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65.晩餐が始まりました!

仕事につき、今日は1回更新になりますm(_ _)m

最近、ゆっくり食事を取ってない気がします。

食事って味もそうですが、環境も大切だなぁと痛感しているアーサー君です。



さて、参加者が食前酒にざわざわしている間に、前菜が運ばれてきました。

その皿が王様の前から順に、参加者へと運ばれていきます。



「本日の前菜は、鶏肉と野菜のジュレ 鶏レバーのムース添えとなっております。


濃厚な鶏のスープを煮込み、さっとソテーした季節の野菜と鶏肉を加え、冷やし固めてございます。

また、添えられているムースは、先日お出しした物よりも滑らかに仕上がった、料理長自信の逸品です」



そう言って出された皿は、ザクザクとしたジュレと色とりどりの野菜、そして鶏肉が重ねられています。

ジュレも何とか間に合ったようで、食材庫にあった大量の鶏の手羽と足を煮込んで、急冷させました。

いやはや、ゼラチンを煮出すのも大変ですよ、ホント。


それに華を添えるのは、薄い茶色のムースですが、これはちょっとしたアレンジを加えてあります。

前回出したムースは、どちらかと言えばカナッペに塗れる程度の硬さだったのですが、今回はもっと柔らかく仕上げてあるんです。


ええ、時間が足りなくて、固めるのが難しかったというのもあるのですが、今回は口溶けを優先させました。

スプーンの上にのせられた綺麗な形のムースは、そのまま口に運べば消えてしまうような滑らかさですよ。



「……まぁ!」


にこやかな印象がある王妃様が、ジュレを一口手をつけられて、驚きの声を漏らしています。


ジュレが溶けないように、直前まで冷やされていたんでしょう。皿に触れれば、冷たさが感じられますね。


「なるほど、先日のムースもなかなかの味だったが、これは別格だな」


王様もムースを口に運び、納得していらっしゃいますね。



そしてふと、横に目を向ければ……


例によってウシガエルが、もの凄い勢いで料理を口に運んでいます。

いや、その嫌そうな顔と料理を食べる手が、相反してるんですが?


何か見苦しいので、正面に目を向ければミレイア様も、嬉しそうに前菜を味わっています。

こうして見れば、姫様っぽく見えるのにねぇ……


って、だから一口食べるごとに俺の方へ視線をよこすのはやめてください。

落ち着いて食べれませんから!



ん?気づけばあれだけ騒がしかった周囲が、静かになってますね。

皆、料理に夢中になっているようです。


うん、頑張った甲斐がありましたね。


前菜を食べ終わって、一息ついていると、次いで魚料理が運ばれてきました。


これも急ごしらえの一品なのですが、ちょっとした工夫が施されているんですよ……


出された皿には、花びらに見立てられたスモークサーモン。

それを彩るように配置されたサラダが、まるで草花を皿に盛りつけたかのごとく、可憐に飾られています。


しかし、この皿を見た一部の人間からは、抗議の声が上がります。


「これは、魚なのか?生ではないか!?」


そんな声が聞こえてきまして、流石に王様も少し怪訝な表情で、給仕長に説明を求めます。



「こちらは、本日の魚料理。サーモンのスモーク サラダ添えとなっております。

生のように見えますが、低温の煙でじっくりと燻してあり、別格の味わいでございます。


また、虫が心配だと思われるかもしれませんが、こちらは聖属性の魔法で処理をされており、問題ございません。

毒味も調理人を含め、多数行っておりますので、安心してお召し上がりください」



ええ、これは今回食材を見せてもらった時に、いけすで泳いでいたんですよ。サーモンが!

