったか。
大きな力を求め始めたというわけだ。
「この繰り返しがあのクーデターに繋がった。しかし、私は分かっていた。いずれは木竜が復活するという事も、音竜もそれ自体は呼んでいた。木竜と適合できる人間がいずれはどこかの世界に存在するという事もな。本来世界とはそうやってできている。どこかの世界に通じればいずれは適合者と接触する可能性もな。だからこそ、私は竜の欠片の適合者が現れると待ちかね。実際に君が現れ、木竜にとっての適合者として『王島聡』が現れた」
王島聡は『呪詛の鐘』の適合者ではなく、木竜の適合者と言うわけだ。
なるほど。
俺自身がずっと感じていた違和感の正体はそれか。
「ここまで説明すれば『呪詛の鐘』である『ヒーリングベル』の適合者にも心当たりがあるだろう?」
「イリーナだろ。言わなくてもなんとなく分かるよ。彼女には『呪詛の鐘』と似た力があったし。俺や多分ジュリも違和感を抱いた正体でもあるな」
「彼女は知らん事だがな。自分の力と『呪詛の鐘』が似ているなんて気にもしていないだろうな。しかし、本来彼女の力はある程度本人の意思でコントロールが出来るはずだが」
イリーナと呼ばれた少女は多分精神的な負担が大きすぎたのだろうな。操るという力が彼女の力に負担をかけており、それが正確に制御が出来ずにいるのだろう。
「そして………ここから三十九人が死んだ理由と彼らが何がしたかったのかを語ろう」
俺は息を呑み語られる言葉を待っていた。
感想は二時間後に!では!