それで、魚料理はすぐに決まったのですが、単純にソテーしただけではインパクトがありません。


かと言って、カルパッチョは魚の生食が浸透していない王国では、どうかと思ってスモークしてみたんですね。



そして、給仕長が言っていましたが、この世界には恐ろしい寄生虫がいまして、卵が体に入ると数分で症状が出るヤツがいるんですよ。

アニサキス兄さんも真っ青な仕事の早さで、胃に食いつくらしいです。


ですが、この寄生虫…… 回復魔法かけたら、あっさり死滅するんです。


以前、領内の特産品を作る途中で、偶然発見したんですよね。

これにはピエールさんも驚いていたようですね。


調味液の漬け込みも、魔法を使って速成処理しちゃいました。

本来なら一晩は漬け込みたいんですが、時間がないのでチートを使ったんですよ。


丈夫なツボに調味液とサーモンを入れて、風魔法で中の空気を抜いて、なんちゃって真空処理をしたんですね。


実質、調理時間の大半は、スモークの時間ですね。



「大丈夫ですよ、安全と味は僕が保証します」


なかなか手を伸ばそうとしない参加者が多いので、俺は少し給仕長に助け舟を出して、堂々とサーモンを口に運びます。


うん、塩気もちょうどいいし、スモークの風味も十分に楽しめますね。



「それなら、私も食べてみるわ」



俺がサーモンを口に運んだのを見て、ミレイア様がそう言ってサーモンを口に運びます。

誰かが慌てて口を開き、制止しようと声を上げようとしますが、ミレイア様は小さく切り分けたサーモンを、すでに口に運んでいました。



「……美味しい!」



一呼吸置いて次の瞬間には、ミレイア様が目を見開き、口元を抑えながらそう声を上げました。



「年若い子供達にばかり食べさせては、面目が立たんな」



そう言って王様もサーモンを切り分けて口に運び、ゆっくりと咀嚼してから、ノドを鳴らします。



「これは……近年稀に見る美味だな。皆も騙されたと思って食してみよ。

なに、虫にあたったら、王家が責任を持とう!」



そう言って豪快に笑った王様は、再び上機嫌でサーモンを口に運びます。



「しかし、本当に綺麗な盛り付けね。崩すのがもったいないぐらい」



おっと、王様にばかり気を取られていましたが、王妃様も笑顔でサーモンを味わっていますね。

しっかし、ホントにミレイア様と親子なんですかね?


王族の皆様がサーモンを口に運んだのを見て、参加者達も恐る恐ると言った感じで食べ始めました。

そして口に入れた途端、ねっとりとした質感と旨味が、襲いかかったんでしょうね。


目を見開いて驚き、すごい勢いで食べ始めています。



「これがサーモンだと!」「なんという濃厚さだ!」なんて声が聞こえますね。



クックックッ……計画通り!



驚かれた魚料理も終わり、スープが運ばれてきました。

このスープも即決で決まったメニューです。


いや、いけすでサーモンの隣にデカイ海老が、沢山泳いでいましてね。

なんかロブスターと伊勢海老のハーフみたいなヤツでして、ちょうど来週の大きな晩餐会に向けて大量に仕入れて、活かしていたらしいです。


うん、王家の財力半端ないっす!


これまでの料理に比べると、一見地味ですがこれは味で勝負の一品ですよ。

オレンジがかった黄金色のスープには、白とピンクの海老の身、それにアクセントで生クリームが垂らされていまして、とても色鮮やかですね。



大量の海老の殻と頭を、香味野菜と炒めて、白ワインと生クリームで仕立てた一品です。

具材は、食べやすいように別に取り分けておいたエビの身を、さっとソテーしてくわえてあるんです。


味見した時は、これにパスタを入れて、調理場でまかないにしようと思ったぐらい、お気に入りですね。


計画的に酪農をやってるウチの領と違って、やはり王家でも生乳は貴重品らしく、ピエールさんは王都近郊にアチコチ使いを出して、かき集めたらしいです。

それを、贅沢に使ってますからね。


ここまで、やや冷たい料理が続きましたから、皆が温かいスープにホッとしている様子で、恍惚とした表情をしていますね。



参加者の皆様がスープに舌鼓を打っている間に、給仕長達は下座側の入口にテーブルを準備しています。

スープに夢中になっている参加者達は、あまり気にしていないようですが、タネを知っている俺は、内心でほくそ笑みます。



全員がスープを食べ終わる頃を見計らって、口直しの氷菓が運ばれてきます。

前回はレモン風味のシャーベットを一種類だけ出しましたが、今回は少し冷たい料理が続いていますので、趣向を変えて作っています。


小さな皿には、細かく砕かれた氷がびっしりと敷き詰められていまして、スプーンが3本載せられています。

氷には花があしらわれ、王妃様が「まあ!」なんて感嘆の声を上げてくれました。


だから、こんな乙女チックな王妃様から…… うん、不毛だ。よそう。

向かいの席からフォークやナイフが飛んできたらヤバイですからね……



「本日の氷菓は、少量ではありますが、多彩な味が楽しめるようになっております。

上から、ベリー、オレンジ、桃でございます。それぞれ、味の違いをお楽しみ下さい」


給仕長が、これまでとは少し位置を変え、そう言いまして皆が夢中になって、シャーベットを味わっています。

うん、俺が魔法を使ってガッシガッシとシャーベットを作ってたら、それを見たピエールさんが、ガックリとヒザから崩れ落ちたのは内緒です。



やはり女性陣は、シャーベットが大好きみたいですね。

ミレイア様も顔をほころばせて味わっています。これを見ただけで、疲れた体に鞭打って作った甲斐があるってもんですよ。



ん? おお、メインの肉料理も準備が整ったみたいですね。



「さて、肉料理は、少し趣向を凝らしましております。

通常でしたらば、完成された皿をこちらにお持ちするのですが、本日はこちらで肉を焼きあげたいと存じます。


肉の焼ける音や匂いなど、存分にお楽しみ下さい」



給仕長がそう言うと、奥の扉が開きましてコックコートを着たピエールさんが一礼して入ってきます。

うん、ここからが正念場ですね。頑張って!


「料理は、お楽しみ頂けておりますでしょうか?

本日は些か変わった趣向ですが、どうぞ最後までお楽しみ下さい」


そう言って再び一礼したピエールさんは、俺に少しだけ視線を向けて、それからウシガエルをにらみます。

おいおい、力んで失敗するんじゃないよ。


俺は、慌てて小さく咳払いをして、ピエールさんの意識を引き戻します。

それでハッとしたピエールさんは、大きく息を吸い込むと料理の説明に入りました。



「本日は厳選した仔牛の一番柔らかい肉を、この場で焼き上げてご賞味頂きます」



そう言ってピエールさんは、炭の盛られた火鉢に金網を乗せて、肉を焼き上げていきます。

すると、溢れる肉汁が炭に滴り落ちて、香ばしい香りが漂ってきました。


うん、このいい香りには全員が、好奇心をそそられた様子で、その手際に魅入っていますね。

もう一人の助手さんも、その間に副菜の準備を進めて、手際よく皿が完成していきました。


その中で、一つだけ何やら青白い顔のおっさんが出てきまして、一礼してから肉の端を切り取り口に運びます。

そのおっさんは、ゆっくりと咀嚼して肉を飲み下すと、しばらく待ってからわずかに頷きます。


ええ、この人が王様専門の毒味役らしいです。

メニューを手伝うことになった時、気になってピエールさんに聞いてみたんですね。


いや子供とはいえ、部外者が厨房に入って大丈夫なのかと。


そしたらば、ピエールさんは問題ないと言ってくれて、警備の厳重さや毒味役の存在について教えてくれました。

その時にちょっと思いついたのが、この調理ショーだったんですよ。


たまには王様にも焼きたての肉を、味わってもらいたいなと。


それに、ピエールさんには、直接ウシガエルに意趣返ししたくないですか?って焚き付けたら……ねぇ。


俄然、ヤル気を出してくれました。



そしてまだ湯気を上げている肉が王様の前に出されまして、待ちきれないとばかりに、王様が肉を口に運びました。



「うむ、熱い。そして、美味いな……」



王様は小さくですが、しみじみとそう語ってくれました。

その一言は、ピエールさんの耳にも届いたようで、何か、ピエールさんが俯いています。


うん、そうだよね。



い~や、焼きたてのお肉が、とっても美味しいですね!




【メニュー】

・鶏肉と野菜のジュレ 鶏レバーのムース添え


・サーモンのスモーク サラダ添え


・伊勢海老のクリームスープ


・季節のフルーツソルベ


・肉料理 仔牛のフィレ炭火焼き


・デザート → 次回をお楽しみに!

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